忍者ブログ
タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
[47] [46] [45] [44] [43] [42] [41] [40] [39] [38] [36]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

メニャーニャ、イリス。
実は昨日(2016/02/20)にあるアーティストのライブに行ってきて、ものすごく影響を受けて書いた話ですので、SSの後に動画リンクを貼っておきます。

+ + + + + + + + + +

 返り血。
 血塗られた手。

 殺す相手の悲鳴。
 殺した相手の仲間の怒りの声。

 同胞が私に向ける嫌悪の目。
 私が帝国を裏切らないかと値踏みする権力者の目。



 まとわりつくルージュ・ノワール。
 じわりじわりと、私の心を侵食していくもの。











「――うなされていたくせに、えらく冷静に起き出してくるんダナ?」

 真夜中の暗い部屋の中。
 上半身だけをベッドから起こしてぼうっとしている私に、かけられる声。

「……慣れたのでしょうね、多分」

 幾度も見た悪夢。
 いつから見始めたのかは覚えていない。ハグレ王国に来るより随分と前から、そして王国に来てからもたびたび見る夢だった。

「慣れたと言う割には、目がくすんでるゾ?」
「……うなされていたそうですね、私は。決して気持ちの良い夢ではありませんから、仕方のないことです。……それにしても、随分と夜目が利くんですね、イリスさん」

 悪魔だからナ――ふふんと笑う声のあとに、そんな言葉が返される。

「夢ってのは、自分自身の記憶が見せるモノだと言うナ?」
「……基本的には、そうですね。見た物だったり、考えていることだったりが、イメージとして自分の目の前に現れるもの、でしょうか」



「なら、オマエの記憶には……オマエの心には、随分と気持ちの悪い闇がまとわりついていると見える」



「……今更な話です。あなたにはお話ししたこともあるかと思いますが」
「帝都を守るためにその手を血に染めた、というやつだったナ」
「ええ……その過去は消えませんし、失われた命は戻ってはきません」
「そのことをずっと気にしながら生きていくつもりか、オマエ?」
「……こうして夢に見る限りは、嫌でも思い出すことですしね」
「――エステルがその手を引っ張っても、私がオマエの心根の清らかさを保証しても、どうにもならないか?」
「……、おそらくは」

 背負う覚悟は出来ている。
 それに、私が忘れてしまえば――私が奪った命は、それこそ本当に消えて無くなってしまうように思えて。

 だけれど、そんな私の顔に向かって、イリスさんの手が伸びる。
 指が、頬に触れる。

「随分と重そうに背負いやがる。傍から見れば到底耐えられないんじゃないかって顔して、ナ」
「……だからと言って逃れられはしません。私が手を下したのですから、他の誰かに背負わせることも出来ません」



「――なら、いっそ壊してしまおうか。オマエが楽になれるように」



「オマエの心を壊そうか。何も考えなくていいように」
 ……そうすればきっと、罪の意識に苛まれなくなるのだろう。

「それともオマエが守りたいものを全部壊そうか。何もかも無くしてしまおうか」
 ……そうすればきっと、何にも縛られなくなるのだろう。

 かけられる言葉は両方とも、大きな大きな悪意に満ちた、私への優しさ。
 すべてを壊して、それが私のためなのだと笑う悪魔。



「……できるわけがありません。狂えもしないし、壊せもしない。それならば、重みに潰されて死ぬ方を選びます」



「どこまでもネガティブだナ。ま、オマエなら当然の選択なんだろうが」
 そう言って笑いながら、悪魔の腕が私を抱く。

「ただ、少なくとも今はもう少し楽ができるだろうサ――ひとりで背負う必要なんてないんだからナ」
「……そう、かもしれませんね。王国の皆さんには助けられていますから」
「オマエが潰れそうになっているなら、そうはさせまいとして勝手にわらわらと押し寄せてくるだろうサ。お人好しばっかりだからナ、この国は」
「……イリスさんもそのひとりですよね。わざわざ今こうして私の部屋に居る時点で」

 照れくさそうに頬を搔き、複雑そうな表情を浮かべる悪魔。

「……少しはガス抜きできたか?」
「……はい」
「グッド、じゃあ改めて眠りナ。寝不足は身体に毒ネ」
「ふふ、わかりました。おやすみなさい、イリスさん」
「グッドナイト、メニャーニャ」

 悪魔のゆりかごの中で、静かに目を閉じて。
 私は優しい闇の中に落ちる。

 瞼に、キスをされた。







PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧可能にする    
プロフィール
HN:
こうと
Webサイト:
性別:
男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) ざくアクSS保管庫 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]