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タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。 内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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メインはイリス、福ちゃん。それ以外にも登場人物多め。
構想自体は魔王タワー編公開直前あたりからありましたが、Ver1.05cにてイリス様の浴衣姿が見られたり、水着イラストでは鎌に腰掛けて浮遊している姿が見られたりと、構想を補完してくれる要素がありましたので、今回ようやく書けました。
『マオちゃんのハグレ王国らんだむ探検ツアー』と同じく、pixivでは4ページ構成ですがブログではひとつの記事で公開とさせていただきます。

+ + + + + + + + + +

◆ハグレ大祭り・射的屋イリス◆



「ヘイラッシャーイ……ン、珍しいお客さんダナ?」
「こんにちは、イリスさん。繁盛してますか?」
「ボチボチ……と言いたいが、大赤字ダゼー。イェー」
「からっぽな笑顔じゃねぇか……ま、ざまあみやがれってとこだな」
「ナンダ、天狗ボーイもいるのかヨ。こんな時まで福の神のお付きとは、ご苦労なこったダゼ」
「ほっとけ。てか、大赤字なのになんで店が続いてるんだよ」
「めいかいQの売上げから赤字補填したり、他の店舗からも援助してもらったりサ。楽しんでくれてる客がいるから、やめたくネェンダヨ」
「悪魔らしからぬ理由ですね?」
「……まあ、楽しんでくれてる客の中に、毎回とんでもない記録を出していくのが約二名いるんだけどサ。ついつい応援しちまうんダ、キングとクイーンを」
「これ、スコア表か? ……ベスト5が全部1000点台になってるけど」
「アー、ちなみに得点ごとにランクがあるんだけど、620点からが最高ランクのSSSナ?」
「……マジかよ。畜生、なんか今、色々と気持ちが判っちまった」
「ハハ、サンキュー。せっかくだから撃ってくカイ? 一回300G、説明書はこっちにあるゼー」
「クラマ君、どうですか?」
「いや、これ俺に拒否権あるんですか?」
「ンー、正直、福の神にプレイされるのは怖いナァ。運の良さがどう作用するか読めネェし」
「おい、店主が客を選ぶなよ……はあ、しょうがねぇなあ。じゃあ、一回だけ」
「マイドー。グッドラック」



「それにしてもイリスさん、和装もお美しいですね?」
「ナンダイ突然。ま、アリガトヨ」
「いえいえ。絶妙な着崩し具合と言いますか、和国の風俗の雰囲気がとても似合いそうです」
「……花魁、って言うんだっけカナ。その、和国の風俗を担う女たちってサ」
「ええ。今のイリスさんがその世界に居てもまったく違和感がないというか、むしろ頂点に立ってそちらの世界をまとめていそうです」
「ハハ、随分褒めてくれるジャネェカ。……和国とはまた違うけど、ユーの治める次元の塔の天界も、和の雰囲気が強いよナ?」
「そうですね、クラマ君にしてもその名の通り鞍馬天狗という和の神ですし。……実は私自身は和国由来の神ではないんですけどね」
「マオが言ってたナ。あれから私も少し調べてみたが……大黒天が福の神、シヴァ神が禍神、そしてこれら二つは同一の神である。この伝承は確かに和国とは別の地域で伝えられているようダナ」
「まあ、私は最初から表裏一体の存在だったというわけではありませんけどね」
「御影星と一緒に禍の双子神として存在していたが、後から修行をして福の神になったんだっけカナ?」
「後からというか、今もまだ修行中の身ではありますが。天界においても、福の神としては十分に認められているとは言えませんからね」
「禍神としてのユーに恐れをなしてるヤツもちらほらと居るみたいだしナ……とはいえ、ユーの過去は無かったことにしちゃあいけない」
「ええ、それもわかっているつもりです。……以前はお話に付き合ってくれてありがとうございました、イリスさん」
「ドーイタシマシテ――忘れろとは言わないが、御影星との戦いで信念を貫いたのは、見事だったと言っておくゼ?」
「あら、イリスさんはその戦いには参加されていないはずですが、そんなお言葉を頂いていいんですか?」

