タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
マオちゃんがざくざくアクターズ内のらんだむダンジョン要素を発見していくお話。
ショートショートではあるのですが、このシリーズのみ一記事にまとめて連続した形式にしておきます。
というわけで非常に長くなっております。要注意。
ショートショートではあるのですが、このシリーズのみ一記事にまとめて連続した形式にしておきます。
というわけで非常に長くなっております。要注意。
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◆伝説の四人組◆
「うーん……それにしても、まさかじゃのう……」
「あれ、マオちゃん何してるんでちか……秘宝を四つ並べてるでちね?」
「おお、デーリッチ。いや、アイテムという形とはいえ、この世界でこの四人の姿を見るとは思わなくてのう」
「えーと……AIアイちゃん、アナンタ式完全攻略本、シズナちゃん人形、ベネットさん人形でちね。マオちゃん、モデルの四人と知り合いなんでちか?」
「知り合いというか、わしの故郷のだんじょん村の中心人物じゃな。それに、命の恩人でもある」
「あ、それなら思い入れが深いのも納得でちね……」
「しかしまあ、アイテムもそれぞれの特徴が出ておるよな。AIアイちゃんはツッコミロボか……雪女よりもそっちの個性が重視されたか……」
「ローズマリーポジションだったんでちか?」
「うむ、誰かがボケるたびに激しくツッコミにいっておったのう。けどその一方で駄洒落好きなんじゃが……その駄洒落の寒さときたら、たぶん雪乃がオーバーキルされるレベルじゃなかろうか……」
「……絶対にローズマリーと並べちゃいかんでちね」
「そうじゃな、まあ住んでる星自体が違うからそうそう無いじゃろうが……あとこのアイテム自体も、本家と比べるとおとなしめじゃな」
「え、そうなんでちか?」
「似たようなロボットをだんじょん村でも作っておったんじゃが……ツッコミと称して極太ビームをぶっ放しておった」
「オーバースペックー!!?」
「次はこれか……レベルを上げて物理で殴れとは、なんとも頭の悪そうな内容じゃのう」
「そうでちか? 単純明快でデーリッチはいいと思うでち」
「たわけ、どんな戦いも事前にレベルを上げて臨めるとは限らんのじゃぞ。力量が上回る相手に、レベルを上げる暇もなく戦いを迫られることもあろう?」
「うーん、そうは言っても、これ、解説文自体がすごくメタなんでちよねぇ……」
「いや、それはわかるが。実のところすごくアナンタらしいと思うのじゃが、これだとやっぱり脳筋というイメージしか伝わらんではないか。実に勿体無い」
「どういうことでちか?」
「アイテム図鑑ってあるじゃろ? 一度入手したアイテムは何でも全部振り返れるやつ」
「ああ、うん、そうでちね。うちではローズマリーが記録してくれてるでちよ」
「まあこっちの世界のアイテムの数も膨大じゃが……わしの故郷の世界も負けず劣らずの数でな。ただ、こっちと向こうの図鑑には大きな違いがある」
「え、何なんでち?」
「向こうの図鑑はアイテムひとつひとつに長い解説文がついておるんじゃよ。ただの性能解説だけじゃなくて、アイテムにまつわる伝承やもともと所有しておった人物についても調べられておる。あと解説文の中でコントをやっておったりもしておったな」
「な、なんかカオスっぽい……」
「で、その解説文な、全部アナンタが書いたそうなんじゃよ」
「え……ええー!? こ、この攻略本書いたのと同じ人がでちか!?」
「嘘ではないぞ。ちなみに今現在のハグレ王国の住人の中には、アナンタ式アイテム図鑑に伝承が載っていた者もおる。イリス、地竜、マリオンがその筆頭じゃな」
「ふえー……なんかすごく読んでみたくなったでち」
「気になるんだったら、ぜひともらんだむダンジョンというゲームをプレイしてみるとよいぞ?」
「最後の最後にド直球なメタネタ投げないで!?」
「残るは人形ふたつか……こっちは見た目は普通なんじゃがのう……」
「シズナちゃん人形は清々しいくらいにぶっ飛んだ装備効果でちね……そんなに凄い人だったんでちか?」
