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タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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イリス、ローズマリー。
一人称とはいえ久々に地の文を書いたよ!

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 目を覚ますと、いつもと違う場所にいた。
 少なくともハグレ王国の中の、見慣れた私の部屋の中ではない。ここはどこだろうか、考えようとしても思考はぼんやりとしている。

「グッモーニン♪ ハウアーユー?」
「……、イリス?」

 私に呼びかけたのは、冥界の王の娘。なぜ私は、いつもと違う場所で彼女に起こされているのだろう。

「……ええと、ここはどこなの?」
「冥界の屋敷の最深部――私の部屋デース」

 訊ねてから、改めて周囲を見渡してみる。言われてみれば見覚えのある部屋だったが、昨日は王国の自分の部屋で普通に就寝したはずなのに、どうしてイリスの部屋で目覚めるのだろう。



「――寝てるうちにナ、さらわせてもらったヨ」
「……えっ? え、ええええっ!?」



 イリスの言葉に一瞬固まって、それから大声を出してしまった。
 文字通り、私はイリスの手で冥界にさらわれてしまったらしい。そして彼女の部屋で今、私とイリスが二人きりという状況のようだ。
 どういうつもりだ――そう問いかけるより早く、イリスが私にのしかかってきた。そのままなすすべなくベッドの上に押し倒される。

「ちょ、ま、離し――っ!?」

 抵抗しようと身じろぎをした途端、胸を締め付けられるような苦しみで息が詰まってしまった。見上げた先のイリスは、鬼気迫る表情で私を見つめている――自分に起きた事態が容易に察せられる。
 今まさに、私はイリスに魂を握られているのだ。

 まるで希望が見えない状況だった。
 一対一で、ベッドに組み伏せられ、私の命はすでに相手の掌の上。もはやこれまでか、私はここで死ぬのだろうか――恐怖が私の心を塗りつぶそうとしている。
 イリスに見下ろされ、私は身動きが取れず、声もあげられずにいた。

 そのまましばらくにらみあいが続く。
 私にとってはあまりにも長い、恐怖と緊張の時間。魂を握られたまま時間が過ぎていくこと、それ自体が拷問のように思えた。









 ――へにゃっ。

「ハァ……」

 胸の上に、気の抜けるような感触。直後の溜息。唐突に、息苦しさから解放される。
 先ほどまで私をにらみつけていたイリスは、なぜか私の胸に顔を埋めて脱力しきっていた。

「え、ええと……?」

 さっぱりわけがわからない私をよそに、イリスは私の上でごろごろとして、

「やっぱり私もヤキが回っちまったカナ、チクショーメ……」

 ぼそりと、そう呟いた。



















「――ソーリー。苦しかったダロ?」

 困惑しっぱなしの私に、やけに素直な謝罪をされる。

「……殺されるかと思ったよ、本当に。というか、そういうつもりで私をここに閉じ込めたんじゃなかったの?」
「そういうつもり、のはずだったんだがナ……」
「正直、どうあがいても無理だね。さすがに一対一じゃイリスには勝てないよ」

 ――冥王の娘。それがイリスという存在。
 その肩書きに相応しく、彼女はたったひとりでハグレ王国八人の精鋭を相手に死闘を繰り広げた。八対一でようやく勝てた相手だが、やはり個人の力は抜きん出ている――彼女が王国の一員となり、味方として戦ってくれている時でも、そう実感させられる。

「……なんでまた急にこんなことをしたの? それに、どうしてここまでしておきながら、私を殺すのをやめちゃうの?」

 結果的に殺されずに済むのなら、私としてはとてもありがたいのだが、疑問を訊ねずにはいられなかった。

「まず最初に――ユーがぽてと君の考案者だからダヨ、ローズマリー」

 目覚めてから初めて名前を呼ばれた。



「……ぽてと君って、そんなに大きな問題になってるの?」
「心底不思議そうな顔して言うんジャネェヨ……アイツのせいで私の部下の屍が大量に積み上げられたんダゾ……」
「しかばねっ!? え、死人が出たの!?」
「アー、いや、ものの例えで、死人は出てネェケド。ただ、数日間寝込んだ末に、今もトラウマで震えてるってヤツが相当数居やがる」
「え、えぇー……」

 ――イリスの言葉を聞きながら、思い出す。
 もともとはイリスの野望を阻止するために、彼女の屋敷のパーティーにぽてと君の着ぐるみを着て乱入したことが二度あるのだが、なぜか二度ともイリスたちの大混乱を目の当たりにすることとなった。