「――繰り返すが、忘れろとは言わん。だが、ここ一番で安易に過去の力に頼らず、仲間と力を合わせて乗り越えたってのは、これからのオマエにとって確かな力になるだろうサ。ちょうどそこの天狗ボーイだって、色々思うところはあるんだろうが、オマエのことを確かに認めている。だからこそ悪魔の私がオマエと仲良くしているのを気に食わないんだろうしナ」

「――くそったれ、最後の最後で気が散ったじゃねぇかよ……」
「オー、天狗ボーイ。成果はドウデスカー?」
「426点……あとちょっとでコジラ撃破ってところで急に名前呼ぶんじゃねーよ!」
「ハハ、惜しかったデスネー。けど、初挑戦でそのスコアは、かなり見所がアリマスネー? あ、コレ景品セットデース」
「……あら? あららら? メニャーニャパックとエステルパックとコジラぬいぐるみが全部入ってますわよ?」
「……いや、いくらなんでもこれ、豪勢すぎねえか?」
「偶然デース。もしくは福の神のおかげだとでも思えばいいサ」
「ふふ、それならありがたく頂きましょうか」
「あー、ウェイトプリーズ。偶然と言っといて何だが、その代わり」
「はい?」



「オマエと私で、天界デートと行かないカ?」



「……、また随分と唐突なお誘いですね」
「何企んでやがんだクソ悪魔」
「ヒデェ言い様ダナァ。ま、確かに唐突な声かけにはなったが、きっかけはいろいろとあるものサ。着物姿を褒めてくれたり和国の話をしてくれたり、あと、いつぞやの夜は月見団子を奢ってくれたダロ?」
「理由だけ聞けばもっともらしいが、うさんくせえ……」
「ま、ボーイ。気になるならユーもついてくりゃいいサ。どのみち次元の塔に飛ぶんだからデーリッチとローズマリーも同伴だし、あとメニャーニャとマリオンあたりも誘っていいかもナ」
「最後の二人は宇宙戦艦の件ですよね?」
「イエス。何にしろ大所帯になるから、私が福の神と二人っきりでどうこうってことにはならないサ」
「……ちっ、しょうがねえな。そこまで譲歩されるんだったら、こっちも折れないわけにはいかねえな」
「なんならユーも、ペインターガールを連れてデートと洒落込んだらどうダ?」
「ポッコのことだよな!? 言っとくけど俺とアイツはそういう関係じゃねぇし、まして俺はロリコンでもねぇぞ!?」
「ククク、そうやってムキになられるとからかい甲斐があるゼー。だいたい、バレンタインとホワイトデーでそれぞれやりとりがあったって言うから、勘繰らないほうがおかしいってもんダ。あと、ロリコン疑惑はそれこそムキにならずに堂々と反論するのをオススメするゼー」
「うるせえよ!? 悪魔のくせにもっともらしいこと言いやがって!?」
「まあまあ、クラマ君、落ち着きなさいな。イリスさん、デートのお約束、承りました」
「サンキューベリーマッチ。じゃ、近々準備しておくゼー」






◆福ちゃんのお屋敷→大江戸ちゅーちゅー屋敷◆



「――ハロー。待たせたカナー?」
「ああ、イリスさん……今日は着崩されてはいないのですね?」
「今日は天界散策だからナー。射的屋のあの格好は客引きの目的もあるけど、今日は違うしサ」
「ふふ、きちんとした着付け姿もお似合いですよ?」
「サンキュー。フフン、両手に花ダナ、天狗ボーイ?」
「むきー! この性悪女、クラマ君に手を出したらただじゃおかないけんねー!」
「ストレートすぎる発言やめろよ!?」
「ククク、ゴチソウサマダゼー。……ま、大事にはしろヨ? 慕われてるうちが華ダゼ?」
「漢字まで変えて真面目トーンで言うんじゃねえよ……」
「ハハ。じゃ、ダブルデートと洒落込もうカ。良いカナ、福の神サン?」
「ええ、行きましょうか」





