タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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――けふ、けふっ。けほ、こほっ。
「マスク姿に咳き込み姿って、どう見ても風邪スタイルよねぇ……」
「おはようございます、先輩。放っておいてもらえますかね」
「待て待て待て。休む気ないのか、あんた」
「今日は召喚士協会で大事な会議があるんですよ……薬は飲みましたので、なんとか」
「いやいやいや、無理すると悪化するだろ。あんたの体調より大事なもんか、それ?」
「仕事する分には問題ありませ――うわぁっ!?」
「ウダウダ問答してんじゃネーヨ。先輩サマが勧めてるんだカラ、大人しく休んどけヨー」
「え、あ、イリス?」
「ちょ、ま、抱えないでください、降ろしてくださいって!」
「ホレ、エステル。ユー、召喚士協会にツテあるんダロ。特務召喚士官メニャーニャ殿は体調不良で休みます、って連絡入れてコイヨー」
「あ、う、うん、わかった! 行ってくる!」
「いや、勝手に決めないで、離してくださいってば……げふっ!」
「ヤダネ、勝手にするヨ。こうでもしなきゃ、オマエ、休まないダロ。派手な咳シヤガッテ」
「だ、大事な会議があるって言ってるじゃないですかー!?」
「知るかそんなモン。ホレ、大人しくしてろヨー」
「ちょっとー!?」
「……………………」
「ホレ、目ェ開けてじっとしてナ」
「……その目薬って……」
「フフン、冥界のビルルン印ネ。病気にはよく効くんダゼ? ……っと。オーケー」
「……どうも……」
「おっと、起きるな寝てろヨ。今日は一日安静にしとくんダナ」
「ただいまー」
「ハロー、エステル。どうだったンダ?」
「うん、『体調不良じゃしょうがないのう』って言って、会議は延期になったらしいよ。日程はまた知らせるって」
「……そんな、あっさり……」
「結局、オマエの体調より大事なモンじゃなかったってことダナー」
「だいたい普段が働きすぎなのよ、メニャーニャ。ハグレ王国にだって休暇で来てるんだし、もっとゆっくりしていいんだぜ?」
「……そうは言われましても……」
「そこでぐずるあたりがワーカホリックだナ、ユー。とにかく今日は大人しくしてナ。ドントムーブ、ドントアクト、オーケー?」
「……はあ……」
「……にしてもイリス、やたらと手際が良かったわね」
「ワット?」
「メニャーニャをさっさと部屋に運ぶのも、しっかり薬を用意してるのも、私に連絡を頼むのも、全部スムーズにやってたじゃん。それでいて悪意も感じさせないし……なんていうか、さっぱりイリスらしくないんだけど」
「何ダ、悪いこと企んでるみたいに言いやがッテ」
「いや、実際助かったんだからそういうつもりはないんだけど……でもイリスにさ、そこまでメニャーニャに親身にする理由って、何かあったっけ?」
「あったからっていちいち言わなきゃいけない義務はネーナ」
「あ、何よそれ。なんかトゲのある言い方じゃないの」
「ハッ、そもそも先輩面するんなら、気遣う役割を私に取って代わられてんじゃネーヨってコトサ」
「はあ!? むかつくんですけど!?」
「ぼやぼやしてっと、私が浚っちまうゾ?」
「冗談じゃないわ! あんたなんかにメニャーニャは渡さないわよ!?」
「……ふだりどもやめでぐだざい……」
「え、メニャーニャ……今の声やばくない?」
「……ウップス。本人の前でやるファイトじゃなかったネ」
「おい、熱上がってんぞ!?」
「ソーリー。これはさすがに目薬だけじゃ無理ダナ……道具屋呼んでくるから、エステルはソイツ見張ってろヨ。アー、喋らせるなヨ?」
「あ、う、うん、わかった……」
「……様子はどうダ?」
「うん。ベル君の薬がよく効いてるみたいで、ぐっすり眠ってるよ」
「ソウカ。まあこのまましばらく本当の意味で休んでもらうとするカナ」
「……ところで、私の疑問、まだ解決してないんだけど」
「だとして、今は答えられネーナ」
「疑問の内容すら言ってないじゃん!?」
「ビークール。答えないとは言ってない、答えられないって言ったんダ。先にメニャーニャに許可もらってこいヨ」
「……メニャーニャ次第で、私の疑問に答えてくれるってこと?」
「というより、私とメニャーニャ両方の許可が揃えば、ダナ。……場合によっては、ユーには知ってもらっておくべきかもしれネーナ」
「……イリス、あんたはいいの?」
