タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
+ + + + + + + + + +
返り血。
血塗られた手。
殺す相手の悲鳴。
殺した相手の仲間の怒りの声。
同胞が私に向ける嫌悪の目。
私が帝国を裏切らないかと値踏みする権力者の目。
まとわりつくルージュ・ノワール。
じわりじわりと、私の心を侵食していくもの。
「――うなされていたくせに、えらく冷静に起き出してくるんダナ?」
真夜中の暗い部屋の中。
上半身だけをベッドから起こしてぼうっとしている私に、かけられる声。
「……慣れたのでしょうね、多分」
幾度も見た悪夢。
いつから見始めたのかは覚えていない。ハグレ王国に来るより随分と前から、そして王国に来てからもたびたび見る夢だった。
「慣れたと言う割には、目がくすんでるゾ?」
「……うなされていたそうですね、私は。決して気持ちの良い夢ではありませんから、仕方のないことです。……それにしても、随分と夜目が利くんですね、イリスさん」
悪魔だからナ――ふふんと笑う声のあとに、そんな言葉が返される。
「夢ってのは、自分自身の記憶が見せるモノだと言うナ?」
「……基本的には、そうですね。見た物だったり、考えていることだったりが、イメージとして自分の目の前に現れるもの、でしょうか」
「なら、オマエの記憶には……オマエの心には、随分と気持ちの悪い闇がまとわりついていると見える」
「……今更な話です。あなたにはお話ししたこともあるかと思いますが」
「帝都を守るためにその手を血に染めた、というやつだったナ」
「ええ……その過去は消えませんし、失われた命は戻ってはきません」
「そのことをずっと気にしながら生きていくつもりか、オマエ?」
「……こうして夢に見る限りは、嫌でも思い出すことですしね」
「――エステルがその手を引っ張っても、私がオマエの心根の清らかさを保証しても、どうにもならないか?」
「……、おそらくは」
背負う覚悟は出来ている。
それに、私が忘れてしまえば――私が奪った命は、それこそ本当に消えて無くなってしまうように思えて。
だけれど、そんな私の顔に向かって、イリスさんの手が伸びる。
指が、頬に触れる。
「随分と重そうに背負いやがる。傍から見れば到底耐えられないんじゃないかって顔して、ナ」
「……だからと言って逃れられはしません。私が手を下したのですから、他の誰かに背負わせることも出来ません」
「――なら、いっそ壊してしまおうか。オマエが楽になれるように」
「オマエの心を壊そうか。何も考えなくていいように」
……そうすればきっと、罪の意識に苛まれなくなるのだろう。
「それともオマエが守りたいものを全部壊そうか。何もかも無くしてしまおうか」
……そうすればきっと、何にも縛られなくなるのだろう。
かけられる言葉は両方とも、大きな大きな悪意に満ちた、私への優しさ。
すべてを壊して、それが私のためなのだと笑う悪魔。
「……できるわけがありません。狂えもしないし、壊せもしない。それならば、重みに潰されて死ぬ方を選びます」
「どこまでもネガティブだナ。ま、オマエなら当然の選択なんだろうが」
そう言って笑いながら、悪魔の腕が私を抱く。
「ただ、少なくとも今はもう少し楽ができるだろうサ――ひとりで背負う必要なんてないんだからナ」
「……そう、かもしれませんね。王国の皆さんには助けられていますから」
「オマエが潰れそうになっているなら、そうはさせまいとして勝手にわらわらと押し寄せてくるだろうサ。お人好しばっかりだからナ、この国は」
「……イリスさんもそのひとりですよね。わざわざ今こうして私の部屋に居る時点で」
照れくさそうに頬を搔き、複雑そうな表情を浮かべる悪魔。
「……少しはガス抜きできたか?」
「……はい」
「グッド、じゃあ改めて眠りナ。寝不足は身体に毒ネ」
「ふふ、わかりました。おやすみなさい、イリスさん」
「グッドナイト、メニャーニャ」
悪魔のゆりかごの中で、静かに目を閉じて。
私は優しい闇の中に落ちる。
瞼に、キスをされた。
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男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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