タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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――ざわざわざわ。ざわざわざわ。
「さて、みんな揃ったでちねー? それでは、王国会議を始めるでちっ!」
「今日はまず重要な案件があるので、そちらについて議論を進めていく。メニャーニャさん、お願いします」
「はい。まずは――帝都召喚士協会特務召喚士官として、先日の、太古の森との大決戦における、ハグレ王国の多大な貢献に、深く感謝いたします」
――ざわざわ。
「静かに。……メニャーニャさん、続けてください」
「はい。先の戦いは無事、私達の勝利に終わりました。……ですが戦いの最中、ハグレ王国のデーリッチさん達がゼンマイ山で目撃した巨大魔物。あれらは決戦が収束した今もなお、山中に留まっているようです。ここでもう一度ハグレ王国の皆さんの力をお借りして、巨大魔物を駆除したいと考えています」
「私から補足しよう。メニャーニャさんは力を借りたいと言っているが、この件はできればハグレ王国単独で処理しておきたいところなんだ。私達なら少人数でも渡り合えるが、一方で帝都やエルフ王国で相手をするにはもっと多くの戦力を必要とする。だが、ゼンマイ山はそうそう大人数で乗り込める場所ではない」
「ありがとうございます。……魔物の詳細については、ローズマリーさん達は既に目撃されていますね。説明をお願いします」
「ああ。まず最初の道に赤い鱗の竜が佇んでいる。見るからに炎属性と得意としていそうなタイプだった。次に、三列の蔦を登った先に猪のような姿の魔物がいたね。あれは以前に南の世界樹で同型と戦ったことがある。最後、時計塔の地下に植物型の魔物が徘徊している。これは戦闘の途中で周りに花を咲かせて、厄介な補助攻撃をさせてくるタイプだったね」
「ヘイヘーイ。ならまず、赤い竜は私の担当にナルネー」
「……そうだな。炎には氷、ということで君の出番だな、イリス」
「わたくしもですわね。氷の悪魔の力、存分に振るってみせましょう」
「私もですね。ゼニヤッタさんやイリスさんとの相性は今更語るまでもないでしょう。ヅッチーと組めないのは残念ですが……」
「ああ、ごめんよ。しかしまあ、定番の氷属性トリオの出番ってことでひとつ」
「あ、はい。このチームの回復役は私に務めさせてもらえますか?」
「オイオイ、福の神さんヨー。こんな場面にまでついてこなくたっていいんだゾー?」
「あら、別にイリスさんを意識してるわけではありませんわよ? 私もあなた方ほどではないですが氷の魔法で攻撃に参加できますし、相手は巨大魔物ですから、回復や補助を怠っていい相手ではありません。……それにイリスさん、鎮火するのは得意でも、炎を受けるのは厳しいのではありませんか?」
「ン、思ってたのと違うけど、やっぱり意識してネーカ? ……ンー、地上じゃそこまで痛手ってわけでもないんだが、まあ、気分が良いモノじゃないのは確かだナ」
「あ、それなら私も同行しようか? 私のフレイムウォールなら、相手の炎を軽減できるから戦いやすくなるはずだし、それに……植物魔物のほうはヴォルケッタがいるから、攻撃面は私がいなくても何とかなると思う」
「……そうですわね。私をメインに、ベロベロスちゃんとマッスルさんが補助する形を取ってくれれば、問題ないと思いますわ」
「あれ、控えめじゃん。なんだかこういう場面だったら、植物魔物など私の炎で消し炭ですわー! なんて有頂天になりそうなもんなのに」
「今は会議中ですわよエステルさん。……巨大魔物の脅威は先の戦いでよくわかっています。相性の良い相手といえども、油断せず、万全の体勢をもって挑まねばなりません。失敗はできないのですから。……そうした心構えを持つことも、力あるものの自負だと思っておりますわ」
「心配いらねえよ。敵の攻撃は俺が引き受けてやるし、いざとなったらヴォルケッタちゃんの魔法に負けねえフルパワータックルをぶち込んでやっからよ」
「あ、でも待って。その植物魔物って花咲かすんでしょ。だったら範囲攻撃ができる人間も多めにチームに入ったほうがいいと思う。私のサイコバインドは炎属性じゃないけど、いい感じの相性だと思うわ」
「……それなら私も植物魔物担当チームに入りましょう。サモンアグニもいい火力になってくれるはずです」
「ヴォルケッタちゃん、ベロベロスを連れて行くんだったらデーリッチもこっちのチームに入るでちよ? 今回はちゃんと回復役やるでちから」
「んー、ヴォルちんと相棒が入るのかー。だったらせっかくだからヅッチーもこっちのチームに入るぜー。ズッ友トリオで燃やし尽くしてやろうぜ!」
「ズッ友トリオはやめなさいよ!?」
「……二体の魔物への編成は固まりつつあるね。残るもう一体は……」
「ふむ。ちょっといいかの?」
「あ、はい。何でしょう、ティーティー様?」
「ローズマリー、お主も言っておったが、猪型は南の世界樹のものと同型だそうじゃな? であれば、こいつは属性とは別の弱点を突くべきじゃと思うぞ」
