タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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「こんにちは、ヴォルケッタさん。相席、よろしいでしょうか?」
「ああ、こんにちはゼニヤッタさん。構いませんわ、どうぞ」
王国お土産屋にて、私が王国オムライスを堪能している時のこと。ゼニヤッタさんが、鴨ネギそばを持って相席を申し出てきた。
「……ゼニヤッタさん、貴族なのですよね? その割にはミスマッチなものを好まれるというか……」
「そうでしょうか? しかしこれは美味しいものですから」
気品ある、しかし素直な微笑み。上品さを身に付けながらも、良いと思ったものは素直に褒め称える――ゼニヤッタさんは良い貴族の見本だと思う。
「……わたくしは、ハグレ王国に来るまでは、ほとんど屋敷の外に出たことがありませんでしたから、世界というものを知らなくて……その分、目に映るひとつひとつがとても新鮮で、素晴らしいもののように思えるのです」
まるで世界を愛おしく思うかのような、語り口。赤い髪が、揺れる。
「……そういえば、少し気になっていたことがあるのですが」
「何でしょうか?」
「わたくしとゼニヤッタさん、扱う力は正反対なのに、容姿が似ているのはどうしてなのかしらと思いまして。もちろん、人間と悪魔という種族の違いはあると思いますが」
私の髪も、ゼニヤッタさんと同じ、燃えるような赤い色。そして私はその髪の色の印象と同様に、燃え盛る炎の力を受け継いでいる。
一方でゼニヤッタさんの髪もまた、燃えるように赤く。しかしながら――彼女は力量で言えば私でもうかうかしていられないほどの、冷酷なる氷の力の持ち主。
「……偶然、と言ってしまえばそれまでなのですが。そう仰られると、運命的なものを感じますわね」
しかし力の冷酷さとは裏腹に、ゼニヤッタさんの微笑みはどこまでも暖かい。
一方で、私はどうなのだろう――
炎の力。燃やすことに特化した技術。
そうしてひとたび放たれれば、相手を灰燼と化すまで止まらない。それはいっそ、苛烈にして冷酷と言えるほどに。
「……ヴォルケッタさん、どうかされましたか?」
――ゼニヤッタさんの声で、我に返る。
「……申し訳ありません。考え事にふけってしまいましたわ」
「……お悩みのようでしたら、わたくしでよければお聞きいたしましょうか?」
「ああ、ええと……そうですわね。でも、まずは食べてしまいましょう。おそばが伸びてしまいますわよ?」
――――
「なるほど。ヴォルケッタさんにはわたくしが、氷の力を持ちながら穏やかな気質に見える、と」
結局、考えていたことをほぼそのまま、ゼニヤッタさんに話してしまった。
やはりゼニヤッタさんは穏やかに笑う。
「――そう言っていただけるのはありがたいですが……わたくしがこうして穏やかでいられるのは、あくまでハグレ王国の中にあってのこと。ひとたび戦いとなれば、わたくしもまた、ヴォルケッタさんと同じ苛烈さを持つことでしょう」
私は、ゼニヤッタさんの言葉を静かに聞いている。
「ヴォルケッタさんも同じことです。例え苛烈であろうとも、相手に冷酷と思われようとも、何のために力を振るうのか――その認識を、はっきりさせておくことです。わたくしは、王国に害を為すもの、国王様を傷つけようとするものに対しては、一切、容赦をするつもりはありませんわ」
――迷いを、感じさせない。
「もっとも、今はそう言い切れますけれども。わたくしもこうした境地に辿りつくまでに、いろいろと悩んだりしましたから。ヴォルケッタさんも、いろいろ考えてみるのも良いと思いますわ」
「……そうですわね。お話を聞いていただいて、ありがとうございました」
どういたしまして、と返事をもらう。
私はまだ、何のために力を振るうのかについて、明確な答えを出せているわけではないけれど――それでも、無意味に今まで磨いてきたわけではないはず。
ゼニヤッタさんも辿ってきた過程ならば、やはり私達は似ているのだと思った――それはまだ、私の一方的な思い込みなのかもしれないけれど……近づきたい境地ではある。
「……ヴォルケッタさんは、力というものの考え方については、人一倍真摯であるとおうかがいしています。……であれば、良き答えを出せることでしょう」
最後にゼニヤッタさんはそう言って、テーブルを立つ。
私は深く頭を下げて、去り行く背中を見送った。
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自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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