タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
+ + + + + + + + + +
――あっはははははは!! あっはっはっはっはっはっ!! はぁっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!
――ミカゲ、もうこれ以上は……!!
――なぁんだよ、フク? 怖気づいちゃったのかい?――
――もういいでしょう? 私達は十分に力を示したわ。これ以上、争いを続けたって……
――はぁぁぁああああ?
――はぁぁぁぁぁぁあああああああ!? なぁぁぁぁに言ってんの!?
――今まで、ハグレだって言って、ボクらを馬鹿にしてたやつらがさぁ!?
――今じゃ、泣いて、喚いて、泣き叫んでさぁ、ボクらに恐れおののいてるんだよ!?
――こぉぉんな楽しいことを、やめろって言うのかい!?
――馬鹿言ってんじゃないよ!! あんただってボクと同じ、禍神のくせにっ!!
――あんただって、他人の苦しみや災いを糧とするくせに!! そういうのが大好きなくせにっ!!
――違うわ……私は、そんなことない……
――違うものかよっ!! 今更良い子ぶってんじゃねえんだよっ!!
――泣かせてさぁ、悲鳴をあげさせてさぁ、もっともっと、ぶっ壊してやろうぜぇっ!?
――そんなの……後に何が残るって言うの……何も残らないじゃない……
――知ったことかよっ!! それがボクだ!! それがあんたなんだよっ!!
――違う……違うわ。
――ミカゲ、あなたがどうしても止まらないっていうのなら。
――私は、あなたを……!!
――――
******
「――っ……」
喉に引っかかるような、自分自身の異常な呼吸とともに、目が覚めた。
眠っていたというのに、ひどく体力を消耗したかのように、呼吸が落ち着かない。ぜえはあと、そんな荒く乱れた呼吸音が、真っ暗な部屋の中に響く。
昔の出来事を、夢に見た。
実際に起こった事だからか――ひどく生々しく、私の心を強い痛みで揺さぶった。そして、夢に叩き起こされてしまった。
呼吸が落ち着くのを待ち、もう一度眠ろうと目を閉じる。
けれども、眠りの時は一向に訪れない。どうやら目が冴えてしまったらしいことを実感する。
夜はまだまだ深く、長く続きそうだった。
眠れないまま部屋の中で寂しく過ごすのは、今の私には辛いことだった。
相部屋のクラマ君とポッコちゃんを起こさないように、そっと部屋を抜け出して。
以前に三人で買い物に出かけたときに購入したワンピースドレスを着て、拠点の屋上へと向かう。夜風に当たって落ち着きたい気分だった。
見上げれば、いくつもの星が光る夜空が広がっている。
それだけでなく、三日月が浮かんでいるのが見えた。
床に腰を下ろし、月と星を見つめながら、時間が過ぎるのをじっと待つ。
「ヘイヘーイ、こんな時間に何やってんのカナー?」
突然の声に振り向く。
夜の闇で姿は少しわかりにくいが、どこかの異国訛りの口調から、相手の正体は容易に判別できる。
「……何の用ですか、イリスさん」
「別に何も? けど、福の神サマともあろう者が、こんな時間に辛気臭い顔して夜更かししてりゃ、気にならないわけないダロウ?」
にたぁっ、とその口が意地悪く歪む。
「……あなたはどうしてこんな時間に起きているのですか」
「答える義務はないネ。悪魔は夜こそ活動的なのサ」
「用がないのなら放っておいてもらえますか。一人になりたいのです」
「そうはいかないネ。今のオマエ、ものすごく弄り甲斐がありそうだからナァ?」
――ざわっ。
「――お、やんのか? だったらこっちも容赦しねぇゾ?」
意地の悪い笑みはそのままに、冷酷な殺気を漲らせる。
私は私で、敵意を持ってイリスさんを睨みつけていた。
そのまま殺気をぶつけ合うこと、十数秒。
「――ここで争っても、不毛なだけですね……」
先に私が、溜息とともに視線を下ろした。イリスさんも殺気を収め、肩をすくめる。
「そうかナ? 私としては、真に本気を出したオマエとやり合ってみるのも、ワクワクするんだけどナ?」
「……どういう意味か知りませんが、そんなことはありえません。私は、福の神ですから」
