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タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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決戦イベントで玉砕したあの人。

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「ええっと……今回の資料の用意はこんなもんかな……まだ何か忘れてないっけか……」

 ――コンコン。

「ローズマリーさん、失礼します。今は大丈夫でしょうか?」
「ん、ゼニヤッタかい? どうぞー」

「……取り込み中でいらっしゃいましたか?」
「まあ、もうすぐ会議だからね。でも話なら聞けるよ。どうかしたのかい?」
「話と言いますか、手紙を預かっておりまして。イリスさんは今回、会議を欠席されるそうです」
「欠席、だって? どうしてまた……そういえば初めてだな。なんだかんだで今まで律儀に出席してたんだな……」
「理由はこちらの手紙に書いてあるそうです。どうぞ」
「ふうむ、どれどれ……」



 ――ハロー♪ 元気にしてマスカー?
 私は今回、冥界のほうで大事な用があるので欠席させてもらいますヨー?
 ハグレ王国が関わった、先日のテロリストどもとの戦争の死者の魂が、一部、冥界に流れてきているのでネ。そいつらを処理しないといけなくなったのデスガ、少し時間がかかりそうデース。
 おそらく次の会議までには戻ってこれると思うので、今回はそういうことで、よろしくお願いしマース。
 シーユーアゲイン♪



「……軽い口調で書いてるが、なんだか内容が物騒だな……魂の処理というのもよくわからないが、とにかく忙しくて外せない用事ってことでいいのかな?」
「……以前にイリスさんご本人から聞いた話ですが、冥界に来る魂というのは、生前にとびきり大きな罪を犯したものがほとんどだそうです」
「なるほど……それが、先日の太古の森との戦いで大勢やってきちゃった、ってことか……」



「……、もしかして……」
「どうかされましたか?」
「……いや、なんでもない。憶測は口には出せないよ」
「では、わたくしも訊ねるのはやめておきましょう。それでは、確かにお伝えしました」
「ああ、ありがとうゼニヤッタ。会議で、また」
「はい。失礼致しました」



「……戻ってきたら訊いてみるかな……多分、あの三人にも関係があるだろう……」





******





「……う、うう……ここは……」

「……僕は……どうなったんだ? ここは……どこだ?」



 ――ハロー? ハウアーユー?



「なっ!? ……誰だ!? どこにいる!?」



 ――オマエの正面にいるヨ。よーっく見てみろヨ。



「……っ、誰だ、お前……!」



 ――ヨウコソ、冥界へ。私はこの冥界を支配する者のひとり。
 冥王シェオルの娘、イリスという。

「……冥界……だって……!? どうして、僕がこんなところに……!?」

 ――オイオイ、忘れたわけじゃないダロウ?
 オマエは死んだんダ。そして今、魂となってこの冥界へとやってきた。
 ……冥界に来るってのはナ、とんでもないことだゾ?

「……とんでもない、こと?」

 ソウダ。
 魂ってのはナ、死んだ後に、生前の行いによって天国・地獄・冥界のどこに向かうかが決まるンダ。で、冥界に来る魂ってのはナ……



 ――ひとつの例外もなく、ド外道であることダ。



「……ド外道……だとっ? 僕がか? この僕がかっ!?」

 ――ナンダ。違うとでも言うのカ?

「ふざけるなっ!! なんで僕が、お前に、いきなり、そんなことを言われなきゃならないんだっ!?」

 ――私が罵倒してるわけじゃネエンダヨ。冥界に来ちまった、その時点でもう。お前がド外道であることは決まっているンダ。

「っ……嘘だ、嘘だっ!! この僕がっ!!」

 ――アア、ウルセエナア。今すぐ踏み潰してヤロウカ?

「ぐうっ……!!」

 ――言っとくが、抵抗なんて不可能だからナ? 今のオマエは魂だけの、とてもとても脆弱な存在ダ。踏み潰したり、握り潰したり、キャンディにして噛み砕いてやったり。私の気分ひとつで、どうにでもなっちまうンダゼ?

「くっ……くそったれっ!! そうやって、お前も僕を虫ケラみたいな目で見やがるのかっ!!」

 ――アアン?