「うむ、人形の装備効果でさえマイルドに思えるくらいじゃったな……こっちの世界では基本、複数属性を扱えるというだけで天才か無茶のどっちかなんじゃよな?」
「そうでちねー……ローズマリーは一回倒れたことあるし、シノブちゃんやメニャーニャちゃんは実際に天才レベルだし」
「おそらくは世界自体の性質の違いもあるとは思うが、シズナは滅茶苦茶な天才じゃったよ。回復も含めれば実に四属性を高度に使いこなしておったし、それでいて実は怪力の持ち主じゃったりもするしな」
「……あ、それが会心率のボーナスの由来なんでちね……」
「じゃが、真に恐ろしきは忍術よ。シズナはいともたやすく分身の術を使いおるのじゃが……その分身体もさらに分身することができるのじゃ」
「ギャー!? 無限増殖ー!!?」
「実際にだんじょん村がシズナで埋め尽くされたこともあっての……他の三人の奮闘でなんとか収束したが、いやはや『ふえーるシズナちゃん事件』は後世まで語り継がれるじゃろうなぁ……」
「急に怖くなってきたでちよ!? この人形も無限増殖したりするの!? 放っておいたら王国が乗っ取られるかもしれんでちよ!?」
「うーん、なんとも言えんなあ……」
「はっきり否定してーっ!?」
「最後はベネットか……こっちは見た目に加えて装備効果もそこまで目立った感じではないのう」
「他が目立ちすぎてるだけだと思うでち……装備したらすごく素早くなるし、クリティカルも出やすくなるし、即死が効かなくなるし、有用だと思うでちよ?」
「有用ではあるが、本人に比べて毒が少ないというか。むしろ本人は即死を防ぐ側ではなくて片っ端から与えていく側じゃしのう」
「さらりと恐ろしいこと言わないでくれる!!?」
「事実なんじゃからしょうがなかろう。何せ、通常攻撃と必殺技がどっちも全体即死攻撃とかいうぶっ壊れ武器を軽々と扱っておったのじゃぞ?」
「危険人物過ぎるでちよ!!?」
「あとは過去の魔王や、あるいは死神や悪魔由来の武器も普通に装備しておったのう。アナンタ達は『ベネットだからしょうがない』で流しておったが」
「なんかもういろいろと感覚が麻痺してるでちね……」
「……まあ、しかし、なんだかんだで根は優しいやつでもあるんじゃよ。わしが一度死に瀕した時に、そのことを仕組んだ相手に対して一番憤慨しておったのが、ベネットだったんじゃ」
「……ツンデレでちか?」
「そうかもしれんのう。とはいえ、あまり大っぴらに指摘すると、前述の広範囲即死攻撃が飛んでくるのじゃが」
「お、おおう……」
「いやはや、故郷が懐かしくなるわい」
「そうでちか? でも、マオちゃんの故郷の話が聞けて、面白かったでち!」
「それは何よりじゃ。しかしわしも、四人に負けんように、ハグレ王国で自分を磨いていかねばのう」
「容赦しないでちよ? ハグレ王国だって、四人には負けないでちからね!」
「おっと、実際には四人に加えてわしもおるし、実のところ、故郷の住人を思い出すアイテムはこれだけではないからな?」
「え、そうなんでちか?」
「うむ。いずれにせよ、対決するとしたら、だんじょん村対ハグレ王国の構図になるじゃろうのう」
「むむむっ……村が相手だからって、四人の話やマオちゃんの強さを聞く限りでは侮れないでちね!」
「お互い様じゃて。ハグレ王国もひとりひとりの能力は高いから、これは良い勝負になりそうじゃのう」
「絶対に負けないでちからねー!」
「ははは、こっちの台詞じゃー!」
◆その他の住人◆
「あ、ところでマオちゃん。今の四つのアイテムって次元の塔で拾ったんでちけど、そういえば魔王タワーでもそれっぽいアイテムが手に入らなかったでちか?」
「おお、おそらくおぬしが言っているのはスーパーメガちゃん人形と筋肉教本のことじゃな?」
「せ、正式なアイテム名を言ってほしいでち……」
「そうは言うても、前者はまあわしの趣味じゃが、後者はアイテム名がマークで終わっておるから、SSに出すには相性が悪いんじゃよなあ……」
「マオちゃん、全然メタ発言自重しないでちね……まあ確かに言われてみると納得なんでちけど」
「まあそれはともかく、その二人も知っておるよ」
「あ、やっぱり。どんな人たちなんでち?」
「まずはメガちゃんじゃが……ベクトルは違えど、わしに劣らず強い力を持っておるな。何せ、広大なダンジョンを一人で創造してしまうのじゃから」