「と、言いますと?」
「奴は相当なパワーを秘めておるが、そのパワーに自らも振り回されておるようじゃった。ゆえに、大技の後に体勢を崩し、守りまで手薄になっておったじゃろう?」
「そうですね。明確な隙を晒すからこそ、不意の遭遇でも何とか戦えたと記憶しています」
「ゼンマイ山の奴が同じパターンかどうかはわからんが、ここは相手の体勢を崩せる技を持つメンバーを中心に選定すべきだと思うのじゃよ」
「――もけっ! もけけけ、ぽっこーっ!」
「お、おおう。地竜ちゃん、すごいやる気だね……!」
「ってかこらぁ!? ポッコの名前まで先んじて出すなよ!? あ、でもまぁ、ゴーレムペイントなら間違いなく相性がいいですよ!」
「あ、私も猪討伐に参加したいです! カタナシュートが唸るぞーっ!」
「ふむ。なら私も、盾役を兼ねて参加すべきだろうな。体躯が大きかろうとも、足を取ってしまえば体勢を崩すのは難しくないはずだ」
「……こちらも問題なくメンバーが決まりそうですね?」
「ふむ。言いだしっぺじゃから、こちらのメンバーの回復役はわしが務めるとするかの」
「えー? ティーティー様大丈夫なんですかー? 大型魔物から攻撃受けたら、そのちびっこい体じゃひとたまりもないんじゃないですかー?」
「こんな時に弄りにくるな、こらっ……!」
「――いや、ティーティー様の体の小ささはある意味規格外だが、お前も人のこと言えるほどでかくねーだろ、ポッコ。まあ確かに、狙われたりするとかなり不安でしょうから、俺が隠れ蓑使って保護することにしますよ。猪討伐、参加させてください」
(クラマっちの物言いも大概だと思うけど……やっぱポッコちゃんに気があるのかねぇ?)
(ロリコンは犯罪だっつってんのに、クラマの奴……)
(福の神に気がありながら他の女にもちょっかい出すとは、ふてえ野郎ダゼ……)
「おいこらひそひそ話聞こえてんぞ特にそこのクソ悪魔っ!?」
「あー、静かに! ふむ、三チームとも編成はスムーズにまとまりそうだね?」
「皆さん、私自身は討伐には参加できません。また帝都も戦力そのものは派遣できませんが、可能な限りバックアップに回ってもらうように努めますので、よろしくお願いします」
「討伐作戦決行は三日後を予定している。キーオブパンドラは使わず、各々の移動手段で現地へ向かってもらうことになる。それまでに、今決めたチームで攻略戦術を話し合っておいてくれ。では、デーリッチ……」
「はーい! 今日の王国会議をこれにて終了しまーす! お疲れ様でしたー!」
******
「メニャーニャさん、お疲れ様です」
「ローズマリーさんも。……本当に、ハグレ王国がなかったらと思うと、ゾッとしますよ」
「……戦争と呼べるような規模の戦いも、既に何度か経験はしていますが。どれもつらい戦いだった。ハグレ王国の皆も頑張った。……けれど、それだけじゃないですよ。王国以外の人々……帝都、エルフ王国、妖精王国。ほぼ世界全体で頑張って、この現在に至る道を勝ち取ったのですから」
「そうですね……そして、こうした平和を磐石なものにするためにも、まだまだ頑張っていかないといけませんね」
「平和カー。私達にとってはそうかもしれないが、ヤツラにとってはどうカナー?」
「……どうしたんだ、イリス。チーム会議は?」
「まだ時間はあるから、今すぐじゃなくても大丈夫ダロ。……それより、ダ」
「……奴等、とは? 誰を指してるんです?」
「ぶっちゃけ、巨大魔物どものことダヨ」
「……何、ですって?」
「今、討伐する方向で話が進んでいるが。ヤツラ、今のところゼンマイ山から動こうとする気配はないんダロ?」
「……ですが、いつ人を襲うかわかったものではありません。脅威の芽は早いところ摘んでおかないと」
「脅威か、確かにそれだけの力を持った存在が身近にいるってのは不安になるだろうナ――しかし、ダ」
「……もったいぶらないでくれないか。何が言いたいんだ」
「ヤツラからすれば、いきなり異世界に呼び出されて、どうしていいかもわからないうちに、勝手に脅威だって判断されて襲われるんだゼ? ――理不尽だと思わないカイ?」
「――ふざけたことを言わないでくださいっ! 奴等は先に大決戦でその力を、その脅威を、こちらが嫌だと言いたくなるほど示したんです! 放っておけるわけないじゃないですかっ!!」
「……どうしてそこまで感情的になるンダ? 同じ言葉を、もっと冷静に、もっと理性的に言えばいいノニ――心のどこかでは、私の言葉を否定しきれないモノがあるんジャナイカ?」
「イリスっ!! いい加減に……!!」
「ローズマリーさん、メニャーニャさん、お待ちください」
「っ……福ちゃん?」
「オイオーイ、何ダヨ、今いいところなのにサー」
「あなたという人は本当に、悪ふざけがお好きなのですね……」
「そりゃー、悪魔だからナ」
「お二人とも、イリスさんの仰る事は確かに一理あります。……私もまさに、そんな意志もないのに、力を持っているだけで脅威とみなされ、恐れられたことがありますから」
「あ……」