「どいつもこいつも僕を見下しやがって!! 僕の才能を、僕の成果を何一つ認めようとせずっ!! どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも、どいつもこいつもおおおおおっっ!!!!」

 …………。

「お前も、どうだってんだよっ!! 何とか言えよっ!!?」



 ――――。





 ――裕福な家に生まれ育った、少年がいた。

「……は? ……何、だよ、いきなり……」

 ――国の中でも高い地位を持つ両親の元に生まれ。
 その両親に憧れるように、少年は召喚士という地位を目指した。

「……っ!!」

 だが、そのために通っていた学校で少年を待っていたのは、少年の家の裕福さや、両親の名声を妬む声だった。そしてそれらと比して少年は下種なのだと罵る声だった。
 いくら少年が頑張っても、周囲は親の七光りだの、金を握らせて甘い評価をもらっただのと言い、少年の努力と成果を何一つ認めようとしなかった。

 また不幸なことに、少年の周りには少年自身を認めてくれるような友人がおらず。
 たった一人で妬み嫉みに耐えるには、その時の少年はあまりにも弱く。
 少しずつ、少年の心根は歪み始めていた。

「……何を……何を言っているんだよ……」

 やがて少年は青年となり、どうにか召喚士という地位を手にする。
 しかし、少年だった頃に生じた歪みは悪化の一途を辿り、青年は周囲からの自分の評価に対し、強いコンプレックスを抱いてしまっていた。

「やめろよ……おい、やめろよ……」

 ――ここで青年は、もうひとつの不幸に直面する。
 自分より後期に召喚士となったうちのある一世代に、三人の天才が現れたこと。
 青年にとっては、現れてしまったこと、と言うべきか。

 一人目はハグレではない、この世界の住人でありながら、まさしく規格外の魔力を操り、それだけでなく常人には全くついていけないほどの膨大な知識を有し、小柄な見た目でありながら、いつしか魔道の巨人と呼ばれるようになった。

 二人目は才能の面では魔道の巨人に及ばないものの、遠い存在だと眺めたりせず追いつこうとする気概を持ち、また古代の科学の復元においてはやはり傑出した知識を有したために、科学の悪魔と呼ばれるまでに至った。

 そして三人目は召喚士らしくなく、理論よりも勢いで突き進む性格の持ち主だったが、操る炎の苛烈さは魔道の巨人にも引けを取らないのではと畏怖させ、人は彼女を爆炎あるいは煉獄と例えた。

 そんな三人の天才の姿を目の当たりにし。
 青年は、自分の実力の無さを、惨めに実感してしまう。
 そして歪みはさらに加速し、青年に邪な考えをよぎらせてしまった。

 ――この三人が存在する限り、自分が認められることは無い。

 ――三人を、排除しなければならない。

「……っ、うるさいよ、黙れよ、もう黙れよおっ!?」

 青年は動き始めた。自らの邪なる目的を果たすために。
 そのためには手段を選ばなかった。もはや青年は目的のために他者を利用すること、あまつさえ命を使い捨てることを、何とも思わなくなっていた。

「やめろよ……やめてくれよっ……!!」

 やがて目的のひとつは成就し。
 魔道の巨人を、世界から排除することに成功する。
 それだけではなくなんという幸運か、魔道の巨人は、自分が次なる目的を果たすための材料となってくれた。その命が擦り切れて無くなるまで利用して、世界に自分こそが絶対的な存在であると認めさせてやるのだと、青年は気炎をあげた。

 ――だがここに来て、青年が今まで蔑ろにしてきたものが、一斉に青年に対して報復を開始した。命を粗末に扱っては捨てる外道を許してはおけないと、世界に牙を剥く者を許してはおけないと、一斉に立ち上がった。

 瞬く間に青年は追い詰められていく。
 絶対的であったはずの力は、急速に失われていく。
 進退窮まり、惨めにもがくことしかできなくなっていく。

 惨めであろうとも、青年はもがく。
 最後までもがく。

 ――最期の瞬間まで、もがき続ける。



「もう……やめてくれええええええええええええええっ!!!!」





 ――ひどい顔をしているナ。
 もう、声も出ないカ?