「いきなりスケール大きすぎぃ!!?」
「しかも作ったダンジョンの中に普通に宇宙空間を展開したりもしておる。あとダンジョンとは別にパラレルワールドも作っておったのう」
「り、理解がまったく追いつかないでち……こっちの世界にも、次元の塔なんて存在自体が不思議すぎるものがあるのに、マオちゃんの故郷にはそういうのを作れちゃう人が身近にいるんでちか……」
「まあ、実際はダンジョンエネルギー(以下DE)というものが必要で、それはアナンタ達に集めてもらっておったようじゃがの。完全に一人で作っておったわけではないようじゃ」
「あ、なんかそれって魔王タワーのシステムと似てるでちね?」
「実際、参考にさせてもらったがの。ただ、大きな違いとして、メガちゃんはDEを用いることでマップの数そのものを増やすことが出来た。さすがに魔王タワーのTEでは同じことは不可能じゃが」
「魔王タワーも魔王タワーですごく不思議なんでちけどねぇ……特に金の門なんて、タワーの中なのに青い空がどこまでも広がってるマップがあったでちよね?」
「ハイエナハインドとニシアケボノの居るマップじゃな。それもまあ、メガちゃんの技術を参考にしたということで」
「うーん……ていうかもしかすると次元の塔も、そのメガちゃんと同じ能力を持った人が作ったんでちかねぇ……」
「うーむ、まあ、そういう存在が居たとしても不思議ではないかもしれんな。メガちゃんは次世代の神として期待されておるうちのひとりだそうじゃから」
「十分過ぎるほど期待に応えている気がするんでちが……」
「いや、しかし傍から見ているとかなり子供っぽい面もあるでな。まず、摂取量が足りないと手が震えて仕事にならないくらいのお菓子好きらしい」
「それ子供っぽいっていうか禁断症状なんじゃないかな!?」
「言うてもデーリッチ、おぬしも食い意地の張りっぷりは似たようなもんじゃろ」
「う、それを言われるとぐうの音も出ないでち……」
「あとはまあ単純に威厳が足りないというか、遊び盛りでもあるのじゃな。それはそれで悪いことではないし、これからというところじゃろうが……」
「マオちゃんとおんなじでちね」
「おぬしもじゃろデーリッチ」
「なにおう!?」
「なんじゃ!? ……って、喧嘩したら話がストップしてしまうな、いかんいかん」
「無理矢理止めたでちね……」
「まあ、メガちゃんには今度、お土産でも持っていってやろうかのう。ハグレ王国にちょうど良いものがあるし。あくまんとかアックマンチョコとか大満足フルーリーとか」
「あ、なんかすごく良いお得意様になりそう……」
「ちなみにメガちゃん本人はこういうお菓子代は経費で落としてるそうじゃ」
「職権濫用ー!!?」
「お次はこの本じゃな。まあわし、ハッスルマッスルとはそんなに面識はないのじゃが」
「けど、特徴はこのアイテムだけ見てもものすごくわかりやすいでちね……」
「そうじゃのう。筋肉に傾倒してはおるが、意外と内容が深いし……」
「うちのマッスルは即座に愛読書に加えてたでちね」
「じゃろうのう。ちなみに面識がないとは言うたが、実はアナンタの家に遊びに行ったときに何回か鉢合わせしたことがあってな。その時に言っておった格言もしっかり書かれておるな、これ」
「え、例えば?」
「うむ、えーと……まずはこれじゃな」
『背中を見せて逃げてもいい……だが、その時は背筋で語れ』
「な、なんかよくわからないけど、深みを感じるでち……」
「謎の強い説得力を感じるのよな。他にも、これ」
『芸術的な筋肉は、ときに化け物にも見える。だが、それは筋肉のオーラに負けてしまっているだけで、自分の弱さを露呈しているだけに過ぎない』
「こ、これもなんだか頷かずにはいられない何かを感じるでち……!」
「わかりやすく惹かれ始めておるなおぬし。あ、これも」
『もうこれ以上は無理だ、というところにヒントがある。心が答えを出してくれないなら身体に訊けばいい。新しいモノは常にそうやって生まれる』
「身体あっての心でちね……!」
「心という言葉に触れた格言はもうひとつあるな。ほれ」
『限界を決めるのは心だ。しかし、実行しているのは筋肉だ! 筋トレをおろそかにしてはいけない。肉体の衰えは精神の腐敗に繋がる』
「ふ、ふおおお……!」
「いや、おい、なんか言葉を喋れ」
