タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
+ + + + + + + + + +
――ハグレ戦争終戦記念日。文字通り、過去のハグレ戦争が終わった日。
しかし今日、その歴史を否定せんばかりに、帝都の存在を憎むハグレ達が結託して攻めてくる。
負けるわけにはいかない。
負ければ、帝都に住む人々が蹂躙されてしまう。それだけは許すわけにはいかない。
帝都を守るため――そのためには何だってする。
妖精王国に多額の借金をして、その妖精王国の根回しでエルフ王国には手を引いてもらい、そして最近になって力をつけてきたハグレ王国に応援を要請して。
そして――火蓋が切られたなら、私は容赦しないだろう。
殺すことを。
「――ハロー、ナイストゥーミーチュー♪」
――唐突に、陽気な声をかけられた。
反射的に眉間に皺を寄せながら、顔を向ける。
「……どちらさまでしょうか」
「マイネームイズ、イリス。アーユー、メニャーニャ? オーケー?」
「……はい。私がメニャーニャですが」
聞き慣れない言葉なので、なんとなく意味を汲み取りながら返事をする。
イリスと名乗った目の前の女性は、私の戸惑いもおかまいなしに、笑う。
「……フーム。ユア、ベリーガーリッシュガール。だというのに、随分と偉い地位に就いてるんデスネー」
「いや、普通に喋れるんならそうしてくださいよ……わかりにくいです」
「フフン♪ ディスイズマイポリシー。そっちが合わせるデース」
「すみませんが、今はそんな余裕もありませんので。もう、時間は迫っているんです」
「ツレナイネー。ハグレ王国が手を貸しているんだから、もっとドーンと構えていればいいのに」
「……あなたもハグレ王国の一員なんですか?」
「イエス。一員になったのはごくごく最近の話ですけどネー。ま、王国がバックアップする以上、この戦は万に一つの敗北もアリエマセーン」
「……新参と言いながら、随分な自信をお持ちなのですね?」
「オフコース。だって――」
「奴らはこの私を力でねじ伏せたんだからナ?」
――唐突に放たれた、底冷えのする殺気。
咄嗟に、距離を取って身構える。
イリスさんの笑顔は、先程の陽気さから一転して、悪意に満ちた印象を与える。
「……何者、ですか。あなたは」
「もう少し詳しい自己紹介をしようか……私は冥界を統べる王の娘、冥王姫イリス。いろいろあって、今はハグレ王国に所属しているのさ」
「冥界……ですって?」
――ハグレ王国に所属していると言ったが。
今、目の前に居る存在は、もしかすると、これから迎え撃つハグレ連合軍よりもずっとずっと恐るべき、不倶戴天の敵という存在なのではないだろうか。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、イリスさんはすっと掌を差し出して私を制する。
「ドントウォーリー。ハグレ王国に属する限りは王国の意に沿って、帝都の味方として戦ってやるヨ。攻めてくる奴は容赦しない――皆殺しダ」
――皆殺しだ、と目の前の存在は言った。
私も、その心構えを持っているつもりだった、けれど。
「……あなたと私では、意味合いがまるで違いますね。あなたはおそらく、皆殺しという行為に快楽を求めている」
「ユーは違うのか、メニャーニャ?」
「……やらなければ、こちらがやられる。それに、殺さずに追い返したとして、奴らに家族や仲間を殺されたりした帝都の人達は、納得しないでしょう」
「――同胞の怨嗟を背負うとでも?」
「誰かが引き受けなければならないこと、ならば私が。それだけのことです」
言葉が途切れる。
イリスさんは先程の悪意の笑みを潜め、感情の読めない顔で私を見つめている。
「――ユア、ガーリッシュガール」
ついさっき、放たれた言葉。
なぜ繰り返されるのか、意味がわからず、私が眉を顰めていると――
「オマエ、地位は偉いのかもしれないが、所詮はちっぽけな人間ダ。数多の怨嗟なんてものを一人で背負えるなどと、思い上がるなヨ」
「……ご高説、どうもありがとうございます」
精一杯、皮肉を込めてそう返す。
初対面、なおかつ明らかに悪意に満ちた存在。そんな相手からの説教を素直に受け取るほど、私はお人好しじゃない。
「もう、時間が迫っていますので。失礼します」
もう、話すことはない。
会話を打ち切って、横を通り過ぎようとした。
「――グッドラック、メニャーニャ」
背中越しに、そんな言葉が響いたけれど。
特に気に留めることもなく、私はその場を去っていった。
「……なるほど、こりゃまた容赦ネェナ」
帝都正門前の決戦が終わってしばらくの時。
メニャーニャは、西に現れたハグレ連合軍のボスであるマーロウという獣人の追撃のため、エステルと共に走っていった。
残されたのは、動かなくなった魔導兵器と――幾多もの、サハギンどもの死体。
悪魔である私から見ても、あまりにも無慈悲な迎撃だった。
転がる死体は、大半が身体を半分以上吹っ飛ばされ、肉片を撒き散らしている。
「……イリスさん、何をしているのですか?」
「オー、福の神サン。いや、随分と酷い有様だと思ってナ。協会の悪魔という渾名は、伊達じゃないようダ」
「……攻められているのは私達でしたから、自業自得、ではあるのですが……」