「……だから何だと言うんです。この世界に来てしまったことは魔物達にとって不幸かもしれないけれど、暴れられて、傷つけられ、つらい記憶を刻まれた人々がいるのに、その存在を残しておくことはできないんです」
「――ええ、まさしくその通りですわ」
「え? ……ふ、福ちゃん、何その自信満々な笑顔……」
「結論から言いますと。……ローズマリーさん、メニャーニャさん、あなた達は魔物の事情というものについて、一切考慮する必要はありませんわ」
「は、はああっ!!?」
「……オイオーイ。そんなあっさりバラすナヨー」
「あら、これからお二人は忙しくてピリピリしなきゃいけないのに、余計なストレスを抱えさせるものではありませんわよ?」
「……ええと、あの。お言葉はありがたいんですが、また随分とばっさりぶった切った結論を出されましたね、福の神様……?」
「一理あるとは言いましたが、実のところ私と今回の魔物達とでは事情が違います。魔物達に関して言えば、今ゼンマイ山に留まっているものの他に、決戦の最中にも右往左往しているものが居ると聞きましたが……その一方で、太古の森の人間に使役され、私達にはっきりと牙を剥いたものもいるのです」
「……ええ、全てがそうじゃなかったにせよ、確かに太古の森の仕掛けのせいで、多数の巨大魔物と戦う羽目になりました」
「ゼンマイ山に居るものも、放置したままではいずれ、使役方法を見つけた人間が良からぬことに利用するかもしれません。そうなる前に駆除してしまうのは――お二人は国を守る責任を負った方々ですから、理に適っていることなのです」
「はあ……」
「それに、今イリスさんが魔物の心情とやらを語ってみせましたが……実際に意思疎通ができるわけではないのですし、どれだけ考えても想像の域を出ないのです。であればあなた達は、守りたい人を守るために、迷わず決断なさいませ」
「……ハーア。すっかり毒を抜かれちまったナア」
「ああ、それからイリスさん」
「ナンダ?」
「あなたが今お二人に絡んだのは――」
「本当にただ単に、お二人をからかって楽しみたかっただけですよね?」
「……クッハア。そこまでバレてやがるカ」
「おいこら、それはそれで腹が立つんだが、どういうことだ?」
「簡単なコトサ。もっと真剣に問題提起するんなら、会議の時点で議題に出してたサ、ってコトダヨ」
「……くえねー……煮ても焼いても……」
「アッハハ、いーい顔しやがる。ま、福の神サマの言うとおり、オマエらはオマエらのやるべき事だけきっちり考えとけヨー」
「そうですわ、イリスさんの言葉は全力スルーでオーケーですからねー」
「いや、全力スルーでってオマエもひでえナ……」
「イリスさんに比べれば大したことないですわ。さ、会議に行きますわよ?」
「ヘイヘイ……んじゃナー。文字通り邪魔したナー」
「……何だったんでしょうか……どっと疲れました……」
「私もです……お疲れ様です、メニャーニャさん」
「ああ、いえ……あの悪魔、ほんと、くえねー……」
「……いや、しかし。やるべきことをやれ、とは言われましたが。話し終わってみると、考えるべきことも多いというか、少なくとも実りはあったような気はしますね……」
「……ローズマリーさんもそう思いますか」
「……巨大魔物も、境遇自体はハグレと変わりないのかもしれない。私達も、居場所を作るのに必死だった。周りとの戦いもあった」
「福の神様も、最終的には恐れられるまでになってしまったけれど、それは居場所を確保するために戦った結果で、なおかつ、それ以上を望む御影星を止めようと、頑張ってもいた……んですよね?」
「ええ、そう言っていました。……この戦いもある意味、私達の居場所を守るためのもので。そのために避けられない、ぶつかり合いなんでしょう。きっと」
「……譲れない戦い、ってやつですね」
「……それと、私としてはもうひとつ考えることがあります。これは私が薬師だからなのかもしれませんが」
「……何でしょう?」
「イリスが最初に投げた言葉は、間違いなく毒そのものだった。……けれど、福ちゃんが間に入ってくれたことで、その毒は上手い具合に中和され、良い成分が抽出され……そうして、薬が馴染むように、私達の心にすうっと溶けていったんです。こうして言葉を受け止めて考えることができるように」
「……なるほど。毒も扱いや研究によって薬に転じる、というのは珍しくありませんものね。……しかしこうも上手い具合にこうなったとなると、もしかして、お二人は示し合わせてたんでしょうかね?」
「……さあ。さすがにそこまではわかりませんよ。わかるのは――」
「やっぱりあの二人は、神と悪魔というそれぞれの立場にありながら、妙に仲良くやっている、ということだけです」
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こうと
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男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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