「で、デーリッチは感動したでちーっ!!」
「うおおっ!? なんじゃそのテンション!?」
「こうしちゃいられんでちっ! 今からこの本を胸に抱いて特訓してくるんでち! もっと心と身体を鍛えて、究極の虎になるんでちーっ!!」
「あーあーあ……行ってしもうた……なんか会話が宙ぶらりんで終わってしもうたのう……これではオチのつけようがないではないか……」
◆竜の伝承◆
「ん、珍しい客だな、いらっしゃい」
「こんにちはなのじゃ、ジーナ。とりあえず、合成品のメニューを見せてもらってよいかの?」
「合成品ね。素材は持ってるのかい?」
「いや、作りたいわけではないんじゃが、ちょっと気になるものがあってな」
「気になるもの、ねえ……はいよ」
「ありがとう……うーむ、まさかと思ったが、カンヘルに由来するエプロンじゃったのか……」
「ああ、カンヘル竜の鎧かい? というか、もしかして知り合いなのかい?」
「うむ。いやはや、スカイツリーの決戦で、マッスルがエプロン着けて挑んできおった時はなんじゃこいつと思ったが……由来を知ってものすごく納得したわい」
「三属性耐性付きだからね、あんたからすれば厄介だったんじゃないかい。まあ、コスモニウムアーマーのほうが見栄えは良いだろうけど」
「いや、まあしかし、カンヘルの加護の後押しがあったというのも、それはそれで感慨深いものじゃよ」
「ふうん……なんか話したそうだね。暇つぶし代わりに聞いてやろうか?」
「おお、付き合ってくれるか? ……カンヘルはの、次世代の強き神々を生み出すための計画として、人間の身体に竜の魂を合成して人工的に作られた『合成竜』の一体、だそうじゃ」
「……随分ご大層な計画だね」
「神々の一族が力を衰えさせつつあって、それを打開しようとしてのことだったそうじゃが……いや、この話は余計じゃな。ともかくそんな経緯で生まれたわけじゃが、比較的人間に近くはあるが、竜の角と羽と尻尾が生えていて、さらに手足は竜のごとく硬質化、肥大化しているという、なんともいびつな容姿じゃった」
「無理矢理作ったってんなら、そういう風にもなるんだろうかねぇ?」
「かもな。で、問題は異形なる手足じゃ。このせいでカンヘルは普通の衣服を着られないらしい。破いてしまったり、普通のTシャツとかでも袖が通らなかったり――結局、まともに着られるのがだぼだぼのエプロンぐらいしか無かった、というわけじゃな」
「なるほどねえ……そうしてなんだかんだで愛用されたエプロンが、やがて強い加護の力を持つようになった、ってところかい?」
「そうかもしれんな。ただまあ、そういう事情で常に裸エプロン姿で、しかも竜の特徴がところどころに見られるという、なかなか奇抜な容姿じゃが……当の本人は、下手な人間よりも常識人なのよなあ……」
「そうなのかい?」
「うむ。好きで裸エプロンというわけではなく、むしろお洒落したい年頃だったりするらしい。あとあまり感情を顔に出さないし、わし、最初の印象は何考えてるかわからないとか怖そうとか、あんまり良くなかったんじゃが……評価を一変させる出来事があってのう」
「なんだい?」
「貧乏生活しとったわしにビーフカレーをおごってくれたんじゃよ。ほんと、あのときのカンヘルは大天使のごとくキラキラしておったのう……」
「……今のあんたの目もやたらキラキラしてるよ」
「……おほん。話は全然変わるんじゃが、竜といえば、もうひとつ気になるアイテムがあったのう」
「それは……ああ、赤竜の誇りだね」
「うむ、この赤竜ってゲオルギウスをモデルにしておるのよな? こやつにも、一度だけ会ったことがある」
「へえ、マオの故郷にも存在してたのかい?」
「……ん? その言い方だと、こっちの世界にもおったのか?」
「ああ。ちょうどあんたが魔王タワーを設立する直前くらいにね、大規模な魔物戦争が起こってたんだけど……襲撃してきた巨大魔物の中に、その赤い竜が何体か居たんだよ」
「なんじゃとっ!?」
「イメージどおりに炎の力を操る強敵だったけど、最終敵にはそいつも含めて巨大魔物は全部討伐されたよ」
「うーむ……それはどうも、特徴や姿が似ているだけの別物のようじゃな……」
「ふうん……あんたが会ったのはどんな奴だったんだい?」
