タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
+ + + + + + + + + +
「…………」
「……? イリスさん、私の顔に何か付いてます?」
「――シット」
「ええ? いや、人の顔見て眉をひそめるのは――」
「ユーを花婿に迎えられれば、冥界の悪魔たちも一発で黙らせられるだろうにナァ」
「…………いや、あの」
「ナンダ」
「言われた内容もびっくりしますし、しかめ面で言われてしまうとすごく反応に困るんですけど……」
「フン」
「……ああ、でも、なるほど。だから不機嫌なんですね?」
「アンダスタン?」
「残念ですが、私はあなたのものにはなれません。私はすでに、身も心もヅッチーに捧げていますから」
「アイノウ。それさえなければ、氷の悪魔としてスカウトしてやったってのに」
「スカウトというか、プロポーズみたいですね?」
「……かもナ」
「冥界姫のあなたからそんなお言葉をいただけるのも、光栄に思うべきなんでしょうね」
「そこまで言いながら私を振るのか?」
「仕方がありませんし。……でも、本当に私はイリスさんのパートナーに相応しいんですか?」
「今更そこに疑問を持つのかヨ。すでにこの世界に悪魔的な評判を轟かせて、確かな手腕を持っている。実に魅力的な人材だよ、お前は」
「ありがとうございます。……けれど、イリスさんは見ているはずですよ?」
「――強いだけではないお前を、か?」
「ええ、すごく情けない姿をさらしてしまいました。それでもなお、あなたは私を欲しいと言ってくれるんですか?」
「強いだけの存在なんてつまらないサ。あの時のお前は弱かったが、普段からは想像もつかないような激情も見せてもらった。強さと弱さが複雑に混ざり合ってこそ、魂ってのは美しく映えるものだ」
「……あの時は支えてもらいました。それは恩に着ます。ですがそれでも私は」
「分かってる。お前はせいぜい私の悔しがる姿を見て笑ってるがいいサ」
「笑うは笑うでも、馬鹿にするようなことは出来ませんねぇ……」
「――しかし、皮肉なモンだな」
「え?」
「あの時のお前はトラウマを思い出したようだが……刻んだのは、他ならぬヅッチーじゃないのか?」
「……そうとも言えますね。そもそも妖精戦争は二つの王国によるヅッチーの争奪戦で、私はヅッチーを殺そうとした。敵対し、その末に負けたんです」
「その敗北で、妖精王国の側は少なからぬ人的被害を出した。そんなところか?」
「代わりにハグレ王国は拠点の遺跡が大きく損壊しましたので、痛み自体はどちらにもあったんですけども」
「まあ、結果としては雨降って地固まるってヤツか?」
「そう、ですけれども……私の中で、不安は残ったままなんだなと、実感させられます」
「……誰だって、何もかもが上手くいくわけじゃないサ。強いだけの存在なんてつまらない、とはさっき言ったが」
「誰にでも失敗はあると。……でもその失敗が、取り返しのつかない悲劇を生んでしまったら?」
「――死んだ奴は還らない。お前がショックを受けるのもわかる」
「…………」
「だが、あの時の私たちはリュウビトと殺し合いをしていた。リーダーであるならばなおのこと、立ち止まっている暇はないんだ。そうしなければもっと多くの味方が死ぬ」
「……言葉、だけではありませんね。あの時のあなたは、まさに行動でそれを示した。やはり、あなたも王の器をお持ちなのですね」
「――王と比べて不安になるのか?」
「ええ。……私はヅッチーと比べて、リーダーとしてしっかりやれているだろうか。みんなに信じてもらえているだろうか――ヅッチーという光と比べて、自分がとてもちっぽけに思えることがあるんです」
「……なるほどナ。お前のトラウマの根源はそういうコトか」
「ちょうど、イリスさんの中にも同じ光を見たかもしれませんね」