「フーム……まあ、メニャーニャのほうが話したくなったときに『私は構わないゾ』って言ってた、って伝えておけばいいサ」
「……わかった。じゃあ、今日のところはここまでにするわ」
「オーケー。今日はメニャーニャの傍に居てやれヨ」
「言われなくても。じゃあね」
******
【数日後――】
「……イリス、話があるんだけど」
「――クク、ハンニャみたいなオーラ出しやがッテ。先日の件ダナ?」
「ああ……できれば、私達以外に誰にも聞かれない場所でね」
「……話、だけで済めばいいけどナ。それならデーリッチと王国参謀を呼んでくれヨ」
「……誰にも聞かれない場所でって言ったばかりよ?」
「判ってる。秘密を守れる場所に向かうためにちょっと協力してもらうだけダヨ。要するに――次元の塔の、冥界の、私の部屋ダ」
***
「……エステルちゃんもイリスちゃんも、すごくピリピリしてるでちね……」
「険悪な雰囲気だな。でも『誰にも聞かれたくない』という部分は固く共通しているらしい。……やばそうだったら止めに入ろう」
「そうでちね……でも、それくらい大事な話だったら、きちんと結論を出してほしいでちね……」
「そうだね。今はそれを信じて待とうか」
***
「……さて。話とは何ダ?」
「――判ってるんだろ……?」
「あんた、メニャーニャに――私の大事な後輩に、なんてことをしてくれたんだよっ!!?」
「……そうか。メニャーニャから聞いたのか」
「ああ、聞いたさ。あんたとメニャーニャが何をしたのか……あんた、あの子の優しさにつけこんで、もてあそんで、自分のものにしようとしたな!?」
「ソウダナァ。やり方としては確かに、アイツの性格を利用させてもらったことになる」
「……あの子は、頼られれば断れない子だ。自己犠牲に走る子だ。私がハグレ王国に来いって手を引っ張った時だって、背負った責任の重さに潰れそうになっていた――潰れそうになるのも構わずに、背負ってしまう子なんだよ」
「知ってるヨ、見てりゃ判る。判りやすすぎて呆れちまうくらいにナ」
「知っててもてあそんだのかよっ!?」
「……エステル。別に私はアイツをもてあそんだつもりはないゾ」
「信用できるか、悪魔のくせにっ!!」
「悪魔だから信用できないってんじゃ、どうしようもネェケドサ。ただ……私はメニャーニャに対して、もてあそんでいるつもりも、ふざけているつもりも一切無い」
「……なんだって?」
「――アイツは素晴らしい死神になってくれるだろう。そう思うと、どうしても欲しくなった」
「……死神、だって? メニャーニャに、そんなものになれっていうのか?」
「そんなもの、とは。オマエが死神というものを知らないのは仕方ないが、あんまり度が過ぎるなら、こちらからもふざけるなと言わせてもらうゾ?」
「……どういうことよ?」
「場合によっては、死神という役割を侮辱しているとも取るゾって言ってるんダ」
「侮辱……ですって?」
「――死神ってのはナ、魂の輪廻を循環させるために、非常に重要な役割を担っている奴らのことダ」
「重要な……重要だから、メニャーニャをスカウトしたって言うの?」
「まあ、もちろんそれだけじゃないがナ。死神として相応しい素質を感じたこと、個人的にアイツの心根を気に入ってること、どっちも大きな理由サ」
「……なるほど、ね。理屈はさ、わかったよ」
「――その割に、怒りのオーラはさっきよりも増してやがるナ?」
「そりゃ、そうさ」
「……それでもみすみす、あんたなんかに、私の大事な後輩を渡せやしない」
「……クク、そうだよなァ。オマエからしたら、どんなに理屈を並べようと、納得できるはずがないだろう」
「そこも、判ってたのか?」
「ああ。オマエだってメニャーニャとは違うが判りやすい性格だ――こうなると思ってたヨ」
「……この場所を指定したのも」
「皆まで言うなヨ。言葉で納得出来ないなら……」
「――力で、決めようジャネーカ」
******
「――派手な音がしたと思ったら……」
「ふたりともひどい有様でちねえ……」
「オー、ノー……アイアムウェルダンビーフステーキナーウ……」
「うごおおおお……え、エステルちゃん、ただいまキンキンに冷えておりまぁーす……」
「どう見ても重傷なのに、どうしてそんな言葉が出てくるんだ、まったく……」
「オー、国王サン、参謀サン……ソーリー、ヘルプミー、アンドヘルプハー。さすがにこのままほっとかれたら死んじまうヨ……」
「ああ、はいはい。ふたりともこれを飲んで。ベル君特製リバース」
「ンギェー!!?」
「んぎゃー!!?」
「……死体もハンドスプリングする不味さ、でちね」