「邂逅自体がほんの一時だけじゃったから、そこまで詳しくは語れんのじゃが……世界を自分の欲望のためだけに操る黒幕を、アナンタ達とともに打破してほしい――世界の安定という願いを、わしらに託した。実のところ、魔物でありながらも、カンヘル並に落ち着いた性格じゃったかもしれんなあ」
「へえ、全然違うんだね」
「残念ながら本人は黒幕に作られた存在ゆえ、黒幕が滅びるとともに消滅してしまったがな……しかし、その志は忘れないようにしようと思う」
「愛され大魔王にでもなるのかい? ……あー、ごめん、今の言い方は皮肉みたいだね」
「ああ、いやいや、根が意外と優しいのは知っておるぞ、ジーナちゃん?」
「ちゃん付けはやめてよ。まったく、皮肉で返すとは、意外と口が回るじゃないの……」
「ははは、なんか故郷の喧嘩仲間を思い出してしまってのう……うむ、次はその話を聞きにいこうか。それじゃジーナ、邪魔したのう」
「ああ、いや、面白かったよ。気が向いたらまたおいで」
「じゃあのー」
◆冬の女神様大回転◆
「こんにちは、シノブさん」
「こんにちは、プリシラさん。……こうして二人で居るのは妖精王国以来ですね」
「そうですね……シノブさんにはどれだけ感謝しても足りないくらいの恩がありますけど、あそこから始まったんですよね……」
「あなたも、見違えるほど大きくなりましたね……力の強さだけで見ても、うかうかしていられないくらい」
「でも、そんな道を用意してくれたのはシノブさんに他ならないですから。お礼と言うのも何ですが、今後、何かやりたいことがありましたら、ぜひご協力させてください」
「ありがとう、今はその気持ちだけで十分ですよ」
「おお、待たせてしもうたかな?」
「ああ、マオさん、こんにちは。私達も今さっき来たところですから、気にしないでください」
「そうか。いやはや、おぬしらは普段一緒に居るところをあまり見ないから、こちらで場所を用意させてもらったが、迷惑ではなかったかな?」
「そんなことないですよ。むしろシノブさんは妖精王国の大発展のきっかけをくれた人ですから、改めて感謝していたところです」
「うむ。妖精王国のみならず、この世界の在り方をも変えてしまう大発明……マナジャムだったか」
「今は妖精王国にのみ栽培技術が伝わっていますが……ゆくゆくは世界全体に普及させていきたいですね。もっと暮らしやすくなるのは間違いないですし」
「ふむ……プリシラ、おぬしはがめついと聞いておったが、独占は考えておらんのか?」
「ひどいことぶっちゃけますねー。私は妖精王国のためにがめついのであって、個人的にがめついわけじゃないんですよ?」
「一部認めておるな……」
「……真面目に言うならば。技術提供をしてくれたのはシノブさんですし、間違いなく『世界をより良くしたい』という願いが込められているでしょう。その願い自体にも心から賛同しますし、となれば利益など二の次ですよ」
「……なるほどのう。おぬしのような参謀が居れば、妖精王国は安泰じゃな」
「いえいえ、私はあくまで参謀で、ヅッチーが居てこその私ですから」
「イイ笑顔じゃなあ……」
「……おほん。さて、そろそろ本題に入ろうか。わしがおぬしら二人を呼び出した理由についてなんじゃが」
「……察しはつきます。私とプリシラさんの共通点についてですね」
「シノブは攻撃に、プリシラは補助に、と使い方に違いはあるが、同じ氷の神の力を行使しておるな」
「スカイツリーの決戦の大詰めではマオさんも使ってましたよね?」
「うむ……実を言うと、その時に愚痴られたのじゃよ」
「え、愚痴って……もしかしてマオさんは――セドナ様とお知り合いなのですか?」
「ああ、実はだんじょん村に冒険者として所属しておる者同士なのじゃよ」
「か、神様が冒険者をやってるんですか!?」
「とは言っても、あやつにとっては冬以外で暇しておる季節の際の戯れなんじゃろうが……ああ、ちなみにプライベートではアオボシと名乗っておるそうじゃ」
「アオボシ……ですか。おおいぬ座の恒星シリウスの和名、ですね」
「詳しいのう。まあそんなこんなでわしとアオボシは喧嘩仲間なんじゃが、やっぱりスカイツリーの決戦の際にもぶつくさ言っておったのう――」
【まったく、向こうにも使い手が居るというのに、まさかお前にまで呼ばれるとは。この決戦はどこまで私をこき使ってくれるんだ?】