「おう、いらっしゃい……って、なんだか見慣れない姿があるなあ?」
「こんにちは、でんでこちゃん」
「ハロー。マイネームイズ・イリス。冥界から来マシタデース」
「冥界ぃ? ここと正反対の場所じゃないか」
「今はイリスさんも私と同じくハグレ王国に所属しているの。その縁で今日は天界を案内するデートをしているのよ」
「はあ、なるほど。それでうちに寄っていってくれたわけか」
「今日はちょうどでんでこちゃんも屋敷に戻っていたのね?」
「おうよ、あんたのおかげでちゅーちゅー印のお弁当も売上が回復してきたし、おかげで忙しくてさ。あ、何か注文あるかい?」
「サンキュー。ちょうど腹ごしらえで寄らせてもらいマシター。私は鮭おむすびとかしわ餅を二つずつでお願いシマース」
「では私は鮭弁当をひとつ」
「りょうかーい。鮭と言やぁ、そっちの天狗の坊ちゃんとこには世話になってるぜー」
「ん、俺か?」
「ああ、そういえばこちらの鮭は風祭で獲れたものを使っているとか」
「まだまだ若いけど働き者って評判だぜー。今日はそっちの子も年の差カップルデートかい?」
「はあ、行く先行く先ずっと言われるなあ……こっちはお守りで大変だってのに」
「あんまり意地張りすぎても疲れるだろう? 何か食べてくかい?」
「あ、クラマくんとこの鮭入り弁当、ポッコも食べたいけんね!」
「あーもう、わかったわかった。でんでこさん、ポッコに鮭弁当とかしわ餅、俺はおむすび二つでお願いします」
「はいよ、ちょっと待ってな。包みにして用意するから、風情のある場所で食べるといいぜー」
「ナイスアドバイス。ま、後で風情のある場所、探しに歩くとしますかネェ」
「そうなると、やっぱり風祭神社のあたりかしら?」
「あー! 桜が満開で綺麗な場所、ポッコあそこ行きたーい!」
「おい、もうちょっと落ち着けっての……じゃあ、弁当もらったら向かいますかね」






◆風祭神社◆



「まあ、綺麗な場所とは聞いていたが、実際に目にすると心まで洗われるよナァ」
「おい、悪魔らしさが微塵もない台詞言ってんじゃねえよ」
「ナンダヨー、正直な感想言ってるだけダロ? 良い土地、良い家ジャネェカ」
「……まあ、今ここまで綺麗なのは、福の神様が復興してくれたおかげだけどな」
「ワット?」
「……天界が次元の塔に飛ばされた時は家屋等の被害も大きくてですね。このあたりも神社の灯篭が壊れたり、桜の花びらが全部散ってしまったり、無残な姿になっていたんですよ」
「それでもって神社の中も土蜘蛛一派の蜘蛛が暴れまわっていたし……まあ、今は事態が収集して、土蜘蛛一派も福の神様の傘下に入って、無事に落ち着きましたが」



「何じゃ、麿を呼んだか?」



「うわぁ!?」
「いや、一声かけただけでそこまで驚かんでもよいではないか……」
「マロフツさん、こちらにいらっしゃるのは珍しいですね?」
「先程そなたらも話題に出しておったが、こちらの風景が綺麗なのでな。時折見物させてもらっておるよ」
「……あんたのイメージとは対極じゃねぇの?」
「まあ、麿たちは土の眷属ゆえ、基本的には暗い場所を好むが――この場所は和の美しさを象徴しておるでな。そういったものを尊ぶ心も、大事にしたいぞなもし」
「オー、ミートゥー」
「時に、そちらのお嬢さんは見慣れぬのじゃが……なにやら邪気を感じるぞなもし?」
「フフン、分かる人には分かるんデスネー。冥王姫やってマース、イリスと言いマース」
「冥王姫とな!?」
「ああ、今は私たちと同じくハグレ王国に所属しておられるのですよ。今日はデートをしているところです」
「なんと、ハグレ王国に……むむむ、地竜のみならず冥界の王の娘まで所属しているとは、なんと玉石混交の王国よ……」
「ン、なんでそこで地竜の名前が出るんダ?」
「ああ、イリスさんはご存知ありませんでしたか?」
「むう、麿から説明するとしようか。ハグレ王国とは一戦交えたのじゃが、地竜には麿の必殺技たる『操り糸』が一切通じなかったのじゃよ」
「アー、ナルホド。アイツ小さくても六魔の一柱だからナァ。ユーからすると面白くないかもしれないが、土蜘蛛よりも上位の存在だと思い知らされたってワケか」
「しかしまあ、結果的には負けてよかったと思っておるよ。御影星に挑むのとは違って、過剰に争わずに済んだからの……フクの気質の変化も見て取ることができたし」
「ええと、そういえばフクって御影星も呼んでたけど、福の神様が福の神を名乗る前からの本名なんですかね?」
「ええ……ある意味では福の神を名乗るにあたって、一番のきっかけだったかもしれないわ」
「――似合ってるゼ、ユー」
「あら、随分とストレートですね? ……でも、そういえばイリスさんはこうした事情を知らなくても、私が元禍神だと見抜いておられましたね」
「まあ、それも踏まえた上で言ってるつもりだけどナ?」
「ふふ、ありがとうございます」