「ハッ、悪魔の中に光を見たか。ジョークと笑いたいところだが……そうじゃないんだな?」
「残念ながら、いたって真面目ですね」
「――はっきり言ってしまえば、お前には無い光だな。お前は努力もするし相応に実力もあるが、おそらくは絶対に手に入れられないものだ」
「……容赦ありませんね」
「する必要もない。だからこそ、光を持つ者に寄り添う、それがお前だ。そしてお前はそれでいい」
「……いいん、ですか?」
「――特別サービスだ。今度またお前がリーダーを務めることがあったら、その時は私を呼べ」
「……サービス、ですか?」
「イエス。お前に免じて対価も無しにしてやる」
「……それはそれは、怖いくらいのナイスサービスですね。後で私の魂を手繰っちゃったりしません?」
「こんな時くらい信用しろヨ、まったく。ま、普段のお前はどうせ、ヅッチーヅッチー言ってる腑抜けなんだろうがナ」
「あ、ひどい」
「ククッ、褒め言葉ダゼ?」
「そうですねー、あなたは悪魔ですもんねー」
「けど、お前だって実質悪魔ダロ、プリシラ?」
「またひどい。私なんてちょっとお金にうるさいだけの妖精ですよ?」
「よく言うゼ……」
******
――カランカラン♪
「いらっしゃいませー……あっ」
「ハロー、プリシラ♪」
「イリスさん、お食事ですか、それとも何かご用ですか?」
「マァ、先に用事ダナ。ジュエル持ってきたゼー」
「あら、ありがとうございます。ええと、青ジュエル2つですね……10万Gになります」
「おっと、それじゃあ渡せないナ。今回は上乗せしてもらうゾ」
「ええ? ……おいくらで?」
「2つで11万ダ」
「うーん、それくらいなら構いませんが……理由を言っていただかないことには」
「ナンダ、言わなきゃいけないカ?」
「納得のいく取引をしたいので。……私の困り顔を見てニヤニヤするのやめてもらえません?」
「悪いナ、私にとっちゃこの上ない楽しみのひとつナンダ」
「んもう。そういうことを言うなら買い取りませんよ?」
「ハハ、そう言うな。ちゃんと真面目な理由はあるサ……というわけで、カモーン♪」
――カランカラン♪
「あ、いらっしゃいませー……あら?」
「こんにちは、プリシラさん」
「レプトスさんじゃないですか。もしかして、今日はイリスさんに案内されてこちらに?」
「そうなんですよ……突然だったからびっくりしたんですけど」
「珍しい組み合わせですよね。イリスさんが誘ったんですか?」
「イエス。話を聞いたんだが、コイツはトルマリン亭の戦力になってくれるゼ?」
「それはまた唐突な……でも、興味が湧きますね?」
「フフン。ユーのスキルを説明してやりナ、リューグーガール」
「はい。先にイリスさんから説明があったんですけど、このトルマリン亭では宝石のアクセサリー販売もされているそうですね?」
「ええ、そうです。ジュエルを持ってきてくだされば、こちらで買い取っています」
「――私、リューグーで宝石加工をやってたんですよ。プリティーエミリーっていうお店に納品して、生計を立ててました」
「ああ、なるほど……! わかりました、それなら確かにこちらでも働いてもらいたいですね!」
「そういうわけダ。それにコイツは料理も上手いからナ、まさにうってつけの人材だろう?」
「……イリスさん、それだと先程の価格提示はむしろ安いくらいですね。青ジュエル2つ、12万で買い取らせていただきます」
「クク、ころっと態度を変えやがったナ。アー、ちなみに私が受け取るのは半分ナ」
「半分……ということはもう半分がレプトスさんですね。わかりました」
「えっ……え、えええっ!? 6万ですよね!? 多すぎますよ!?」
「――リューグーガール、それはユーの悪いところダゾ?」
「ええ?」
「ユーのスキルに相応しい対価を払うことも、プリシラにとっての礼儀ってやつダ。ユーはもう少し、適正な評価を素直に受け取ることを覚えたほうがいい」