「まあでも、これでひとまずは大丈夫だろう。あとは頼むよ、デーリッチ」
「おうでち。メニューリカバー!」
「うげぇ……まだ口の中に苦味が残ってるわぁ……」
「絶対に慣れられる気がシネェナ、コレは……」
「慣れるほど世話になったりしたら困るよ。嫌なら繰り返さないことだね」
「あー、ごもっともだわ……」
「それで、もう話はいいんでちか?」
「アー……イヤ、悪いがもうチョットダケ外に出といてくれないカ? たぶん、もうすぐ、ひとまずの結論は出せるダロウ」
「うん、お願い。……もう大丈夫だと思う」
「わかった。納得いくまで話をするといい」
「じゃあ、待ってるでちよー!」
「……イリス。あのさ」
「ワット?」
「……さっきのプライドオブハーデスって、手加減、した?」
「クク――全力を出すより難しい手加減なら、したナ」
「……やっぱりか。たぶん、本当の意味で全力だったら、私、即死してた気がする」
「こっちにも言えることダヨ。オマエが全く容赦無しにバルカンフレア撃ってたら、私は炭クズになってただろうサ」
「なるほどねえ……ということは、同じこと考えてたのね?」
「おそらく、ナ」
『――今ここでコイツを討っても、メニャーニャを悲しませるだけだろう――』
「……本当に決着をつけるなら、当人を含めてちゃんと言葉を交わしてから、なのよね」
「無理矢理引き剥がしたところで、拭えない傷が残るだけってコトダ――私が言うのも何だが」
「ホントだよ。奪った側のくせに何を偉そうに言ってんだ」
「クク、だが引き下がる気はないゾ。さっきも言ったが、私だって遊びでメニャーニャに手を出してる訳じゃないんダ」
「ふん、言ってなよ。絶対にあんたの手からメニャーニャを取り戻してやるんだからな!」
「やれるもんならやってみろヨ、受けて立つゼー」
「上等だ!!」
******
【さらに数日後――】
「お、メニャーニャ、元気になったかー!」
「おはようございます、先輩……ご迷惑をおかけしました」
「気にすんなよ、あんたが元気なのが一番さ。じゃあ、快気祝いにどっか遊びに行かない?」
「え、今からですか?」
「うん。今日は晴れてるし、いっしょに外の空気吸いに行こうぜー?」
「ヘイヘーイ。デートにでも行くのカー?」
「げ、イリス。お呼びじゃねえよ……」
「私だってユーはお呼びジャネーケドナ、エステル」
「おはようございます。イリスさんにもご迷惑をおかけしました」
「アー、いいってコトヨ。ただ、ヤバイ時はちゃんと休め。じゃないとまた担ぐゾ?」
「き、気をつけます……」
「それはともかく、どっか行くんだったら私も混ぜろヨー」
「お呼びじゃねえって言ってんだろ!? あっちいけ、しっしっ!」
「先輩、みっともないですよ……」
「オウ、こんなみっともない先輩はほっといて、私とデートはどうダ、メニャーニャ?」
「あー、横取りすんなー!!」
「なんだコラ、ヤンのか?」
「いや、ちょっと待って、ふたりとも、喧嘩は……!」
「たいへんじゃー!! たいへんじゃー!! マリオンがまたオーバーヒートしおったのじゃー!! メカニックー!! メカニック、はやく来てくれー!!」
「…………」
「…………」
「……私じゃないと対処できませんね。というわけで行ってきます」
「……まさかの」
「……マリオン」
「……ライバルはお互いだけじゃない、ってことね……」
「ソウダナァ……しかもマリオンは意外と手強いゾ……」
「確かに……オーバーヒート起こされたら、メニャーニャ以外じゃ対処できないもんね……」
「……何だか気が抜けちまったナァ。ヘイ、エステル」
「なによ?」
「予定変更ダ。フラレたモン同士でデート行こうゼ」
「あー……まあ、そういうのもいいかな……」
「私達は、ライバルであると同時に、同志ダ。それは覚えとこうゼ」
「そうだね……まあ、そう考えられるなら、あんたと仲良くするのも、アリなのかな」
「クク、それはそれで悪かネェナ」
「じゃ、行こっか」
「オーケー、イッツファイン」
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こうと
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性別:
男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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