イリス、エステル。
堕とし合い、というか片方がどんどん堕ちていっているような。

　――もにゅもにゅ。



「おふぅ……気持ちが良くてとろけてしまいマース」
「めっちゃ喜んでるぅ……相変わらず無防備すぎだろー？」
「気持ちイイことを拒む理由なんてアリマセーン。モアプリーズ」
「うーん、こっちからセクハラしてるはずなのに、まるでそんな気がしない……」
「むしろ望むところデース。好きなだけ堪能するデース」
「むぅー……」



　――むにむに。



「不満そうな顔で一心不乱に揉んでくるナァ……お気に召しまセンカー？」
「いや、正直この感触は嫌いじゃないけど」
「オーゥ……じゃあ、何がドウシタ？」
「なんか、私ばっかりイリスに焦らされてて……せめてたまには逆がいいと思ってこんなことしてるのに、むしろ喜ばれて」
「……ナァ、それって私本人に愚痴ることじゃネェと思うんだが。私をやり込めたいなら、別の人間と相談して作戦でも練ってコイヨ」
「あんたと普段どういうふうに絡んでるかって考えると、誰かに言うのは恥ずかしい」
「フーム……それだったらまあ、ちょうどいい相談相手がいるゾ」
「いや、あんたから紹介されるのも……ていうか誰よそれ」
「ローズマリー」
「は？」
「ローズマリー」
「は？　……いや、ちょ、あんたマリーになにかしたの！？」
「つっ……！　いや、マテ。話すから、手を離せ。さすがに今のは痛いゾ」
「あ、ご、ごめん……」
「しかし、まあ……たぶんユーはキレるだろうナ、エステル」
「予告するってことは、なにかしたのは確定かっ……！」
「ここだけの話にしてくれナ。実は一度、アイツを冥界に誘拐したんダ」
「はあっ！！？」
「冥界を脅かすぽてと君の考案者、ゆえに始末するっていう大義名分を持って、魂を握るところまで行った」
「あ、あんたやっぱり……！」
「――気分がまるっきり乗らなくて、できなかったんだがナ」
「は……き、気分、が？」
「イエス。結局、代わりにお触りセクハラまみれにしてそのまま逃がした」
「セクハラはしたのかよっ……！」
「だが、傷つけてはいない。向こうも、わざわざ私に気を遣ってこの出来事を黙ってくれている」
「あ、う、うん……うん？」
「まあそんなワケで、同じセクハラの被害者ってコトで、相談するならローズマリーに持っていったほうがイインジャネェカって話サ」
「あ、あー、そう繋がるのか……てか、被害者って言い回しなら、肝心のあんたが加害者じゃないかよ」
「だから被害者同士でリベンジにきてもいいんダゼ？　受けて立ちマース」
「くっそ、余裕綽々……」
「――果たして、そうカナ？」
「はぁ？」



　――もにゅっ。



「あ、自分から……」
「――心臓を握るどころか、握らせたっていいと思ってる」
「……あんたの得意技のはずなのに、逆になってる」
「ユー達を手に入れたい。そのはずが、差し出してもいいと思っている」
「……本当に？　それって本音？」
「好きでもない相手にこんな事シネェヨ。今くらい信じろ」
「むぅ……」
「――ナンダカンダで、随分とハグレ王国のほうに気持ちが傾いちまったようダ」
「…………、だったらいっそ」
「ン？」



「あんたをハグレ王国にさらってやりたい。冥界から引き剥がしてやりたい」



「…………ハァ？」
「あんた、もともとメニャーニャを冥界に連れて行くつもりだって言ってたわよね？」
「……オウ」
「メニャーニャだけじゃ寂しいから、シノブと私も冥界にさらうつもりだと」
「ソレは諦めてネェゾ？」
「でも、あいにく私はそんなつもりはないし、ましてメニャーニャとシノブに冥界に堕ちてもらうつもりもないんだ」
「……ク、クク。そうか、そういうコトか」
「察したか？　――メニャーニャと一緒にいたいんなら、あんたがハグレ王国に居着いちゃえばいいんだよ」
「ク、クククク……確かにそれなら、冥界と引き換えに私の望みが満たされるワケか」
「私達は冥界に堕ちなくて済むし、あんたは好きな相手と一緒にいられる。どっちにとっても幸せじゃない？」
「――悪いが、私は冥王姫ダ。冥界を統べる者としての責任がアル。そう簡単に折れてやるワケにはいかネェナ」
「ま、そう言われると思ってたけど」
「とはいえ、参っちまうヨ。ユーの提示したメリットも確かに魅力的ナンダ。イッツ・デンジャラス・テンプテーション」
「焦ってる？」
「というか、誘惑に耐えられるかどうか、ダナ。ただでさえユーに対しちゃ無防備を晒してるってのに。惚れた弱みってのは怖いネー」
「結局、笑いながら言われても説得力ないんだけど」
「フフン、意気込むからには頑張って私を堕としてみろヨってコトダ。堕ちるのはユーが先か私が先か、勝負と行こうジャネェカ」
「おおう、なんか言葉にされると責任重大だわ……」



　――もにもに。



「……今やってることは胸揉んでるだけなんだけど」
「おふぅ……気持ちいいデース……」
「めっちゃとろけてるぅ……」