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タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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イリス、プリシラ。
巨大魔物戦争・妖精王国編の最終バトルの仕様を元に思いついた話です。

+ + + + + + + + + +

「――凍れッ! フリーズジェイル!!」

 グオオ、オオオオッ……!!

「――はあああっ!!」

 ――ギャアアアァァ!!



「……ハアッ、ハアッ……何体目だ……?」
「……七体です」
「ホーリークラップ……! 十五体って聞いてたのに、私達だけで半分近くってわけがないよナァ!?」
「……イリスさん、随分きつそうですね?」
「お互い様ダ、っていうかきつくない奴なんていないダロ……ったく」

 ちらりと後ろに視線を送る。
 私達の足跡の遥か後ろに、傷ついて倒れた妖精が一人。今頃は必死に死んだふりをしているのだろう――生き延びるという勝利を掴み取るために。

「……脆弱な妖精どもがそうやって頑張ってんのに、冥王姫たるこの私が弱音なんて吐いてらんネェヨ。まだ、やれるゼ」
「――『まだ』ですか。やはり余裕は無いのですね」
「……チッ、察してくれるなヨ」

 ――人に近い身を持ち、私でさえ一目置くほどの力を手に入れた、青髪の氷の妖精。奇しくも財務の怪物と呼ばれるほどの手腕を持ち、帝都からは悪魔と恐れられているらしい。何の因果か、そんな女と本物の氷の悪魔たる私が、今は肩を並べて戦っている。
 もっとも、今は財務の手腕も冥王姫のプライドも、何の役にも立たない状況だ。生き延びるために、ただひたすらに戦う力を振るっている。



『たまには悪魔らしいことさせてくれるんダナ? 後悔しても遅いゾ?』



 ――ヅッチーに誘われたときはそう言ったってのに。
 今の状態は、悪魔らしくもなんともない。惨めで不恰好だが、そんなことも気にしてられやしない。
 ただただ全力をぶつけて、目の前に立ち塞がる敵を薙ぎ倒していくしかないのだ。

「――私達とは、また違う意味できついのではないですか?」

 ……プリシラが言う。本当に、どこまでも察しの良い奴め。
 自分の力には絶対の自信がある。氷の悪魔として、冥王姫として、この力こそが私を私たらしめる要素のひとつ。
 だが、この状況においては両刃の剣だった。

 カラカラの砂漠と日照り続きの水不足。
 これらによるマナ不足で巨大魔物の弱体化を見越し、こちらから電撃的に仕掛けて殲滅するという目論み。閃いたのはヅッチーで、それはものの見事に当たっていた。
 だが、過酷な条件というのはこちらにも言えることで――ただでさえマナ不足である中で全力を強いられるせいで、自分の中のマナさえも激しく消耗してしまう。特にこの状況の中では、私の力はあまりに強く。

 使えば使うだけ、身体のほうにダイレクトに、反動ダメージが蓄積していくのだ。

「……他人の心配なんかしてる暇ネェダロ。ホレ、もう次が見えてるゾ」

 苦笑いをしながら、そう返してやった。
 どの道、温存する余裕などない。巨大魔物の爪に引き裂かれて死ぬか、力を使い切って死ぬかという選択肢。ならば迷わず後者を選ぶ、それだけのこと。

「私は大丈夫ダ。何なら次は先陣切ってやんヨ。それよりお前の大事な女王サマの援護、しっかりしてやれヨ」

 精一杯、不敵な笑みというものを作りながら、前に出る。



「――さあ、どんどん来やがれ! どいつもこいつも氷漬けの粉微塵にしてやるヨ!!」







「……ウゲェ……」

 ――からだがあつくていしきがもうろうとする。

 視線の先は天井、背中は柔らかいシーツの感触に受け止められている。

 要するに私は今、派手に体調を崩して寝込んでいる。



「イリスさん、入りますよー。具合はどうですかー?」
「オゥ、プリシラ……アイムベリーバッドステータス……」
「……まだもうしばらくかかりそうですね。マナジャム入りのおかゆ、置いときますね」
「変な食いモンだよナ、それ……」
「まあ、でも体調不良の原因ははっきりしていますからねー。これが一番手っ取り早いということで……お疲れ様でした。そして本当に助かりました」

 ――あの後、ギリギリの場面でエルフ王国と合流することができ、最大のサポートをもって一気に形勢を逆転し、そのまま戦争は私達の勝利で終わった。
 妖精王国は傷が深かったが、幸いにも死者は出なかったそうだ。途中、一人で敵の道を塞いだ巨大妖精も、今は無事に回復したらしい――のだが。

「……大明神よりも回復が遅い私ってのも、なっさけねえナァ……」
「……いつになく弱気ですね?」
「はっきり言って今が一番無防備だからナ……ヘイ、叩き出すなら今のうちダゼ?」
「まさか。そんな動きがあったら全力で阻止しますよ?」
「オイオーイ、私が侵略者だってこと忘れてんじゃないだろうナ?」
「言わなかったら忘れてたかもしれませんよ?」
「自分で言っておいて何だが、ユーや参謀サンが忘れるわけネェダロ……ったく」
「だとしてもそれはそれ、これはこれです。……今度の戦争で、強く実感したことがありましてね」
「何ダ?」
「それこそ、妖精王国存亡の危機に立たされたくらいだったのに――エルフ王国にはご存知の通り助けてもらいましたし、帝都のメニャーニャさんには迷惑をかけてしまったし……イリスさんだってこうして後遺症が残るくらい全力で戦ってくれましたし」



「――色々な助けがあったおかげで、妖精王国は今もこうして存在していられるんです」



 穏やかな顔で、しみじみと語る。
 随分と優しい表情をするものだ。

「受けた恩は計り知れないくらいですから、これからしっかり返していかなきゃいけません。これにはイリスさんも含まれてますからね?」
「お人好しメ……」
「あはは、お互い様でしょう?」
「ヤメロ、むず痒くなるから一緒にスンナ」

 ――自覚があるからあまり笑えない。
 乗っ取るつもりが、じわじわと心を乗っ取られ、そしてそれを悪くないと思う自分が居る。

「……恩返しというが、エルフ王国はこれを機会にふっかけてくるんじゃないのか?」
「まあ、高くつくって言ってましたしね。予告されてるならこちらも対処はしやすいですよ」
「一見下手に出てるように見えるが、いくらでも調整は利くってことか……こりゃ、こっちからのふっかけもあまり期待できネェナ……」
「イリスさんはそんなこと考える前にまずちゃんと体調治してくださいね?」
「グエー……」

 ――こうして素直に他人に世話を焼かれることなど、今まであっただろうか。
 恨まれ憎まれるようなことならいくらでも覚えはあるのだが。

「――これからはそういうことも増えていくかもしれませんね?」
「だから察するんじゃネーヨ、クソ。しかもニヤニヤしながら言いやがって」
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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