「は、はあ……」
「欲が無さそうですよね。でも、レプトスさんは間違いなく魅力的な人材ですよ」
「せっかくなんだから、スキルを活かして地上でしっかり働いてみるのも、悪くはないゾ?」
「……そう、ですね。機会をいただけるのはとてもありがたいです。わかりました、プリシラさん、しばらくお世話になりますのでよろしくお願いします!」
「こちらこそ。期待させてもらいますからねー?」
「はいっ!」
「オーケー、話はまとまったようダナ」
「そうですねー……でも、イリスさん?」
「ワット?」
「終わってみれば、レプトスさんに対しての働き口の紹介って……悪魔らしさが微塵もない、至極真っ当な用事でしたね?」
「あんまり言うな。正直、自分でもアイデンティティの危機は感じてるんだけどナ」
「ええ!? イリスさんって悪魔だったんですか!!?」
「今更すぎるダロ!!?」
「いえ、だって、ゼニヤッタさんも悪魔だそうですけど、あの人は角が生えてるから納得いきますし……それと比べるとイリスさんって」
「あー、確かに見た目は普通の人間って言っても通りますよね」
「いや、だからってヨォ……あー、もういいや、この話は深入りしたくない」
「ふふ、せっかくですからイリスさんもトルマリン亭で働いてみませんかー?」
「お断りダ。冥王姫たるもの、そう簡単に誰かの下になんて就けやシネェヨ」
「残念ですねぇ……」
「ま、たまには顔を出してやるし、またジュエルを持ってきてやるから、それで我慢シロ」
「……うーん、やっぱりイリスさんが悪魔だなんて信じられませんねぇ」
「納得いかなさそうな顔ヤメロ、リューグーガール」
「ええ? 今のやりとりだって、なんだかんだで世話を焼いているように見えてしまいますし……」
「ああそうそう、世話焼きと言えばリュウビトが襲来してきたあの夜のイリスさんはですねー、もがっ!?」
「それ以上言うと容赦シネェゾ!!?」
「うふふ、仲が良いんですね♪」
「コレ見てそれを言うカ!!?」
******
「ハッピーバースデー、メニャーニャ♪」
「違いますけど!?」
「ノンノン、細かいことは気にするなデース♪」
「全然細かくないんですけど!!?」
「フフン、ナイフのように鋭いナイスツッコミデース♪」
「上手いこと言えてませんからね?」
「ま、それはともかく。記念日ってことで、プレゼントフォーユー♪」
「何ですか……ハンバーガーじゃないですか」
「イヤァ、いつものとは違うぞ? ユーの料理からヒントを得た新作ダ」
「私の? ……あ、ゆで卵をスライスして挟んでありますね」
「イエス。ベーコンエッグチーズバーガーってナ」
「なるほど。私のお弁当パンを参考に?」
「ソウダゼー。だから試食ってことで、対価はいらないゼ?」
「ああ、でしたら遠慮なく」
「――可もなく不可もなくというか、普通に美味しいですね」
「ま、そこまで突飛な味にはならないだろうサ。ちょいと塩気が強めだが」
「お手軽さを考えれば、なかなかのものではないでしょうか」
「好評ってことでいいのカナ?」
「ええ、問題ありません」
「実のところ、元になった弁当パンも、ファーストフードとしちゃイイ線いってるんだけどナ。ユー、今度ハンバーガーショップでバイトしてみないカ?」
「……すみませんが遠慮しておきます」
「オー、ダメデスカー……」
「あれ、思ってた以上に残念そう……」
「いや、弁当パンともうひとつナ。チキンナゲットも作ってきたダロ、ユー」
「あー……そこにも目をつけられてましたか?」
「イエス。セットメニューとして結構人気なんだゼ? メニャーニャが作ったチキンナゲットって言ったら、売れるだろうナァ」
「いやそんな、あなたの食べたサクランボみたいな阿漕な商売やめてくださいよ」
「実際に作って卸してくれたら、阿漕じゃなくなるゼ?」
「評価はありがたいんですが、私の希望する分野ではないので、お受けできませんね」
