イリス、メニャーニャ。
ただいちゃつく話が書きたかっただけ。イリメニャがもっと広まればいいとおもいます。

　――ぎゅむぎゅむ。



「…………」
「相変わらず抱き心地は良いんだが、とうとうノーリアクションになっちまったな、ユー……」
「さすがに慣れるというものです。レポートを書くのに支障にならない抱き着き方を覚えていただいたおかげでもありますので」
「ハハ、まあ褒め言葉として受け取っておくカナ。にしても、もうちょっと愛想クレヨー、めにゃーにゃー」
「普段カタカナ訛りなのにわざわざひらがなで呼ばないでくれませんかね。そもそもレポート中に愛想なんて期待しないでください」
「レポート中じゃなかったら振りまいてクレルノカー？」
「……自分で言っておいて何ですけど、それもどうでしょうか。あまり王国の中で愛想を振りまいた記憶がありません」
「アー、マァ、素の姿で振る舞ってるってコトカ？」
「かもしれませんね」
「フフン、ソレならソレで、無愛想が愛想ってコトにしとくカナ？」
「なんですかそれ……」



「に、しても。話は全然変わるんだケド」
「……何ですか？」
「ユーの抱き心地は、それはそれで良いモンだケド……正直ちょっと痩せすぎジャネェカ？」
「はあ？　……胸が無くて悪かったですね」
「拗ねるなッテ。いや、こうやって抱き着いてると、細さを実感しちまうモンでナ」
「……からかわれでもしない限りは、あまり気にしたことはありませんが」
「ちょっとは気にしたほうが良いんジャネェカ？　人間の十六歳っつったら、まだ成長期じゃなかったカ？　ちゃんとしたモン食ってるカ？」
「あなたがそんなみみっちい心配をしてどうするんですか、イリス様。……でも、ちゃんとしたものを食べてるかどうかと訊かれると、少し言葉に詰まりますね」
「やっぱり思い当たる節ってあるのカヨ……」
「――帝都の軍の指揮官として戦争に参加していた時は、栄養なんてどうでもいい、とにかく腹が膨れればいいって考えで、粗食で済ませていたことも多々ありますので」
「アー、ゼンマイ山のオニドリゼンマイについての話でちらっと言ってたナ、ソレ……」
「まあ、ちゃんと栄養を摂らなかったのだから、この貧相な体も自業自得なのかもしれませんね？」
「自虐ヤメロヨ。栄養が摂れなかった云々って、どっちかってーと外的要因ダロ。優秀なオマエに帝都がおんぶに抱っこだったせいジャネェノ？」
「――あまり帝都を悪く言わないでもらえますかね。なんだかんだで守りたい場所でもありますので」
「……ソーリー。でもやっぱちゃんと食えヨ。ハンバーガーでもゴチソウしてヤロウカ？」
「それもどうなんでしょうか……」
「美味さならデーリッチとヅッチーが実証済みダゼ？」
「けど、女子として出るべきでない場所が出そうな気がするんですが」
「気にスンナヨー。何なら食べたあと運動でもすりゃいいダロ。インドアだけじゃなくてアウトドアも取り入れてみろヨー」
「悪魔なのにごくごく普通の健康法を薦めてきますね？」
「ンー、メニャーニャ。せっかくなんだから、二人っきりの時は悪魔だ人間だって括りは置いといてクレヨー」
「……では、主と従者ですか？」
「でもネェヨ。ここにいるのはただのイリスとただのメニャーニャ、ってナ。そういうだらけた関係も心地良いって思ってる」
「……ただのイリス、って言葉にものすごく違和感がありますが。存在からして只者でも何でもないじゃないですか」
「――只者になりたい気分にもなる、ってコトサ。ユーだって普段は随分と特別な存在ダロ？」
「……私も人のことは言えませんでしたね……」
「ユーシー。ま、たまには特別でも何でもない存在になったってイイジャネェカ。ガス抜きシヨウゼ？」
「……イリス様もガス抜きしたくなるんですか？」
「イエス。私だってこう見えていろいろ苦労してるんダゼー？」
「何故でしょう、全然説得力を感じません」
「……ま、逆にユーが露骨に苦労人だから、余計に私が苦労してるようには見えないのかもナ？」
「嫌味ですかね」
「オイオーイ、だって実際、いろんな人間から心配されたり気遣われたりしてるダロ？　私とは正反対ダヨナァ」
「……そう言われると、冥王姫様からさえも気を遣われてるように聞こえてくるあたり、そんなに私は苦労人じみてるんでしょうか……」
「だからちょっとはほぐしてけヨ。いくらでも付き合うカラ」
「……どうもです」
「ドーイタシマシテ、ってナ」