「……オマエ、それ、本当は違うって、自分で白状したらしいジャナイカ。確か、元は禍神……災いを司る神だとか言ってたナ?」
「……ええ、確かにそうでした。でも、今はれっきとした福の神です」
「取り繕うなヨ。まあ、話を聞いたときは――ああ、やっぱりかって思ったけどナ」
「えっ?」
「少なくとも、コイツ本当は福の神なんかじゃネエダロ、くらいは確信してたゼ?」
意外な言葉を言われ――私は一瞬、イリスさんに対する警戒心を強めた。
のだが、彼女はすっと右手で私を制する。
「睨むな睨むな。ま、気になるだろうネ。ということで、ちょっくら真面目な話をしようか。隣、座らせてもらうゼ?」
私が返事するのも待たず、イリスさんは私の隣の床にすとんと腰を下ろした。
仕方ないので私も座る。彼女はすぐには切り出さず、しばらく夜空を見上げていた。
「……どこから気づいたんですか?」
「まあ、実を言うと。最初に顔を合わせた時から、ちょっと引っかかってたんダヨナ。オマエ、福の神と名乗っておきながら、纏う力がどことなく私やゼニヤッタのものと似てやがるカラ」
「……そうなんですか?」
「ま、さすがにそれだけで判ったわけじゃないけどナ。はっきり確信したのは、コイツのおかげサ」
そう言って、彼女はどこからともなく、巻物を一本取り出した。
おそらく魔法書だろうか。魔法を扱う者が読み込めば、誰でも使えるようになる書物。そして彼女――イリスさんが取り出したということ自体にも、大きな意味があった。
彼女の渾名を冠する魔法――『手繰る魂のイリス』。
「……まあコレ自体はホント、誰でも使えるんだけどナ。ただ、特にオマエはコイツと妙に相性が良いよナ。自覚がないとは言わせないゾ?」
冷酷なる氷の力を纏った鎌を呼び、相手を切り裂く魔法。威力ならばゼニヤッタさんのほうが引き出せる一方、私が使った場合は相手をじわじわと苦しませ、暗闇に閉ざし、あるいは即座に死に至らしめることが多い、まさに悪魔の魔法だった。
――振り返ってみて、思わず自嘲気味に笑ってしまった。こんな魔法を使う私は、まさに禍神の様相を呈しているではないか。
「……実のところ、この魔法に着目するのであれば、私よりもクウェウリさんのほうが悪魔的ではないかと思うのですが……まあ、事実として私は元・禍神だったわけですから。イリスさん、鋭いのですね」
「いや、だから取り繕うなッテ。別にオマエが禍神だってことを悪く言うつもりはネーヨ」
「そうなんですか?」
「だって、力ってのはそれ自体が悪いモンじゃない。使う奴の使い方次第なんだから」
「……どういうことです?」
「オマエ、最初に御影星とやらを封印した時は、まだ福の神じゃなかったんダロ?」
――あ。
なんとなく、イリスさんの言いたいことがわかった。
「……そうですね。あの時は禍神として、厄の力を使い、彼女と戦いました。結果としてその戦いが激しすぎて、天界は酷い有様になってしまいましたけれど」
「ま、それは仕方ないダロ。そうまでしてでも、止めたかったんダロ?」
「はい。――止めなきゃ、いけなかった。彼女を満たすためだけの無秩序な混沌は、我慢できませんでしたから」
「……なんだか自分で訊ねといてアレだが、私に語る話ジャネーナ、オイ」
イリスさんが苦笑いを浮かべたところに、確かにそうですね、と笑って相槌を打つ。
「……イリスさんも、どうも御影星と同じ考え方を持っていそうに見えるのですが」
「まーナ。私も正直言って、他人が苦しむ姿を見るのが楽しいってのはあるサ。けど私は、実際に御影星と顔を合わせたなら、容赦無くその魂を引っこ抜いてやっただろうナ」
「……それはまたどうして?」
「楽しみってのは、ひとつだけじゃないんだヨ。ひとつの楽しみを優先しすぎたら、他のお楽しみが失われるかもしれない。まして御影星の場合は他人からゴリゴリ奪っていくようなやり方だ。そんなの後に何も残らないダロ?」
――奇しくも、私が最初に御影星を止めようとした時に、彼女に呼びかけた言葉と同じことを、イリスさんは語った。
「ちなみに私のもうひとつの楽しみは、他人が欲望にまみれて堕落していく姿をニヤニヤしながら眺めること、なんだけどナ」
「……それはそれで、とても趣味が悪いですね」
「ハッ、悪魔的には褒め言葉ダゼ。けど、これについては物申したいこともある」
