タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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「――次元ポータルの再開、ですか」
「はい。シノブさんはそのことについて、今はどうお考えですか?」
「……正直、今はまだ何とも。次元ポータル……いえ、相互ゲートを巡って、この世界にはいろいろな軋轢をもたらしてしまったので」
「まあ、ザンブラコの件や帝都防衛戦、タンポポ山の件……いろいろあったものね。とはいえ、私達としてはそれでも後押しをしたいからこうして話をしているわけだけど」
「ありがとうございます、雪乃さん、ヤエさん。もちろんあなたたちの想い……特に雪乃さんの夢についても、今は理解しているつもりです。ただ一方で、特に帝都に住む人々や、この世界の過去の出来事を思うと、慎重にならなければいけないと考えています」
「……その気持ちもわかります。私もこの世界に来て最初の頃は、知らない場所に一人ぼっちで、どうしていいかわからなくて――でも、そこでハグレ王国に出会えて、いつしかここで頑張ろうっていう気持ちになれて……シノブさんの用意してくれたゲートで元の世界に戻って家族や友達に会えて、改めてその気持ちを再確認することができたんです」
「私としては逆に、それまでの価値観を大きく揺るがす出来事になりましたけどね……ハグレという存在は不幸だと、この世界で理不尽に消耗させられるなんて可哀想だと、だからこの世界がどうなってでも帰るべき場所に帰らせてあげないと……そう思っていた」
「でも、すべてのハグレが必ずしもそうじゃなかったってことを、雪乃が証明した形になったわけだ?」
「……あの時は本当に『完敗』の二文字を実感しましたね」
「いや、そこまで卑屈にならなくてもいいでしょう? 雪乃も含めて利用者はいたわけだし、何より雪乃が頑張っているのは間違いなくあなたのおかげなんだから」
「ふふ、ありがとうございます。それに――慎重にとは言いましたが、雪乃さんのためにも、諦めるわけにはいきませんからね」
「――何やら興味深い話をしているようですが……」
「あ、メニャーニャさん!」
「ある意味ちょうど良いわね。帝都の話もちらっと出てたから無関係じゃないし」
「そうね、ちょっと時間いいかしら、メニャーニャ?」
「まあ、はい。……もっと重要な議題として取り扱うべきと思いますが、前交渉としてここで話しておくのも大事なことでしょうし」
「ずいぶん堅いわねー。肩凝らないの?」
「そんなこと気にしてたら務まりませんし」
「気にしたほうが良いと思うけど。あまり自分に無頓着だと、周りからなおのこと気にされてむず痒くなっちゃうわよ?」
「ぐっ……! や、ヤエさん、話が逸れてますよ!?」
「あ、強引に戻した」
「ごほんっ……! ええと、私を呼んだのは、次元ポータル再開について帝都がどういう反応をするか、ですよね!?」
「勢いで押しきろうとしているわね……ええ、まあ、そういうことなんだけど」
「……どうなんですか、メニャーニャさん?」
「……まあ、シノブさんが察しているとおり、あまり良いものではありませんね。防衛戦で脅かされ、次元ポータルで不安に駆られ、巨大魔物戦争に至っては世界の危機レベルにまで追い詰められ……拒否反応を示す人も少なくないですし、私としてもそれを無碍には出来ません」
「え、ここで巨大魔物戦争が出てくるんですか?」
「――巨大魔物も『召喚』された存在ですからね。南の世界樹やタンポポ山の遺跡のケースはイレギュラーですが、あの戦争ではマクスウェル率いる太古の森が意図的に呼び出していましたから」
「……さらに言うと前回の次元ポータルも、たくさんのゲートを用意してその中から世界を探してもらう、言わば『下手な鉄砲も数を撃てば当たる』という形式だったから。雪乃さんが家族に会えたのはあくまでも結果論ね。まあ、これは今後ゲートの技術を向上して解決していく話だから、やや別方向ではあるのだけど……」
「まったくの方向違いでもありませんね。現状では『繋がった先の世界から巨大魔物や何らかの災厄がもたらされる危険がある』という可能性を考慮しなければなりません。今のこの世界は、その不安に敏感になっているとも言えます」
「そう、ですか……」
「雪乃さん、落ち込ませてしまってごめんなさいね。でも、危険性を認識するのも必要なことだから」
「ああ、いえ、大丈夫です。さっきシノブさん、諦めないって言ってたから。私はその言葉を信じます」
「――出来ればシノブさんだけではなく、私も信じていただきたいところですがね」
「え?」
「……帝都側の人間としては、拒否反応について語らなければいけないところもありますが、実のところ、私個人も次元ポータル再開については前向きに検討したいと考えているんです」
「ずいぶん急展開じゃない? ……って、まあメニャーニャは最初からそう考えてたってことか」
「ええ。雪乃さんの件は間違いなく相互ゲートの好例ですし……あと、少しだけ心情を語らせていただくならば」
「何かしら?」