『ぬかせ。おぬし、戦いは好きなんじゃろう?』
【だが、こうして間接的にしか関われないのは、もどかしいにも程があるというものだ】
『じゃが――正直、わしもかなり追い詰められておるでな。力を出し切らねばならん……アオボシよ、力を貸してくれ』
【ふん……追い詰められているなどと、随分楽しそうな顔をして言うじゃないか】
『楽しいに決まっておるじゃろ? このわしがここまで全力を出せる相手が、この星にもちゃんと居た』
『だからこそ、最後の最後まで力を振り絞りたい――悔いの残らない決着をつけたいのじゃよ』
【……ふふ、なるほどな。よかろう】
【大魔王マオよ、この冬の女神セドナの力、存分に振るうがいい!】
「私達が行使する時とは、まるで印象が違いますね……」
「まあ、いろいろと特別な場面だったわけじゃしな。さすがに今はわしが自力で呼ぶことはできんが」
「短いやりとりですけど、仲の良さがよくわかりますね……」
「ま、せっかくじゃから、セドナというのはこんな奴じゃよというのを話しておきたくてのう」
「なんだか親しみを持てそうな気がしますね……」
「あやつにとってもそれが良いじゃろう。ま、神だけあって敬意も重視しそうではあるが」
「ありがとう。非常に有意義な話を聞かせてもらいました」
「どういたしましてじゃ。ま、スカイツリーの頂上まで来れば再戦は受け付けておるから、その時にでもまたこき使ってやろうぞ?」
「あんまり度が過ぎると怒られるんじゃないですか?」
「構わんよ。というかわし、怒らせることなどしょっちゅうじゃし」
「喧嘩仲間ですものね……」
「しかもあいつ、誰かが仲裁に入ったら、喧嘩相手のわしを諭してまで喧嘩を続行しようとしおったしな」
「もう滅茶苦茶じゃないですか……」
◆かなちゃんとカナちゃん◆
「……うーむ、でかい。キャラチップがひとりだけ異様なのも納得のでかさ」
「一行目からメタ発言ありがとうございます。私に何か用ですか?」
「用というか……かなちゃんはわしのこと、見覚えはないかな?」
「……顔を合わせるのは基本的に初めてだと思います。しかし、うっすらと記憶にあるような気はしますな」
「うっすらと、か。記憶まで継承しているわけではないんじゃな……うーん、わしから見ればものすごくカナちゃんを連想してしまうんじゃがのう」
「おそらく私の元になった、向こうの世界の偉大な妖精さんのことですよね?」
「まあ確かに妖精視点で見れば偉大なのかもしれんのう。今はわしの故郷の村で合成屋としてハンマーを振るっておる。その生き方に影響を受けた妖精の数も多いとか」
「おお、それはそれは。私としても鼻が高いですな」
「しかし積極的にセクハラをかましに来るからいろいろと台無しじゃ。しかもその時のテンションはやたらと高いと来た。なんでそういうところが一番似とるんじゃ、おぬしは」
「仕方ないでしょう、ちちしりふとももは世界を救うのですから! ああ、エステルさん達の水着姿が本当に待ち遠しいっ!!」
「時事ネタやめい。ゲームが更新されたら修正しないといけなくなるじゃろが」
「このSSは2016年1月に書かれたものですとでも注意しておけば大丈夫ですよ」
「おぬしもメタを自重せんのじゃな……」
「いや、でも本当に、まだスクリーンショット1枚だけとはいえ、エステルさんの水着姿が見られた時は、私、それだけで天に昇っちゃうかと思いましたよ……」
「あ、なんかめっちゃ感極まっておる……」
「浸らせてくださいよ。初対面からサービスピンクと認定したあの人が、ながーいストーリーの中でほとんどサービスしてこなくて、焦らされて焦らされて焦らされて、かーらーの……水着ッッッ!!!!」
「確か仮装大会でバニースーツ姿を披露しておらんかったか?」
「あ、あれはGJ。ほんとGJ。でもそれっきりだったじゃないですか」
「飢えておったんじゃのう……いや、しかし」
「あれ、どうしたんです?」
「いや、わしは話に聞いただけじゃが……カナちゃんも似たような経緯で、やっとのことで温泉イベントに辿りついてな、実際にそのイベントはサービスシーンもあったそうなのじゃが……」
「おおう!? さすがは偉大なる妖精さんですね!?」
「ただ、そのあと未練が無くなったとかどうとかで、地獄の鬼に迎えに来られて成仏しそうになったそうじゃ」