 ……本来であれば、オマエが犯した罪に応じて、凄まじい苦痛を伴う刑罰を受けてもらうことになっている。いっそ消えてなくなってしまいたいと思うような、途方も無い苦しみを味わう刑罰が、オマエを待っている……はずダッタ。

 ――だが、今のオマエは。
 既に、その途方も無い苦しみを味わったかのような顔をしているナ。

 ――私は今、罪人名簿に書かれていた、オマエの生まれてから死ぬまでの経歴を元に、オマエの人生ってやつを語っただけなのだが。脚色はしているが、そんなに大げさなものではないはずダ。
 たったそれだけで、そこまで苦しみに苛まれ、悲鳴をあげるということは。



 ――オマエにとっては、オマエ自身の一生こそが地獄だったというコトカ?



「…………」



 ――答えられないカ。答える気力もないのカナ?
 確かに、地獄なのかもしれないナ。どれだけ努力して成果を出しても、頑張っても、頑張っても頑張っても頑張っても、それをオマエ自身のものだと誰からも言ってもらえないのは。
 歪めば歪むほど自業自得な結果になっていったのかもしれないが……始まりはそうではなく、オマエに非などなく、ただただ理不尽に周囲からの嫉妬を浴びせられ続けたと。

「……嗤いたきゃ、嗤えよ。結局、僕は、誰からも認められない、クズだったんだよ……」



 ――生憎、それは否定しなきゃナンネーナ。



「……は?」

 罪人名簿の、オマエの経歴ナ。最後の最後にナ、こう書かれてるんダヨ。



 ――最期の瞬間、青年の行動をしっかりと認めた者がいた。



「……何、だって……?」

 ――オマエは覚えていないのか? 最期にオマエと戦ったヤツラと、何を話したのか……



「――あ……」






『あんたは凄かった』

『私達を――いや、ハグレ王国をここまで追い詰めたのは、あんたが初めてだろう』

『どうしようもないクズ野郎だったけど、ただの親の七光りではなかった……』

『あんたは凄かったよ』



『エステル……お、おれをみとめてくれるのか?』



『――ああ……』






 ――オマエの犯した罪は、あまりにも重すぎた。
 自分の目論見に多くの命を巻き込み、使い捨てた。
 ついにはオマエ自身の命さえもナ。

 だが、そうまでして……オマエ自身の命をかけて、オマエは世界に反逆したんだ。
 誰もオマエを認めなかったから、血を流させてでも認めさせようと、見苦しくも、醜くも、もがき続けてみせた。
 だからこそ、最期の最期に、オマエを認めた者が現れた――なんてのは、私の都合のいい解釈かもしれないが、ナ。

「…………」

 ――ココは冥界ダ。
 外道と呼ばれるまでの罪を犯し、輪廻から外れた魂のみが流れ着く場所。
 その魂は祝福されることなく、私達の玩具となったり、苦痛を伴う役割をあてがわれたり、そうして永遠に苛まれるコトダロウ。

 だが、オマエは――どうやら見所がアリソウダ。

「……どういう、ことだ?」

 ――さっきナ、私は言ったンダ。オマエに、凄まじい苦痛を伴う『刑罰』を受けてもらう、とナ。尋常ジャナイ、本当にいっそ消えてなくなりたいって思っちまうかもシンネーナ。思うだけじゃなく、本当に消えちまうかもシンネーナ。

 だが、万が一にもオマエが罰を耐え切ったのなら、乗り越えてみせたのなら――その魂を、輪廻に戻してやってもイイ、と私は思ってるンダ。浄化し、リセットし、もう一度人生をやり直してみるのも、イインジャナイカ?

「……そんなことをして、何になるんだ。お前に、何の得があるっていうんだ」

 ――面白そうだからサ。
 私自身は、私が楽しけりゃそれでイイ。オマエに見所があると思ったから、試してやろうってだけでナ。実のところ、私はどっちに転んだって構わないんダゼ?

「……っ、くそったれ、馬鹿にしやがってっ!!」

 ――オー、いいキレ顔だナ。
 最初の怯えっぷりが嘘みたいダ。随分と見ごたえのある顔になった。
 それだけ反骨心があるのなら……私が言った万が一の可能性に、辿りつけるのかもしれないナァ?

