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タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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デーリッチ。
ラストバトルのシーン。

+ + + + + + + + + +

 ――シノブちゃんが、生きたいと願い。
 そして、無事に白いコアの向こう、彼女を待っている、エステルちゃん、メニャーニャちゃん、ローズマリーの元へと帰っていく。
 それを見送ってからロープを回収し、再びキーオブパンドラを手に取って、息をつく。

 ――まだ、終わっていない。

 単に、鍵が使えるようにするために、原因をなんとかしないといけないという意味でも、終わっていないと言えるけれど……シノブちゃんのパパさんからすれば、そんな単純な話じゃない。
 いや、彼自身はただひたすらに、私を殺してやりたいと、それだけを願っているだろうけれど――私は、そんなパパさんと、はっきりとした決着をつけなければいけない。
 その義務と共に、私はこれから、ひとつの願いを果たしに行く。



 シノブちゃんが作った世界が、夕暮れを迎える。
 青かった空は、現実よりもあっという間のスピードで、どんどん赤く染まっていく。夜の闇に向かって走り続けるみたいに。
 この世界が消えるまで、そんなに時間はないけれど――あるいは、今すぐに消えずにいるのは、もう一人の主であるパパさんの執念だろうか。なんとしてでも私を殺すために。



 決着の場所。
 私はそこでじっと、パパさんが現れるのを待っていた。
 やがて空が完全に闇に染まる――いや、こんな世界でも星々は輝いているのが見える。元の世界と変わらないような夜になって、パパさんは姿を見せた。

 満身創痍。
 ついさっきの激闘の傷も癒えぬまま――そればかりか放っておいても自分は消えうせるだろう、そんな体を引きずって。それでもパパさんは、殺意をほとばしらせて、私の前に立っていた。

 もはや自分には何もない、ただあるのは私――デーリッチへの復讐心。
 そう口にし、



「おまえはここでしねっ!!」



 パパさんは私に猛然と突進し、爪を振り下ろした。

 避けない。
 その場から動かない。
 踏ん張ろうと思ったけど、最初の爪の一撃であっさりと私の体は吹き飛ばされ。
 浮いている最中も、パパさんの爪が容赦なく、幾度も私を切り刻んだ。



「むぎゅう――!」



 白い雲の上に、惨めに転がる私の体。



「……なんだそれは。あまりにも、あっけないじゃないか」



 失望の色を隠せないような――こんなちっぽけな奴が自分のすべてを奪ったのか、と静かな怒りを滲ませた声が、私の背中越しに響いてくる。

 声は聞こえるけれど。
 目が開かない。
 体が動かない。
 とても痛い。

 異世界で、スカイドラゴンにとどめを刺される直前の私を、思い出す。

 だけど、あの時ローズマリーが助けにきてくれたから。
 その前も、そこから後も、いろんな人が私を助けてくれたから。

 だから、今、私はここにいる。



 パパさんが最後の一撃を振り下ろそうとする、その直前。
 私の体を、光が包む。
 瀕死だった私の体の傷は癒え、再び立ち上がってパパさんに向き直る。

 戸惑い、後ずさるパパさんに向かって、宣言する。

 私は一人では戦わない。
 この場所に立つまでに私を助けてくれたみんなと一緒に、戦う。



「どちらが挑戦者なのか――その身をもって知るといいでちっ!!」






「ぐ……ごはっ……」

 パパさんが血を吐く。全身、至るところから血を流し、皮膚はところどころ黒焦げになり、あるいは痛々しい凍傷を負い。ズタズタのボロボロな、痛々しい姿。
 それでも、四本の足を震えさせながら、必死に立っている。

「……わかった……もう、降参だ……君が王というのは本当なのだな……この状況を見れば、認めるしかない……」

 弱々しく、諦観に満ちた言葉。
 私の後ろには、私を支えてくれたハグレ王国民みんなのイメージが勢ぞろいしている。全員が私を守り、みんなで力を合わせ、目の前のパパさんを全力で、容赦なく叩きのめした。

 だけど――

「デーリッチは、パパさんを格好悪いとは思わん」

「負けたけど、最後まで必死に戦っていた。今なおこうして、立っている」

 パパさんの、意地。私への殺意とは別の何か。
 それが、私達ハグレ王国の無慈悲な総攻撃を持ってしてなお、パパさんを支えているもの。
 今ここにいるみんなは、私が具現化させたものだけれど。



 ――ひとりだけ、ここに居ない人がいる。
 なぜならそのひとりは私ではなく、パパさんの中に――いや、

 たった今、パパさんの後ろに現れている。



「そうか……このぬくもりは、この鼓動は……私が一番よく知るあいつの……」

「ありがとう、デーリッチ。君は、この気持ちを伝えたかったんだな……」



 その言葉が紡がれた瞬間。
 パパさんは黒い獣の姿から、人間の姿――シノブちゃんのパパとしての姿に戻る。
 その後ろには、娘の……シノブちゃん本人の姿もある。

 そのシノブちゃんが微笑む。



(……私は少し、パパに付き添っていきます)

(この人を送り届けてから、それから、あなたの中に向かいます)

(この人を……パパを救ってくれて、本当にありがとう、デーリッチさん)

(もう少ししたら――王国で会いましょう)



「……待たせたね、シノブ。行こうか、シノブ。父さんはね、今、とっても嬉しいんだ」

「こんな気持ちは――君が生まれてきてくれた時以来だよ――」



 二人のイメージが、天へと昇っていく。
 私はそれを見送ったあと、振り返り、王国のみんなに向かって、笑う。
 みんなも私に笑顔を向けてくれて、ゆっくりと消えていく――私の中に、還っていく。

 この世界も、本当にもう、消えようとしている。
 けれど、溶かしていくのは夜の闇ではない、暖かな朝日。

 その朝日の光を目に焼き付けながら、私はキーオブパンドラを掲げた。
 ここまで私を連れてきてくれたみんなのもとに、帰るために。



 ひとつの終わり、それは新たな始まり。
 その始まりの線の上に立つために――みんな、待っていてください。
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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