「えっ」
「成仏しそうになったそうじゃ」
「二回言った!? えっちょっ何それ怖い!? どうなったんです!?」
「迎えに来た鬼がたまたま虎柄ビキニスタイルのお姉さんだったがゆえに『やだ私地獄についてく!!』って抱きついて、拒否されて送り返されたらしいが」
「何それ私も地獄に行きたい!!!!!!」
「180度反転しおった!!?」
◆神と悪魔と守護者の伝承◆
「こんにちは、イリスさん……またUMAカリーですか?」
「オウ、福の神ジャン。そういうオマエは王国オムライスと……まーた福神漬けカヨー」
「でもイリスさんはいつもUMAカリーヌードル『だけ』ですよね?」
「ジャストミートなんだゼ、コレ。一食で二個三個でもいいくらい」
「栄養が偏りますわよ?」
「オマエだって毎日福神漬け食ってんだから似たようなモンジャネーカ。いくらそれが健康には良いモンだって言っても、やっぱ偏るんジャネーノ?」
「……それは一理あるかもしれませんね」
「ま、要するに好きなモン食わせてくれってコトダヨ。病気になったらソノ時はソノ時サ」
「……えらく庶民レベルのだらけた会話しておるのう」
「あら、マオちゃん……マリオンちゃんも一緒ですか? こんにちは」
「こんにちは、福ちゃん、イリス。たまにはマリオン達も一緒に食べていいか?」
「ええ、どうぞ。こちらの席が空いてますわよ?」
「……鴨ネギそばとは、ちまっこい見た目に似合わずシブいチョイスジャネーカ」
「王国に来た当初に振る舞っていたのだが……なんだかんだでこの味が好きになってしまってな」
「マオちゃんは王様ランチですか?」
「否、大魔王ランチじゃ!」
「オイオイ、勝手にメニュー名変えてやるなヨー」
「イリスさんはツッコミが板についてきましたね……」
「おかげさまでナー……ハア、ドウシテコウナッタ」
「……むう」
「オイ何だ、食べながら人のことジロジロ見やがっテ」
「ああ、いや……考えてみたら、おぬしら三人も、わしの故郷では伝承の存在じゃったな、と」
「え、マリオンもそうなのか?」
「うむ。それにイリスと福ちゃんもな」
「あら、それは興味深いですわね」
「まあ、食いながらでも適当に聞いておいてほしいんじゃが――」
「……一見すると、イリス、おぬしはとても悪魔には見えんのう」
「オイオーイ、いきなりズバッと来たな?」
「はは、まあ容赦してくれ。実際、ゼニヤッタみたいに角も生えておらんし……異国訛りの口調にはびっくりするが、普通に人間だと言っても差し支えなかろう?」
「オウ……オーケー、アイシーアイシー。まあ、こんな姿だからこそ、気軽に人間界にも遊びに行けるってのはあるカナ」
「で、おぬしについてきた輩を冥界で玩具にする、となかなかに性格の悪い話が伝わっておるが」
「なんだとっ!? イリス、そんなひどいことをしているのか!?」
「ストップ。マリオン、ここで暴れるのはマストノット、ダゼ?」
「う……し、しかし!」
「ドントウォーリー。さすがに今生きてる人間にこっちから変にちょっかいをかけるようなことはシナイヨ。死んで冥界に堕ちてきた奴か、私に絡んできた奴なら話は別だが」
「それはそれで、随分おとなしくされてるんですね?」
「まして今は福の神サマや王国参謀サンの目も光ってるからナー。そうそうおおっぴらな悪さをするつもりはネーヨ」
「……なんか、思ってた以上にまともな奴じゃな」
「逆にどんだけヒデエ奴だと思ってたんだヨ。ま、私も正直、どうしてこうなったと思ってるケドサ」
「なあ、マリオンはどんな風に伝わっていたんだ?」
「ふむ……まあ、ある意味おぬしが一番そのまんまじゃな。神の船と称される巨大宇宙戦艦に一人たたずみ、星の守護者を称し、有事の際には圧倒的火力で敵を殲滅する、と」
「おお、正確じゃないか」
「まあ、それでも実際に対面してみるとギャップを感じるが。マリオンちゃんかわいい」
「はうあっ!?」
「……よし、セーフじゃな」
「これ以上は自重したほうが良いですわよ? 食事中にオーバーヒートを起こされては困りますもの」
「お、おのれマオ、かくなる上はスロットで……!」
「やめんか、食事中じゃ」
「うう……」
「さて、最後は私ですか」