「タンポポ山でのハグレ追討作戦のことです。あの時の私は防衛戦で追い返したハグレを討つ任務を受けていました。その任務自体も、協会員のみんなやハグレ王国の皆さん、何よりエステル先輩の声で止められて、その後に魔物との大立ち回りがあって……」
「――その後は最深部のゲートをくぐっていく、生き残りのハグレたちを見送ったのよね?」
「……私はその人たちを討つためにここにいた、はずだったのに――その、ゲートをくぐっていく後姿を見た時、すごく、ほっとしたんですよね」
「激闘の後だったものねー……やっぱ、恨みつらみとかどうとかより、生きてるってことが何より大事なのよ」
「まさに、ですね……まあ、しばらく後になって、シノブさんの指摘からあの事態が私のせいだって判った時は、正直言って凹みましたが」
「……ごめんなさい……」
「ああ、いや。あの場面はローズマリーさんの怒りのほうがものすごかったので、意外と大したことはなかったんですけどね」
「ちょっと、フォローになってないわよ?」
「まあ、ここまでは。ですがその指摘がなければ、世界樹に関する仮説を立てられなかったことも事実ですので、最終的には感謝しているんですよ?」
「……その研究もしっかり進めていきたいところね。やることは多いわね」
「次元ポータル管理の上でも、世界樹は重要になってきますからね」
「――よろしくお願いします。私はそのあたりの専門的なことは何もわからないので、応援するだけになってしまいますけど」
「ああ、お気になさらず。雪乃さんは雪乃さんでしっかりと夢を追いかけていただければ。何より雪乃さんの件が私達からしても原動力ですから、それだけで貢献としては十分過ぎるほどなんですよ?」
「そう言っていただけると嬉しいです。何でしたら雪乃スポーツご利用の際はサービスしますよ?」
「ああ、気分転換として体を動かすのも悪くないかもしれませんね。検討します」
「そういえばメニャーニャ、あなた、いつの間にパイプ登りなんて技術を身につけたのかしら……密かにトレーニングでもしていたの?」
「時計塔の件ですか? いえ、あの時も言いましたが、慣れると結構いけます。というかその前の道中で蔦だって登ったじゃないですか」
「あまり説明になってないような……」
「あはは、うちではボルダリングについてもご案内しておりますので、ぜひご利用くださいませー♪」
「壁にいろんな形の突起をつけてそれを登っていくやつよね。蔦登りやパイプ登りにも応用できそうじゃない?」
「ヤエちゃんもいいダイエットになるよー?」
「その話はやめて!?」
「……で、何故に人払いをしたんですかね、ヤエさん」
「まあ、メインの話は終わったみたいだし、これから言うことは人前で言ったら余計に噛み付かれるかもしれない、と思ってね」
「……はあ。何が言いたいんです?」
「あなたって、実はデーリッチに負けないレベルのお人好しよね、メニャーニャ?」
「…………」
「耳、赤いぞー? でもって、否定しないの?」
「……否定の前に、どうしてそう思うんです?」
「まあいろいろと。さっきの、追討するはずだったハグレを見送ってほっとするところとか、その後なんだかんだでマーロウさんにいろいろと便宜を図ったりとか。次元ポータル再開の件にしたって、あなたの立場でなお前向きに考えてるってことは、帝都側の拒否反応に対応しようとしているってことだし」
「……過去の失敗は反省するべきですが、だからと言って発展の可能性を前に足を止めてしまうのは、科学者として恥ずべきことだと。そう考えているだけですよ」
「ま、それも本音でしょう。だけどあなたが『みんなが嫌がることを引き受ける』場面ってのは、もう何度も見てきたんだ。いくら取り繕ったってごまかせないレベルよ?」
「ごまかしてるつもりなんてないんですけどねぇ……私、そんなに出来た人間じゃないですし」
「意地張るわねぇ……そういえば次元ポータルのときのシノブもこんな感じだったっけ」
「そうなんですか?」
「一人でポータルを管理して、目に隈ができるくらい疲れた様子だから、何回か『手伝おうか』って声かけたけど、全部拒否されたわ。……全盛期の巨人と言えども、やっぱりひとりの人間だったってことね」
「……今なら私も手伝えるでしょうか」
「私や雪乃より断然知識があるんだから当然でしょうよ。ただ一方で、私も手伝おうと思えばシノブの手伝いはできるわよ。専門的なことじゃなくても、雑用だっていくらでもあるんだから」
「いや、そこは超能力を使わないんですか?」
「あはは、もちろん役に立つなら使うわよ? ま、一人で何とかしようとするんじゃなくて、ひとりひとりができることをしっかりやっていこうって話よ」
「……なるほど。大変参考になります」
「特にあなたやシノブは意識しといたほうがいいかもね。働きすぎは良くないわよ」
「……お気遣いありがとうございます。にしても、ヤエさん」
「なに?」
「あなたも大概ですよ」
「……んんー、仕返しかしら。ま、むしろこの場合、褒め言葉だけど」
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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