「随分と割り切れない顔して言うジャネェカ。ま、私も魔導兵器は一体所持してるから強烈さはよく知ってるが……それが三体も出てくりゃ、ナ」
皆殺しだと息巻いていたが、実のところ私が殺せた数は、両手の指で数え足りる程度でしかない。目の前の死体の山は、メニャーニャの用意した魔導兵器によって築き上げられたものだった。
「人間として生まれて、その人間の尺度ですらまだ成長しきってもいない歳だってのに……あの娘の決意ってやつは、やっぱり並大抵のモンじゃネェんだろうナ」
「……ですが、危うさを感じます」
「ソウカ……実のところ私もそう感じた。相当わかりやすく、そしてそれゆえに一層危ういってことダナ」
――突然、地面が揺れる。
同時に、響く轟音。
門の向こう側から、聞こえた。
「何ダ?」
「……爆発音? 帝都の中から?」
「オイオイ、敵は迎撃したはずダロ? 先んじて侵入してた奴がいたってことカ?」
「――あれは……メニャーニャさんかしら?」
「……血相変えて門の向こうに走っていったナ」
想定していない異常な事態が起きたとでもいうのだろうか。
しかし、爆発音以降は何も起こることなく、戦争は私達の勝利で終わった。
後で聞いた話だが、やはり事前に帝都内部に侵入者が居て、召喚士協会の建物に対して自爆テロを敢行したとのことだった。建物は全壊状態だが、人的被害はゼロ――しかし、破壊された建物を見たメニャーニャは、強烈なショック状態だったという。
敵対者に対する無慈悲さを持ち合わせてはいても。
やはり、メニャーニャは――
「グッモーニン、エステル」
「あ、イリス……何の用よ」
「用っていうか、むしろユーがこんな朝早くからどこ行こうってんだと聞きたい」
「あー……帝都よ。今日はメニャーニャとデートする予定なんだ」
「デート? オイオイ、ユーの後輩とはいえ、お偉いさんなんダロ? そんな簡単に約束を取り付けられるモノカ?」
「けど、放っておけないじゃない。あんな事があったんだし、なんとか元気になってもらわなきゃ」
「……ま、確かにナ。地道ながらも大事なことかもしれネェナ」
「何よ。茶化さないの?」
「茶化してほしいカ?」
「嫌に決まってんじゃん。けど、なによ。もしかしてイリスも気にしてるの?」
「まぁナ。あんな若さで、随分と重責を背負ってやがるみたいだが……もう、限界が近いのかもしれん」
「……限界、か……」
「思い当たる節はあるのカ?」
「あいにく、嫌と言うほどね――忠告ありがと、イリス」
「ドーイタシマシテ。せいぜい上手くやるんだナ」
「言われなくてもね。じゃ、行ってくる」
「イッテラー。道中気をつけろヨー」
「……今振り返ると、イリス、あの時点でメニャーニャのこと、気にかけてたっぽいわよね?」
「あの時はまだ、こんなことになるなんて思ってもみなかったけどナー……」
「こんなこと、にしても仕掛けてきたのはイリスさんのほうじゃないですか」
「けど、自分でもびっくりするぐらいユー達にメロメロダゼー?」
「やめてください恥ずかしい」
「素直に喜んどけばいいじゃんかよ、めにゃーにゃあー」
「勝手に人の名前ひらがなにすんな」
「ハハ。まあ、随分と危うくはあったが、あの時点でも見所はあったんだろうナ。既に偉い地位に就いてて、そうなるのも納得の知識と心構えを持っていた点が、目を引くに値したってところカナ」
「もっともらしい理屈だけど……イリスが言っても説得力がないっていうか」
「ナンダソレ、ヒデェナ……」
「いや、うん。要するに、一目惚れだったんじゃないの?」
「……フーム。そう言われればそうかもしれんが、そうじゃないかもしれん。はっきりとは言えネェナ」
「イリスって、理屈より感覚を優先して動きそうなタイプに見えるしさあ……」
「かといって、一目惚れと言うには、実際に動き出すまでに随分と時間が経っていますが」
「あの後さらに巨大魔物戦争を挟んで、それでもって命がけのシノブ救出劇と続いて、だしナァ」
「……ゼンマイ山への討伐作戦前の問答はよく覚えていますよ」
「本当に根に持ってんナァ……」
「ああ、いえ。福の神様が間に入ってくれたこともあって、あの問答自体は考える機会にもなりましたので」
「リアリィ? ……今度、礼でも言いにいくカナ」
「まあ、なんだかんだいろいろあって、今はメニャーニャも無事にハグレ王国でこうしてぎゅー、ってか」
「苦しいんですけど!?」
「クク、顔も耳も赤いゾ、アカーニャ?」
「やめろその口今すぐ閉じろっ!?」
「ヤーダネ。ホレ、ギューット」
「はーなーせーっ!!?」
<余談>
時系列は以下のようになっています。
1:防衛戦開始直前
2:防衛戦、正門編終了後
3:防衛戦後、タンポポ山シナリオ直前の宿泊イベント前
4:魔王タワー攻略後(いつもの時間軸)
なお、実際のゲーム中、帝都防衛戦時にイリス様が加入済みだった場合、以下のようなことを言われます。
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こうと
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男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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