「残念デース……ま、でもやっぱりユーのおかげでこういう新作を思いつけたから、感謝はしておくヨ」
「どういたしまして。……ああ、でも次の秘密結社会議の際は料理長に志願しておきましょうか」
「ワット?」
「せっかくですから、私の料理でよければ食べていただこうかと」
「……私もかなり現金かもしれまセーン……」
「なんでですか」
「いや、そういうこと言われて出される料理なんか、絶対美味いに決まってるダロ」
「あまり期待されても困りますけど」
「期待じゃない、確定ダ」
「まったくもう……」
******
――ずぞるるるるっ。
「ンー、ソーデリシャス♪」
「すごい勢いの食いっぷりじゃな……」
「まさかイリスにそこまで気に入られるとは思ってなかったんだけど……」
「良いトッピングが見つかったんダヨ。ちょうどコンパクト菜園から採れたヤツ」
「ワビサビノーブルだっけ?」
「要するにわさびじゃな」
「イエース。ソイツをすりおろしてタレにちょっと混ぜてやったら、絶品料理に早変わりデース♪」
「辛いのが好きなんだっけ?」
「ま、単に辛けりゃいいってもんでもないけどナ。茶そば自体との相性も抜群デース♪」
「そうかぁ……イリス相手と言えども、そこまで喜ばれると照れるなぁ」
「そんなに美味いのか? わらわも一口もらいたくなってきたんじゃが……」
「アー、風味を殺さない程度ではあるが、このタレのわさびは私好みで多めに入れてるゾ?」
「むう、それならまたの機会にしようか……」
「まあ、リクエストがあるならまた作るよ。そば粉ならプッカプーカですぐ買えるしね」
「サンキューローズマリー♪ ついでにわさびもプッカプーカで手に入るはずデース」
「いつの間に調べておったんじゃ……」
「イヤァ、私は辛党だが、さすがに和食に赤唐辛子は合わないからナ。そういうのにはわさびか山椒あたりが欲しいワケで」
「うん、プッカプーカって森と湖の町だからね。そういうのの栽培にも向いている環境だと思う」
「町っていうか規模や雰囲気は村だけどナ」
「それは少しでも大きく見せたいからって住人が言っておったじゃろ?」
「イエス。マァ、どっちでもイイヤ」
「適当じゃのう」
「それよりわさびの話ダヨ」
「わさびが主題かっ!?」
「イエース。今日の私はわさびの良さをアピールするのデース!」
「そこまで好きなんだ……」
「茶そばもそうだけど、わさびをトッピングして美味くなった料理って他にもあるからナァ。リューグーガールのシラス丼とか」
「あー、言われてみれば合いそう」
「実際合うゼ?」
「もう食べたのか……うーん、腹が減りおる」
「グルメフェスなんだからなんでもかんでも食って楽しめヨー。私だってハンバーガーを推してるが、それだけってのも勿体ないからナー」
「ふむん。それならわらわはギトギト喫茶料理を推すぞ?」
「オゥ、アリジゴク肉の料理デスカー? わさびブームが落ち着いたらお邪魔シマース♪」
「あくまで今はわさび推しなんだね……」
「イリス、おぬしもしかして、寿司とか好きじゃったりするのか?」
「オー、スシ! アレもわさびとの相性抜群デスネー♪」
「ちゃきちゃきカフェの常連だったりする?」
「イエース。まあ、その時はそこまで気にしてなかったけどナ。スシだけじゃなくていろんな和食に試してみたいと思ったのは、グルメフェスがきっかけデース」
「なるほどねぇ……」
「侵略者のくせに、えらくこの世界に染まっておるのう」
「ぶっちゃけ、あきらめたわけじゃないんだけどナ。ただ、考え方はかなり変わったと思うゼ」
「というと?」
「力づくで蹂躙するんじゃなくて、この世界に育った文化を手に入れたい、ってところカナ。つい最近、蹂躙を阻止する側に回ったからってのもあるが」
「それって赤いリュウビトとの戦いのこと?」