「あれ以来ぽてと君は冥界にとって最大級の脅威なんでナ、なんとしても排除しなきゃならないんだが……その方法として手っ取り早いのが、考案者たるユーを始末することだと考えた」

 ――私のことを考案者と言っている。
 考案しただけでなく着ぐるみの中に居たのも私だということは、さっきの殺気立った様子からして言わないほうがよさそうだった。

「始末する一歩手前まで行ったよね……というか、実は今のこの状況って全然危機を脱せてないような」
「アー、先に言っとくけど、今はもう危害は加えネェヨ。ドントウォーリー」
「……なぜだい?」



「……気分が乗らない。ただそれだけダ」



 答えは短かった。そして私は余計に首を傾げてしまった。
 イリスは苦笑いを浮かべながら、言葉を続ける。

「理屈として、私のやろうとしたことは冥界のためでもある。ユーを始末することも、ぽてと君を撲滅するだけでなく、地上侵略計画を大きく進めることになるダロウ――そこまでわかっているっていうのに、気分が乗らないんダヨ」

 二度目の『気分が乗らない』という言葉。一度目よりも重く響いているような気がした。

「……どうして?」
「――またそれが言葉にしづらくてナ、正直言ってよくワカンネェヤ」

 そう言って、イリスはくつくつと笑う。
 最初の苦笑いと違って、少しだけ楽しげにも聞こえる――直接言っても認めはしないだろうけれど、なんだかんだでイリスもハグレ王国に愛着を持ってくれているのかもしれない。





「しかしまあ、ユーを始末しないなら、ぽてと君対策はどうしたものかネェ……」
「私に言われても困るんだけど」
「もうちょっとくらい容赦してくれても良くネェ?」
「容赦してって言われてもなぁ……」

 なんだかおかしな会話をしている気がして、私も思わず笑ってしまう。最初の物々しさはどこへやら。

「だいたい私がハンバーガーやアックマンチョコでデーリッチたちを甘やかしすぎって言うけど、ユーだってプリン二倍デーで甘やかしてんジャン」
「『プリン二倍デー』って言葉がそのまま答えだよ……特別な日だからこそ楽しみにしてもらえるんだし。普段は厳しく行きたいけど、そればっかりじゃあ息も詰まっちゃうからね」
「模範解答ダナ……じゃあ私もハンバーガーデーを設定するべきカナ?」
「まあ、多分それだったら……あと晩ご飯前におやつ感覚で食べさせたりするのを止めてくれたらね。ハンバーガーっておやつじゃなくて立派な食事だからさ?」
「それじゃただの異文化交流ダゼー……」
「それならたとえ冥界でも歓迎するってことだよ。アックマンチョコにしてもなんだかんだで人気だし……アーヴさんだっけ、あの人のファンも結構たくさんいるみたいだよ?」
「アー、アイツのカードはレアランクかなり高めに設定してあるからナァ……」
「今思いついたんだけど、キャラクターカードを持ってる人が本物に会えるサイン会とかを開いてみるのも、アリなんじゃないかな?」
「オゥマイゴッド、侵略先からまさかの商売アドバイスを頂いちまったゼ……ウン、参考にさせてもらうヨ」

 イリスに押し倒された体勢のまま、なんだか他愛のない話をしている。それがまたなんだかおかしくて、くすくすと笑ってしまう。イリスを見ると、彼女もまたおかしそうに笑っている。きっと同じことを思っているんだろう――







「――ところで、ユーも意外といいモノ持ってるんダナァ?」
「ひゃあっ!?」

 いきなり胸を揉まれた。思わず裏返った声をあげてしまった。

「な、な、な、何をするんだっ!?」
「イヤァ、今なら触り放題ダナァ。普段はローブですっぽり隠してるが、悪くない感触ダゼ?」
「ちょっとー!?」
「クク、覚悟してもらうゼ? さらって閉じ込めて押し倒して何もしませんでしたじゃあ、悪魔としては終われないんでナー?」
「セクハラだーっ!!?」
「残念、離してやんネェゾー? 思いっきり堪能してやるからナー?」
「た、堪能って……ひぃっ!」



 ――このあとめちゃくちゃお触りされた。
 やたらと触り心地の良さを褒められたのも相まって、恥ずかしくてたまらなかった。
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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