「……天狗の坊ちゃん、イライラしておるぞなもし?」
「ほっといてください」
「大丈夫、クラマ君にはポッコがいるけんね!」
「ほほ、かわいらしい組み合わせであるな」
「茶化さないでください……」






◆大槌洞窟・深部◆



「……結局、この大穴は空きっぱなしナンダナ?」
「将来的には閉じたほうが良いかと思いますが、今はあちらの宇宙戦艦の処遇についても決めかねているところですからね……」
「というかコレ、閉じれるのカ?」
「――御影星が風と土の秘伝の巻物を使い、儀式を行って空けた穴ですから。同じ禍神である私なら、閉じることも不可能ではない、と思います。あくまでも今は可能性に留まる話ですが」
「……皮肉なモンダナ。だがまあ、その時が来たからって止めはシネェヨ。今のオマエが禍神の力を使うとしても、それはあくまで世のため人のため福をもたらすため……ダロウ?」
「……ありがとうございます」
「ハハ、礼を言うほどのことじゃネェダロ。……それにしても……」
「はい? ……随分と熱心に見つめられますね?」
「イヤァ、吸い込まれそうダナァと思ってサ――こんな風に」



「……え、ええっ!? イリスさん!? ク、クラマ君!!」
「合点です!! 気でも触れたかこのクソ悪魔ッ――!!」



「どっこい、バッチリ正気ダヨー」



「………………」
「………………おい、こら、冗談にしちゃ質が悪すぎるだろが………………」
「ククク、ナイスサプライズ。たまんねェナァ、そういう表情を見るのは」
「……鎌に腰掛けて浮遊されておられますね……」
「ま、天狗ボーイみたいな自由自在性は無いけどサ。こういう使い方もあるんダゼ?」



「……福の神様のホームグラウンドなんですから、悪戯は程々にしていただきたいですね、イリスさん」



「オー、メニャーニャ。ユーまで福の神の側に付かれちゃ、敵わネェナー」
「反省の色が見られませんね、まったく……福の神様、クラマさん、大丈夫ですか?」
「正直言って蹴り飛ばしたいです」
「許可します」
「オイコラ――ア、イヤ、スイマセンデシタ、メニャーニャサマ」
「イリスさん、随分と下手に出てますわね……」
「勘弁してくれヨー。ぶっちゃけ一回で充分だし、もうやらネェヨー」
「その一回も程度によっては取り返しがつきませんので、反省はしていただかないと」
「あ、ホントスイマセンデシタ……ヤベェ、コレめちゃくちゃ怒ってんジャン……」
「下手に出すぎだろ、お前も……くそ、毒気抜かれちまった」
「いいんですか?」
「あー、もういいよ。許してやってくれ」
「……クラマ君もクラマ君で丸くなりましたわね」



