ローズマリー、イリス。
なぜか氷の悪魔二人を差し置いて、ただ一人、味方内では素でブリザードを使えるローズマリーさんの話。

「なあイリス、疑問に思うことがあるんだけど」
「ン、私に対して疑問とは珍しいナ、参謀サン？」
「いや、大したことではないんだけど……ゼニヤッタもそうだったけど、君達はどうしてブリザードを使わないんだ？」
「……アー、基礎系の全体化氷魔法のことかナ？」
「うん。敵対したときは普通に使ってきてたのに、どうして味方になると使わないんだろうって。おかげで氷特化の二人を差し置いて、私がハグレ王国唯一のブリザード使いっていう、妙なアイデンティティが出来てしまってるんだけど」
「良いジャネーカ。私達には無い速射性が売りってことで」
「威力は今ひとつだけどね……さすがに魔王タワーまで来ると、火力不足を実感するよ」
「ンー、コンプレックスでもあるのか？」
「……もともと私自身は特別な才能があるわけじゃないし、二属性を扱うのだってかなり無茶をしている。それでも、君達みたいに特化した存在には到底追いつけないからね」
「……それでもユーはよくやってるヨ。戦うばかりが能じゃない」
「ああ、ごめん……気を遣わせちゃったかな？」
「ドンマイ。っと、話が脱線しかけてるナ……なんで私達がブリザードを使わないんだって話だったナ？」
「うん。理由はあるのかい？」
「……無いこともない。私達は、ユー達と一緒に戦う時は、力を抑え目にしている」
「抑え目？」
「ソウダ。……本当に全力を出す時ってのは、ちょうどユー達と対峙した時の状況だナ。私は一人でユー達の相手をしたカラ、抑える必要なんてなかった」
「……なんとなくわかったような。他に味方がいる状況だとまた変わってくるのかい？」
「イエス。私の力は、振るいすぎると敵どころか味方まで傷つけることもあるってことサ」
「うーん、でも納得いくかと言われるとそうでもないんだよね……プライドオブハーデスなんかは味方になってからも凶悪な威力だし」
「オウ、私も今の説明で納得してもらえるとは思ってネーヨ」
「わぁー……」
「ま、他に言えるのは、別にブリザードがなくてもそれ以外に全体攻撃できる手段があるからってことカナ。ゼニヤッタならホワイトローズ、私ならイリュージョンって具合に」
「でも、それはTPが必要だろう？」
「素でブリザードが撃てるなら、それ撃ってTP溜めて大技撃てばいいだろってことで、低コスト技の意義がなくなっちまうからナァ」
「ものすごいメタファーを感じる……」
「けど、一番もっともらしい説明ってなると、こんなもんダヨ。あとそうイヤァ、地味に雪だるまガールも使えるんじゃネーカ、ブリザードって」
「雪乃のことかな……イリスが王国に来る随分前の話じゃないか。どうして知ってるんだ？」
「イヤ別に知らネェけど、超氷耐性持ちの妖精なんだろアイツ。氷のヴェールには苦戦させられたし、今の話からするとブリザードくらい使えてもおかしくネーナって。実際に使ってきたんダナ？」
「ああ、そういう推論か……うん、使ってきたよ。……なんだかやっぱり変なアイデンティティを抱えているような気がしてきたよ。皆、使えるのに使わなくて、私だけって感じで」
「ユーのコンプレックスも大概ダナ……もうちょっとシャキッとしろヨー」
「わぷっ……い、イリスに頭を撫でられるなんて……」
「この私に強烈なトラウマを刻み付けたぽてと君の生みの親がそんな有様なら、いよいよ本格的にこの国乗っ取っちまうゾ？」
「そういうことをわざわざ言っちゃうあたり、本当の意図ってものがわかりやすいなぁ……ああ、けど、そうだね。私がしっかりしないと」
「ま、たまに弱気になることはあるんだろうがナ。シノブと一緒の時にも言ったが、ユーは凡人であることが最大の長所にもなってるってコトを忘れるなヨ」
「ああ、うん、ありがとう、イリス」
「ザッツオーケー。それでこそ張り合いがあるってモンダゼ」
「張り合いか……そういう意味でもしっかりしないとなぁ」