「イエス。奴はまさに殺戮や破壊をもたらそうとしたわけだが……そうやって他者の文化を認めず、ぶっ壊して更地にして、そこにまた一から自分たちの文化を築こうなんて、ベリーナンセンスってやつダ」
「しかし、おぬしも初対面時はそのようなスタンスではなかったか?」
「そうだな。だからこそ、あの時と比べて変わっちまったなって自覚させられるんダ」
「正直、ここまで話してて、あんまりイリスが悪魔だっていう気がしないんだよね……」
「そりゃ、だいぶ気が緩んでやがるナ」
「そうやって油断させておいて……という腹ではなかろうな?」
「ノーウォーリー。そうするには愛着が湧きすぎちまったヨ」
「本当に?」
「――ハグレ王国も、秘密結社も。なんだかんだ、私の興味を惹きつけて止まない。この世界そのものの盛り上がりを、もうしばらく眺めていたい。そう思うと、壊させるわけにはいかなくなった。たぶん、そういうことなんだろうナ」
「……ふうむ。そんな言葉が聞けるとなると、おぬしも随分と染まっておるな」
「かもしれないナァ。この世界に興味を抱かせるってのは、確か、デーリッチが言っていたっけか?」
「そう……だね。この世界を好きになってもらおうって、そのための努力を続けていこうって、そう言っていた」
「ちょろい国王のくせにナ。いつの間にか、侵略されていたのは私のほうだったってわけダ」
「今でもハンバーガーで釣っておるくせに……」
「だってアイツラ美味そうに食うんだもんヨ。飽きさせないためにいろいろバリエーションを考えたりだってしてるんだゾ?」
「まあ、今はグルメフェスだから、あまり口出しするのも野暮だよね?」
「その代わり私は私でこうしてユーの茶そばを堪能させてもらってるわけダ。別の文化の美味いモン食ってると、それだけで滅ぼすのは惜しいってなっちまうゼー?」
「マリーの茶そばに救われる世界とな?」
「大げさすぎるっ!?」
「あるいはユーのPRしたカレーに救われる世界なんてのもあるかもナ、ドリントル?」
「わらわはコーヒープリンセスなんじゃが!?」
「文句はミアラージュに言いナ」
「くぅ……」
******
「――フー。ゴチソウサマデシタ♪」
「律儀に手を合わせておる……」
「食べる前もやってたよね。悪魔とは思えないなぁ……」
「和食のマナーってやつダロ? ウェンインローマ、ドゥーアズザローマンズドゥー、ってやつデース」
「いや、わからんわ」
「ええっと……郷に入れば郷に従え、だっけ」
「オー、イエース。なんだ、マリーは私の言葉がわかるのか?」
「まあ、勉強はしてるけど。もともとは冥界固有じゃなくてどこかの異国の言葉らしいね」
「まあナ。というか、冥界でも私くらいしかこんな喋り方してないしナ」
「なんじゃそれは」
「じゃあ、イリスがその異国の影響を受けたことになるわけだ?」
「かもナ。いろんな国、いろんな世界があって、その数の分だけいろんな文化があって……いや、この世界だけでも文化の数ってのは相当あるだろうナ」
「ハグレたちのおかげで、いろんな異世界の文化が流入しておるからのう。雪だるまキックやらプリミラやら」
「ユーだって持ち込んだダロ、ドリントル。MUFOキャッチャーやゲームセンターだったり、ドッグレースに宇宙枠を創設したりサ?」
「そうじゃな、好評で何よりじゃよ」
「そう思うと、イリスのハンバーガーも、単に文化を持ち込んでるだけってことになるのかなぁ……」
「イエース。この大陸のみならず、海の向こうまで浸透させてやるデース!」
「最近あんまり止める気がしなくなってきたのう……」
「代わりに今みたいにこっちの作った料理も美味しそうに食べてくれるからかなぁ」
「ギブアンドテイク、デース。ただ、ハンバーガーについてはマリーやキャサリンがあんまりいい顔しないのが残念だが」
「そりゃ自業自得じゃろ。子供たちをたぶらかそうとした第一印象が悪いわ」
「せめて晩ご飯前はやめておくれよ……」