 ――さあ、そろそろタイムアップダ。
 これからオマエに罰を与えよう。せいぜい、もがき苦しんで、なんとしてでもあがいてみせるんだナ。



 ――苦しみの先の、オマエの道に、光在れ。





「……というお話だったのサ」
「……まさか、こんな形でマクスウェルの話を聞くことになるとは……」



「……私が知り合った時のあいつはもう、下衆と言っていい類の人間でした。だからこそ、無遠慮に罵詈雑言をぶつけていたりしたのですが……実際にはその罵詈雑言こそが、マクスウェルを歪ませてしまった原因だったんですね……」
「――あんまり気に病むなヨ、特務召喚士官殿。所業を見て下衆と断じるのは仕方のないことダ。その背景までいちいち気にしてらんネエし、ヤツが冥界に堕ちるほどの罪を犯したことは間違いのない事実なんだからヨ」
「……今でも許せない部分はある、けれど。それでも、あいつも、少しは救われたのかな?」
「……エステル。オマエがマクスウェルの最期にかけた言葉は、奴にはそうとう沁みてたみたいだったゾ。オマエみたいなヤツともっと早くから知り合えてたなら、マクスウェルもあそこまで歪まなかっただろうにナ」
「……それは本当に思う。バイオ鎧の中で溶けてる時、あいつ、記憶が子供返りしてたけど……一緒に学校行こう、って誘われたんだ。……気を許せる人間には良い奴になれてたのかもしれないな、あいつも」

「……動機は違えども。世界に反逆したという点で見れば、私もマクスウェルと同類ではあるのですね……そのせいで、エステルにもメニャーニャにも、辛い思いをさせてしまった」
「……先輩。仰っているのは、王国に属さないハグレが、マーロウさんを筆頭として決起して、帝都を攻めてきた時のことですよね」
「ええ……その件でのあなたの顛末はエステルから聞いたけれど……エステルが頑張ってくれなかったら、私はあなたを壊してしまっていたかもしれない」
「……過ぎたことです。エステル先輩が私の手を引いてくれたから私はここにいて、巡り廻って、今はシノブ先輩と再び肩を並べることができている。もう、それで十分なんです」
「おー……メニャーニャが珍しく素直だな。いつもそれくらい素直だったらぐぇっ!?」

「アッハハ、容赦ねーナ。んでまあ、マクスウェルと同類っつーのは……」
「……自分たちで呼び出しておきながら、ハグレと蔑称し、冷遇し、都合よく扱き使い、用済みならば捨てようとする……そんな身勝手な世界は、血を流し、のた打ち回ればいい。……特に一人で行動していた時は、そんな節もあったように思います」
「なるほどナァ。しかし悪魔の私が言うのも何だが、それは人が死んでいい理由にはならないし、そうすることによってオマエの魂は、死後、冥界に堕ちたりするかもしれなかったんダゼ?」
「……そうなのでしょうか」
「いや、まあ安心しとけ。オマエはこれからの行動次第じゃ余裕で挽回できるカラ。実のところよっぽどじゃない限り、マア、魂の行き先っつったら天国か地獄のどっちかだからナ」



「……ありがとう、イリス。話を聞かせてくれて」
「ドーイタシマシテ。まあ、今回はハグレ王国が大いに関係ある話だからナ」
「とはいえ、冥界の中での出来事だろう? そんなに簡単に話してしまってよかったのかい?」
「イーンダヨ、私は冥界姫だからナ。話したかったから話しただけサ」
「……なるほど。君に逆らえる者はそうそう居ないから問題ない、か」
「ソーイウコト。ま、ハグレ王国の中じゃまた勝手が違うけどナ」
「……意外にもうちのルール破りはほとんどしてないんだよね、君……ルールの抜け穴を突いてくることはたびたびあるけど」
「つってもそのルールがゆるゆるジャネエカ、この国。なんで乗っ取れネエのかワカンネエ」
「もはや隠す気も無いんだな……」



「ってことで、時間取らせたナ、参謀サンに三人組ども」
「三人組『ども』ってなんか酷いな!?」
「まあイリスらしい言い方だが……さ、そろそろ会議の時間だ。行くとしようか」
「オー、そういえば冥界ハンバーガーのお土産アリマース」
「……ほどほどにしてくれよ?」
「そんなに睨むなヨー。ハンバーガーだって立派な料理だゼー? 参謀サンも食ってみろヨー」
「そうだぜマリー、たまにはジャンクなもんだって食べてみようゼー?」
「エステル、口調が移ってるぞ……」





 ――王国の未来に、光在れ。
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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