タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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ある日のお昼休みのことだった。
エステル先輩を誘って昼食を取ろうとしたものの、先輩は既に他のグループに誘われて和気藹々とやっている。その姿を見た私は踵を返し、結局ひとりで注文し、ひとりで席に座って食べている。
拠点に来てから度々あることだった。人の輪に入っていくのは苦手で、輪の中にいる先輩に対して壁を感じてしまい、かと言ってそんな気分では別の人と一緒にという気にもなれず、結局はひとりぼっちで御飯を食べる。
誰のせいでもない、私が素直になれないがゆえの憂鬱。つくづく損な性格をしている、と溜息をつかずにはいられない。
「――隣、失礼するぞ」
不意に声をかけられ、反射的にそちらを見た。
和を感じさせる柄の青い服に身を包んだ、けれども実際は和というものについてとてつもなく勘違いをしている女侍さんが、私の隣の席に着いて、鴨ネギそばに向かって手を合わせているところだった。
「……席なら他にも空いてるじゃないですか」
「座る場所は自由だろう?」
――意図的に私の隣に座ったのか。
ただでさえ空気の読めない振る舞いのせいでハグレ王国では一際浮いている存在に見える人だが、私は以前、この人に図星をぐっさりと突かれたことがあり、苦手意識が強まってしまっていた。
しかし、だからと言ってこの状況では避けることもできない。わざわざ自分から席を立って移動するのもなんとなく行儀が悪く思えるし、この人に――柚葉さんに失礼だ。
「……何の用ですか?」
「別に何もないぞ。まあ、私の言葉は独り言だと思ってくれて構わない」
――思いっきり用があるんじゃないですか、それ。
とはいえ、用があるぞと言われたほうが噛み付いたかもしれない自分が簡単に想像できてしまって、何も言い返せなかった。
「はあ……まあ、建前はいいですよ」
「そうか。……私もまあ、たまにはひとりぼっち同士でご飯を食べてみたいと思ってな」
……改めて言葉にされるとむっときてしまう、のだが。
柚葉さんは気にする素振りもなく、涼しい顔。
「……ただ、私はともかく、メニャーニャ殿がひとりぼっちなのは不思議な気がするな」
……不思議、ですって?
「どうしてそう思うんです?」
「どうしても何も。私はどうも空気を読むのが苦手で、それが原因だと思っているが――メニャーニャ殿は、そうではないだろう?」
わかりきったことのように、柚葉さんは語る。
「誰かがやらなければならない、けれど誰もやりたがらない役割に対して手を挙げる。そんなお主の根の部分に優しさがあることを誰もが知っていて、それゆえに人望もある。……というのが、決戦直前の私のお主分析なのだが」
「やめてください。ものすごくむず痒くなるんですけど」
「そうは言っても、おそらく大体が同じ評価だと思うがな。……そんな人間がなぜひとりぼっちで飯を食っているのか、うむ、改めて不思議だ」
平然としている柚葉さんに対し、今の私は――ああ、もう、語りたくもない。自分の状態を具体的に解説したくない。
端的に言えば、すごく恥ずかしい。
「……不思議でもなんでもないですよ。原因なんてわかりきっているんです。私の、自業自得なんですよ」
「……自虐的だな。そこまで卑屈にならなくてもいいだろうに」
「言われてすぐどうにかできるなら苦労しませんよ……」
褒め言葉を素直に受け取れない。誰かから好意を向けられるのが恥ずかしい。
そして自分でも思う――なんでこんなに面倒くさい性格になってしまったんだろう。
「まあそんなわけで、どうせ普通に誘っても断られるだろうからな、こういう形で同席させてもらうことにしたのだが」
「……はあ……」
――やっぱり図星を突かれているし、さらには断る自分の姿を容易に想像できてしまったのが嫌過ぎて、溜息しか出なかった。
「……あんまり暗い顔ばかりしていても、ご飯はおいしくないぞ?」
「……そうは言っても、話題が明るくないじゃないですか」
「では、猫釣りの話でもしようか?」
「結構です」
「即答か……むう……」
「……無理に考えなくてもいいですよ。柚葉さんこそ、早く食べないと、そばが伸びちゃいますよ」
「おお、そうだった」
――ありがとうございます、とは意地でも言わなかった。
別にそんな理由もないのに。柚葉さんが柚葉さんなりに私に気を遣ってくれたことは痛いほどわかっているのに。
やっぱり、どうしても素直にはなれなかった。
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自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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