「やめろと言われてやめる私じゃないデース。それになんだかんだでしばらくしたら体型も元に戻ってるしナ、アイツラ。遊び盛りでたくましいことデース」
「開き直りの上に正当化しおった!?」
「まあ、イリスらしいといえばらしいけど……」
「――ところで、文化の話をしたワケだが。続きがてら、ちょっと聞いてくれないカ?」
「んん? なんじゃ、急に改まって」
「いや、まあ、構わないよ。というか、わざわざそんな言い回しをするんだから興味が湧くね」
「サンキュー。ま、ここ最近の秘密結社活動でも、異文化ってやつには触れたワケジャン?」
「ふむ、例えば?」
「まずバルバル族ナ。ヤツラって島暮らしで、最初は言葉が通じなかったダロ?」
「あー、そうだね。初対面の時はジュリア隊長が勢いだけでコミュニケーション取ってたけど」
「最初は蛮族かと思ったのう……」
「けど、その第一印象に反して、料理トーナメントなんてやってるくらいだから、食文化のレベルはかなり高いと思うゼ?」
「そうだね……しかもそれに合わせて、実況さんはすごく流暢に共通語を喋ってるしね」
「食文化のレベルアップのために大陸に渡ったヤツもいるし、かと思えばあのトーナメント、天界や和国やリューグーや、世界各地からも参戦してくるしナ。まったく馬鹿にできたモンじゃない」
「今まで知らなんだが、確かに参加してきた面子を思うと、最高峰の料理対決の舞台と言っても過言ではないのう」
「ま、そこは今後、秘密結社もどんどん参加して盛り立てていけばいいと思うがナ。その最高峰の舞台で絶賛される料理人だって、結社は多く抱えてるんだからサ?」
「クウェウリとレプトスはまさに双璧じゃなぁ……流行を掴めば弁当でも500点を超えてきおるんじゃから」
「おかげでこっちも新料理の開発が捗りマース♪」
「あー、ヘルシー志向のバーガーも作りたいって言ってたっけ?」
「イエス、マリーみたいなヤツのニーズにも応えなきゃナ?」
「悪魔とはいったい……」
「っと、前置きなのに長くなっちまったナァ」
「いや、ホントに長いよ。ってことは、このあとが本題なんだ?」
「イエス。バルバル族と共通する部分があるヤツラ……リュウビトたちについてダナ」
「共通じゃと?」
「言葉は通じないが、持っている文化レベルはかなり高いと思うゾ、アイツラ」
「なるほどね。まあ、トップに立つ始祖竜たちが、かつてこの世界に降り立った古代人の生き残りだったらしいから、なんとなく納得はいくんだけど」
「――戦闘力は目を見張るものがあるな。あの夜の侵略はこちらも非常に危機感を抱かされたし、竜の島の大地層では現在進行形で兵器開発をしておったんじゃよな?」
「それでいて、人数的には少なかったけど、こちらと同じ共通語を喋るリュウビトもいたし……というか、どうも喋り分けができるみたいだね」
「やろうと思えば、逆に私たちがリュウビトの言葉を学んでグゲゴゲっと喋って意思疎通したり、なんてことができるかもしれないナ?」
「あんまり想像がつかんが……確かに、不可能ではなさそうじゃなぁ」
「……うーん、でも今はそれって難しいかもしれないね」
「ホワイ?」
「竜の島の中でそういう学術的な部門に縁がありそうなのって、水麗層なんだけど……」
「……アイシー。今の私たちにおいそれと近づける場所ジャネェナ」
「ひどい出来事じゃったな……」
「悪魔より悪魔じみた奴ってのはいるもんだな。狂気は言い訳にならないぞ」
「そうだね。それだけに、メリュジーヌを信じていたリュウビトの人たちのことを思うと、やるせないよ」
「……ユーやキングもそうだが。ラージュシスターズとリューグーガールは大丈夫なのか?」
「うん……、なんとかね。みんな、思っていたよりも強いよ。表に出してないだけかもしれないけど」
「出さないだけでも十分じゃないか。まったく、悪魔ながら心配になっちまうゼ」
「イリスも随分と秘密結社に思い入れがあるんじゃのう?」
