イリス、キャサリン。
王国レストランの評判は上々ですが――

「ヘーイ、ランチオーダープリーズ♪」
「ああ？　……なんだ、あんたか」
「オイオーイ、スマイルプリーズ。愛想の悪い接客は良くないデスヨー？」
「商売敵がそれを言うのかよ。最近また冥界ハンバーガーに客を取られてるんだが？」
「フフン、好評で何よりデース♪　けど、それはそれ、これはこれデース。割り切ってくだサーイ」
「ったく……で、ご注文は？」
「ソウデスネー、今日は王国オムライスをひとつでお願いシマース♪」
「はあ？　……珍しいな、UMAカリーじゃなくてか？」
「たまには違うものをいただきマース♪」
「言っとくが、辛党のあんたに合うかどうかは保証しないぞ？」
「そこは気にしなくてオーケーデース。というより、むしろごく普通に調理して出してほしいデース」
「なんだそりゃ。後から文句言っても受け付けないからな？」
「了解デース♪」



「――ほらよ、オムライス一丁」
「サンキュー♪　じゃあ早速いただきマース」
「ご注文は以上で？」
「イエース……あ、ついでにユー自身の時間も少しだけプリーズ」
「はあ？」
「イヤ、実はちょっと話がしたくてナ。このオムライスのことも交えながら……ン、ウメェ」
「んん？　……意外な感想が来たな？」
「なかなかの出来ジャナイカ。ま、私基準じゃちょっと刺激が物足りないが、好評なのは納得いくトコロダ」
「あー、そうですかい」
「生返事ダナァ……素直に褒めてるつもりなんだが」
「そう言ってくれるんなら、バーガー侵略も諦めてくれると嬉しいんだがな。売り上げが伸びれば、それだけこっちも料理に力を入れられるんだから」
「一理ある……が、力を入れる、というと――」
「ああ？」



「ユー、後進の育成は考えたことあるのカ？」



「は？　こ、後進？」
「イエス。弟子を取ったりはしないのカ？」
「え、ええ？　……いきなり言われてもな。考えたこともなかったよ」
「ソウカ。ま、今からでも遅くはないと思うケドナ」
「なんだそりゃ。やけに促すな？」
「そりゃナ。私から見てもここの料理は美味いと思うし、だからこそ末永く続いてほしいモンでナ」
「……何か言いたいことでもあるのかよ」
「ソウダナ、この際だからはっきり言っちまおう――」



「果たして、ユーはいつまで現世に留まっていられるのカナ？」



「……ああ、そうか。今あんたが言いたいこと、なんとなくわかった」
「ソウカ。……あくまでユーはミアラージュの術によって一時的に留まっているに過ぎない」
「…………」
「未練と恩義によって存在しているワケだが――おそらく、それほど長い時間は留まっていられないダロウ」
「……そうだな。きっと成仏する時が来るんだろうな、オレも」
「それは良いコトダ。しかし、今ユーが去っちまったら、このレストランの料理の味を再現できる者が居なくなってしまう。ハグレ王国にとっちゃ、大きな損失になるんじゃナイカ？」
「……かもしれねえな。そうなったらあんたの侵略が加速しちまう」
「クク、あくまで私への対抗を理由にするのカ。ま、そうなるのが嫌なら、考えてみるんダナ」
「そうだな、少し真剣に考えてみるよ。あんたに感謝するのは癪だが」
「フフン、前向きな成果を期待してマース♪」