「何でしょう?」
「これヨォ、堕落していってる当人は本当に不幸なのかってことだヨ」
「……というと?」
「ま、私達が仕掛けたハンバーガーブームやアックマンチョコを思い出してみろヨ。デーリッチやヅッチーとかはハンバーガーを超ウマそうに食ってたし、アックマンチョコでレアカード当てた奴はスッゲエ喜んでたダロ?」
「……なるほど。確かに、見方によっては福が訪れていると言えますわね」
微笑ましくなりながら頷くと、途端にイリスさんの表情がぱあっと輝いた。
「そうそう、そうだろォ!? 福の神のお墨付きダゼ、イヤッホゥ!」
さっきまで私のことを執拗に禍神呼ばわりしていたのに、現金だこと――と思っているうちに、無邪気な表情が今度は急に何かを恨めしく思うようなものに変わる。
「それなのにハグレ王国の首脳どもと来たら! このままじゃ王国が駄目になるなんて言って規制に出やがって、しかもその規制策が……規制、策が……」
途中で言葉の勢いが尻すぼみになり、何を思い出したのか顔色が青くなり、そうかと思うとくわっと涙目でこっちを向いて――
「ぽてと君ってなんなんだよアレ!? アレこそマジモンの禍神ジャネェカ!! あんなモン悪魔でも恐ろしいわ!! ハグレ王国恐るべしだわ!!!!」
――ぜー、はー、ぜー、はー。
イリスさんの取り乱しきった呼吸音が、しばらく夜空に響き渡る。
「落ち着かれました?」
「……すまん、思い出しただけでパニクッちまっタ」
その姿に、思わずくすくすと笑いが漏れてしまう。イリスさんにむっとした目で睨まれてしまったが、それが余計に微笑ましい。ちょっと前まで随分と余裕を持った態度だっただけに、ギャップが激しくて。しかも私は何もしておらず、彼女の自爆だ。なのでどうしても、笑いを抑えられなかった。
イリスさんもそれはわかっているのか、睨むだけで文句は言ってこない。
「まァ、今言ったみたいなのや、あとは単純に大人数でワイワイガヤガヤ馬鹿やるのも、私は楽しいゼ?」
「……それは、最初に仰った、他人の苦しむ姿を眺めて楽しむというのと、矛盾してませんか?」
「そうだナァ、難しいモンだ。でも楽しいんだから仕方ないダロウ?」
イリスさんはそう言って、歯を見せてにっと笑う。
悪魔らしくない、見ているこっちも微笑みたくなるような、純粋な笑顔だった。
「……イリスさん、ありがとうございます。おかげで、なんだかすっきりしましたわ」
「シィット! 私に真っ当な礼を言うんじゃネーヨ!」
「事実なんだから仕方ありません」
くすくすと笑いながら、夜空を見上げる。
三日月が目に入った。
「あ、せっかくですから、お団子でもどうです?」
「……オイオイ、今それどこから取り出したんだヨー。手ぶらだったダロ?」
「これも福の力ですわ」
「えらいご都合主義に聞こえるナァ……まあウマそうだからもらうけどサ」
白くてまあるいお団子を一個、イリスさんに渡す。
「これ、月見団子ってヤツかい?」
「そうです。本当は十五夜という満月の日に食べるものなんですけど、まあ、そこは気にせずに」
「んむっ……ん、もちもちしてて、でも噛み切りやすくて、甘すぎない感じ。ウメェなこれ」
「うふふ、天界自慢のちゅーちゅー印ですからねー」
「あのカリスマネズミんとこのか。……こりゃちょっと、うちの冥界まんじゅうも気合入れて品質向上させねぇとナー」
「競争意識ですわね。良いのが出来たら、試食してみたいですわ」
「ハッ、競争相手だからって難癖つけんじゃネーゾ?」
「その言葉、そっくりお返ししますわ」
――お団子を食べて三日月を見上げながら、神と悪魔はお喋りに花を咲かせ、楽しげに笑い合っていた。
今日のことは、いい思い出になりそうだわ。
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こうと
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男性
自己紹介:
ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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