「アー、ンー。で、宇宙戦艦の調査はどんなもんナンダ?」
「――中の設備は生きていますが、戦艦としてはもう使えませんね。まあ、それはずっと前からわかっていたことですが」
「火力設備は破壊してしまいましたし、装甲も一部が剥がされていますものね……」
「――とはいえ、その装甲はドリントルの宇宙船の修理に役立ったらしいし、そもそも宇宙戦艦がこうなったことで天界を脅かさずに済んだからな。マリオンはもう気にしていないぞ?」
「あ、マリオン。けど、お前も御影星の陰謀に巻き込まれた被害者だろ?」
「そうなんだが、それはどうでもいいことだ。ハグレ王国に出会えたのは素晴らしいことだと思っているからな」
「ふふ、確かに、こちらにとっても素晴らしいことですわね」
「私としても、マリオンさんからもたらされたテクノロジーに触れられるのは、大変有意義なことですしね」
「――テクノロジーっていうか、中の設備はどうにかして持って帰れネェもんカナ?」
「マルボリチキンのステーキ、培養品だったということですけど、とても美味しかったですわ」
「飲食業界に革命が起きそうですが、既存の団体からの反発の大きさが予想されますね」
「アー……農業系からすると死活問題にもなりかねないもんナァ。ま、それについてはここでダラダラ話してたって結論は出ないダロウ?」
「そうですね。技術を持って帰ってから、世界規模で議論をする話になります」
「――ここに放置したままでは勿体ないから、なんとか活かしてもらえると、マリオンも嬉しいのだが」
「ありがとうございます。こちらにとっても発展のチャンスですし、お気持ちには応えたいところですね」



「……思ったんだけど、ユーはやっぱり天才だな、メニャーニャ」
「はあ? いきなり何ですか、イリスさん」
「いや、オマエの世界って、見たところ、こうした機械文明は全然発達してない様子だ。大昔にブリギットみたいな魔導ゴーレムや例の魔導兵器みたいなのを作り出したヤツラが存在してたみたいだが、今はその技術も失われたと言われている」
「……そこへ来て、メニャーニャさんは魔導兵器の復元のみならず、マリオンちゃんのメンテナンスやこの宇宙戦艦の仕組みについても理解があると来ていますものね」
「あー、要するに『科学』の知識に関しちゃ、あの世界においてメニャーニャさんがズバ抜けてるってことっすかね。なるほど、確かに天才だ」
「……いや、ちょっと。三人揃って褒め殺しに来ないでくださいよ……!?」
「ヤー、殺すつもりじゃなく普通に褒めてるんだがナ? シノブでさえからくりは専門外だって言ってたのもあるから、なおのこと実感してるわけで」
「……メニャーニャがいなくなったら、誰がマリオンのメンテナンスをしてくれるんだ? マリオンはとても困ってしまうぞ?」
「う、うぐぐぐ……」
「……アー、これ以上はやめとこうか。オーバーヒートされちゃかなわネェ」
「そうですわね」
「そっすね」
「ニヤニヤもやめてほしいんですけど!?」






◆谷崎村・御影星一派拠点最深部◆



「……コイツが、御影星だったもの、か」
「今は、彼女自身の意思によって、封印状態にあります」
「死んだわけじゃないんダナ……いつかまた目覚める可能性もある、と」
「いつか、というのが果たしていつなのか。私が生きている間か、それとも人間の寿命を遥かに超えた数百年後か……どうしたものでしょうね?」
「マア、私や福の神なんかは備えることもできるだろうが、そんな長寿なヤツラはなかなか居ないもんナァ……あ、オイ、福の神、今のはスルーしろ、プリーズ」
「ふふ、わかっていますわ――ハグレ王国の皆さんには力を貸していただいて感謝していますが、やはり御影星のことは神々の問題ですからね」
「そうは言いますが、人間界に脅威をもたらす可能性も大いにあるでしょうからね。こちらとしても対策を考えておくに越したことはありませんので、協力できることがありましたら遠慮なくお申し付けください」
「冥界としても同じく、ナ」
「……ありがとうございます」



