タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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「メニャーニャや。ハオが苦労をかけたようで、すまんかったのう」
王国の図書室に戻るなり、そんな声をかけられた。一瞬、どこからの声かと目を泳がせたが、すぐにテーブルの上のティーカップが目についた。
「ああ、いえ。……終わってみれば有意義な時間だったと思いますから、お気になさらず」
ティーカップに満たされた紅茶を湯船として浸かっている小人――紅茶の神様、ティーティー様に私は頭を下げる。
「まあ、ハオが苦労をかけたこともそうなのじゃが……エステルにもえらく笑われたらしいのう。そもそもわしが発端じゃったと思うと、申し訳ない」
「ああ、先輩については思いっきり横隔膜を殴っておきましたので、大丈夫ですよ」
「それはそれで何かがおかしい気もするが……」
お互いに苦笑いをして、息をついた。
「……それにしても、やはりなかなか信じがたいものじゃ。世界樹が実は人工物で、しかも複数存在するのが当たり前の姿とは」
「まあ、私や……きっかけをくれたシノブ先輩はおそらく、ほぼ真実だろうと思ってはいますが……実際のところはまだ仮説という段階ですし、これからまだまだ証明のための研究を重ねていかなければなりませんから」
「……説明されてみれば筋は通っておると思うのじゃが……万人が信じるかというと、な。わしとてショックは大きかったし、まして世界樹を観光資源としている者達からすれば、なおのこと否定にかかりそうなものじゃが」
――現状、世界樹と認定されている樹は複数存在しているが、いずれもが『自分のところが世界で唯一の世界樹』だと主張している。つまり観光価値の中には『世界で唯一』ゆえの希少性が含まれているということだ。
私の仮説はその希少性を否定するものであり、今のままでは到底受け入れてもらえないだろう。
「……とはいえ、世界樹そのものがこの世界にとって神聖視していいくらい重要なものであることには変わりないんですけどね」
「他の世界に通じる穴を空け、そこからマナを取り入れておる……じゃったな? となれば確かに、世界樹がなければこの世界は成り立たぬからのう」
ハオさんからすでに説明を聞いているだろうこともあってか、今ではティーティー様もすっかり納得してくれた様子だ。となると紙芝居まで作って説明した甲斐があったと実感できて、なんだか気持ちが晴れやかになってくる。
「――時に、メニャーニャよ。紙芝居を作ったということも、大きな意義があるのではないかな?」
「……へっ?」
思わぬ視点に、間抜けな声の返事をしてしまった。
「そんなに驚くことはないじゃろ……。いつか今の仮説が認められて常識となった時に、あの紙芝居形式で子供達に聞かせた結果、子供達が興味を持ち……後の未来に、その子供達の中から高名な学者に育つ者が現れるかもしれぬじゃろう?」
……ああ、そうか。
単に、ハオさんになんとか納得してもらいたい一心で作った紙芝居だけど、思い返してみれば、あの時のハオさんの反応はまさに興味津々の子供そのものだった。
そこにティーティー様の言葉を重ねて想像を広げてみる――召喚士協会の中で、定期的に子供達を集めて、世界の仕組みを解説する紙芝居物語を読み上げる光景。そうして興味が広がっていくのは……それは学者冥利に尽きるような、とても素晴らしいことかもしれない。
「……研究もそうですけど。その研究の内容をわかりやすく説明する話法も、今後は磨いていかないといけませんね」
「言い方が堅苦しいのう。もっと紙芝居を作ってもいいんじゃぞ?」
「作るたびにエステル先輩の横隔膜を殴らないといけない気がしますので」
「ほどほどにしとくんじゃぞー」
またお互いに苦笑い混じりの会話をしながら、私は紙芝居を片付けていた。
先輩にからかわれるのは恥ずかしいけれど、紙芝居大会、またやってみようかな――そんなことを考えながら。
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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