「うむ。福ちゃんについては……アイテムの解説で直接語られる伝承ではなくて、うちの村のカナちゃんが詳しい話を語ってくれておったな。それが実に興味深かった記憶がある」
「自分の話ですから大体想像はつきますが、何でしょう?」
「ええっと……元々、福の神のイメージは大黒天という存在から来ておるが、実際は大国主から発展したものであると。一方で本来の大黒天は天魔マハ・カーラという破壊神であり、シヴァの別名でもある。そんな話じゃったか」
「なるほどネェ……大黒天とイヤァ、ちょうど魔王タワーで禍神黒天服なんての拾ったよナ。アレ、オマエのダロ?」
「ええ……まさか、再び目にするとは思いませんでしたが」
「やっぱり禍神だった過去はそう簡単には捨てられないモンなんだろうナァ、ええ、オイ?」
「とはいえ、少なくとも福ちゃんは仮に破壊神であったとしても、悪意を持って力を振るったりはせんじゃろう?」
「……そう、ですね。その心がけは忘れずにいたいです。福の力だって、やろうと思えば悪用も可能なのですから。結局は使い方次第、ですよねイリスさん?」
「前にそんな話したっけナ……マオ、それにマリオン。お前たちの持つ力だって、ちょっとしたことで惨事を起こしかねないんだ。くれぐれも使い方を間違えてくれるなよ?」
「……ますます悪魔らしくない、真っ当なアドバイスじゃのう。じゃが、改めて肝に銘じておくとしようか」
「そうだな、実際マリオンは危ないところだったしな……あの時はすまなかった、福ちゃん」
「いえいえ。マリオンちゃんに出会えたのだから、災い転じて福と成す、ですわ♪」
「上手い事言いやがっテ……」
◆そして最後は◆
「あ、ハグレ王国の皆さん、お久しぶりです……おお?」
「こんにちはなのじゃ、ヘルパーさん」
「マオちゃん、うわぁ、もっと久しぶりじゃないの!? あーそっかー、ということは皆さん、魔王タワーもクリアしちゃったんですねー」
「ええと、ヘルパーさん、魔王タワーの存在は知ってたんですか?」
「一応ね。タワーの名前からして、あっ、て察したりもしたけど」
「口ぶりからするとヘルパーさんは関わってないっぽいでちけど……でも、マオちゃんとは知り合いなんでちか?」
「うむ。前はこの人、だんじょん村でヘルパー業務をやっておったんじゃよ。ただ、最近見なくなったなーと思っとったが、こっちの世界に来ておったんじゃな……」
「そうよー、次元の塔の案内人としていろいろ忙しかったんだから」
「否定はしませんけど、我々はもっと忙しかった気がしますが……」
「そうですねえ……ただ、おかげで今は塔のほうもすっかり落ち着いてますよ。その分暇になっちゃったし、皆さん今は魔王タワーのほうに通われてるしで、ちょっと寂しかったですけど」
「あ、それはすみません……」
「というか、わしがヘルパーさんの仕事を奪ってしまったようなもんじゃのう……申し訳ない」
「ああ、大丈夫よー。マオちゃんがこっちの世界でも元気そうで何よりだわ」
「まあ、それにまったく訪れないというわけでもありませんしね。ゼニヤッタの屋敷や冥界に天界と、うちのメンバーに縁深い場所がありますから」
「わしはよく知らんからのう。今日はヘルパーさんへの挨拶だけじゃが、そのうち塔の中も探検してみたいぞ」
「まあ、マオちゃんの実力なら一人でも大丈夫なんじゃないかな?」
「いや、大きな問題はないと思うが、わし、どう頑張っても全体攻撃を頻繁に撃てないからのう……」
「巻物スキルは覚えられないし、自前の全体攻撃はTPがけっこう重いからね……」
「そういうわけで、王国のメンバーが居てくれると助かるんじゃがなあ」
「だったらまさにローズマリーとかうってつけじゃないでちかね?」
「おお、魔王の側近としても様になるしのう」
「いやそれは困るから。ローズマリーはあくまでハグレ王国のブレインでちからね?」
「ははは、わかっておるよ。さて、じゃあ今日のところはこれで失礼するとするかの」
「はいはい。またいつでも来ていいわよー」
「じゃあ、ヘルパーさん、またの」
「はーい、マオちゃんまたねー?」
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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