「たぶんナ。なんだかんだ、ヘルラージュは立派なリーダーだと思うし、立派にやれるように私たちが盛り立てていかないとナ?」
「いいのか? 悪事とは無縁な娘じゃぞ?」
「クク、そこはちょっとしたスパイスってやつサ。かといって、ユーたちの監視の目もあるわけだしナ?」
「それも含めて楽しんでない?」
「楽しいほうがいいだろう? 今リュウビトについて話題にしたが、リュージンとリュウビトの和解に向けても秘密結社は関わっていくだろうし、そうなると忙しくなるからナ」
「ふむ、それもそうか……何事も楽しく、というのは確かにのう」
「うーん、それにしても……」
「ナンダ、どうしたローズマリー」
「なんだかもう、イリスって私よりも参謀が板に着いちゃってるような……」
「オイ、そこまで大げさな話じゃネェダロ。大層な話にはなったが、ただのランチトークだぞ?」
「む、調子に乗らんのか?」
「乗っていいのか? まあ、弱気になるなよってコトダヨ」
「励まされたし……」
「今度また茶そばを奢れヨ。それを励まし代にしてヤロウ」
「見返りを要求するのか……」
「いや、でもこれはこれで悪い気はしないよ。よっぽど気に入ってくれたんだね」
「正直、死後も雇いたいくらいダ」
「おいこらやめんか」
「ホワイ? 基本的には善人だが、わりと悪魔的な資質もあると思うゼ、マリーは」
「うーん、イリス的には褒め言葉だと思うけど、遠慮させてもらうよ」
「いや、もっと強い口調で断ったほうがいいのではないか?」
「クク、脈はありそうダナ? まあ、でも実際どうするかはハグレ王国や秘密結社の行く末を見届けてから、ダナ」
「わらわとしてはどれだけ経とうと、マリーが悪魔になびかないことを祈るしかないが……」
「人間の心ってのは移ろいやすいもんダゼ? まあ、王国に関することならマリーの決意は固いかもしれないけどナ」
「むしろ心の移ろいやすさはイリスを見てると感じるよ?」
「オー、言ってくれるジャナイカ。わりと否定できないケド」
「とはいえ、おぬしはおぬしで変化を楽しんでおるよな?」
「何でも接してみないことには楽しいかどうかもわからないし、影響を受けて変わることもあるサ。その一方で、変わらない信念を持ち続けるのが大事ってコトもある――結局はテイクイットイージー、なるようになるってヤツさ」
「ふうむ、深いようなそうでもないような……」
「あんまり大したことは言ってないゾ?」
「ふふ、それでも聞く価値はあると思うよ。なんだかんだでイリスからも学ぶことはいっぱいありそうだね」
「ヤレヤレ、だったらしばらく私のランチは茶そばデスネー?」
「おい、毎食奢ってもらう気か?」
「フフン、対価は払ってもらわないとナ? 私は安くないし、イコール、マリーの茶そばの価値だって安くはないんだゾ?」
「そこまで言われると照れるなぁ……あ、でもイリスに奢るなら毎回わさびも用意しないといけないのか」
「まあ、わさびは私の好みだから、自分で採ってくるくらいはしてもいいけどナ」
「やれやれ……それならわらわも手伝わねばのう。わらわもそば打ちのやり方なりわさびの採取方法なり、学ぶことはあるかもしれん」
「どっちでも歓迎するゼー。何なら今度はカレーじゃなくてそばのキャンペーンガールでもやってみるか?」
「だからわらわはコーヒープリンセスじゃと言っておろうがっ!?」
「おあとがよろしいようで……」
「よろしくないわっ!?」
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プロフィール
HN:
こうと
Webサイト:
性別:
男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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