「……にしてもこいつ、改心する気なんてさらっさらなかったみたいなのが腹立つんだよな。そんなのは死んだって嫌だ、なんてほざきやがって」
「だからこそ、目覚めれば再び災禍をもたらすというのがわかっていて、対策の傾向がわかりやすいといえばわかりやすいですが」
「そうですけど……対策したから抑えきれるかというと。こいつ、禍神として振る舞うことに一切の遠慮がありませんからね」
「――ンー、禍神であることに強いプライドを持ってんのかもしれないナ、コイツは」
「はあ? なんでまた……」
「なんでも何も、もともとそういう存在として生まれて、そういう存在として生きてきたわけダロ。だからこそ、同じ存在でありながら自分の力を忌み嫌う節があった福の神の態度が許せなかった――私にはわかるような気がするゼ?」
「……御影星の肩を持つ気かよ、クソ悪魔」
「そりゃあ、私は悪魔で、あらゆる生き物の業を背負いし冥王、その娘なんだからナ――御影星なんかは、私から見りゃいっそ清々しいくらいの業深き存在ってことサ」
「……その割には、ハグレ王国に来てからは随分と丸くなられたようですね、イリス様?」
「は? メニャーニャさん、なんで様付けなんですか?」
「ハッ、天狗ボーイ、ユーにはまだ早いゼ?」
「なんだとっ!?」
「クラマさん、そのあたりの事情については私としてもノーコメントとさせていただきます」
「うっぐ……駄目なんすか……」
「ハハ、マアそのうちナ。……清々しいと言えばもうひとつ、ただ単に負け惜しみから自分で自分を封印したってわけじゃないんだよな、コイツ」
「――ええ。自分がどうなろうと儀式は既に成っていたのだと。この時点でもう、宇宙へと続く大穴が空いていたようですね」
「そこからやってきたマリオンの宇宙戦艦が、本来であれば天界に災厄をもたらすはずだったと」
「……食い止められてよかったです。マリオンさんも悪い人ではなかったし……星の守護者としてのプライドを守ることができたのは、本当に……」
「――星の守護者のプライド、か。自分の存在意義に強い信念を持つってところは、御影星とは共通するトコロダナ」
「それ、マリオンさんの前では言わないでくださいよ? 御影星とは一緒にしてほしくないみたいですし」
「アー……スロット回されそうダナァ。オーケー、アイシー」
「……強い信念っつったけど、結局やってることは大多数にとって迷惑にしかならないことじゃねえか。そんなの認められねえし、許されねえ」
「そりゃそうダロナ。だからこそ、そこの福の神は福の力だけで対抗してみせた――御影星から見りゃ中途半端と思っただろうが、そんなことはナイ。福の神もまた信念を貫いてみせた、そういうことにしとけヨ」
「お前はどうなんだよ。信念なんてあるのか?」
「私か? 正直言ってブレブレダヨ」
「おいぃ!!?」
「だって侵略しようとしたのに返り討ちに遭って、それどころか悪魔なのにも関わらず、自覚できちまうぐらいお人好しに染まっちまってるんダゼ?」
「女の子の風船を普通に救助したりもしてましたしね」
「あら、知りませんでしたわ。それはちょっと見てみたかったかも」
「ヤメテクレ、ケツが痒くなっちまうゼー……ま、強いて言うなら私の信念ってのは『楽しいことが第一』カナ。そのためなら悪いことも良いことも何でもアリ、ってナ」
「いや、悪いことはやめろよ!?」
「約束デキマセーン。なんなら力づくで止めてみるカ?」
「やんのかこら!?」
「イリス様?」
「クラマ君?」
「うぐ……」
「――ヒュウ♪ ワカリマシタヨー。ケンカハヨクナイデスネー」
「お前が言うべき台詞じゃねえぇ……」






◆福ちゃんのお屋敷◆



「ふひぃ~……もう飲めないでちぃ……」
「にょほほほ……世界が流れていくですぅ~……」
「ああもう、デーリッチもポッコちゃんも、食べ過ぎの飲み過ぎだよ……すいません、フェイフェイさん」
「ああ、いえ、お気になさらず。むしろ喜んでいただけて嬉しいですわ。それにサクラさんも、自分のところのお団子をたくさん振る舞えて、喜んでいらっしゃいましたし」
「はあ、それなら良いんですが……」



「オイオーイ、こっちでもややぽちゃになっちまってネェカー?」
「ただいま戻りましたわ、ローズマリーさん」
「あ、みんな、おかえり」
「なんだよコレ……酒でも飲んだのか?」
「まあ、甘酒なんだけど……すっかり酔っ払ってしまって」
「うーん、落ち着くまでしばらく待ったほうがよさそうですかね? キーオブパンドラが使えるのはデーリッチさんだけですし」
「まあ、無理にパンドラに頼らなくても、次元の塔の最上階の魔法陣で脱出する手もあるダロ?」
「そうですね、まあ時間はありますから、もう少しゆっくりしていっても構いませんわよ?」
「ありがとう、福ちゃん。ちょっとお言葉に甘えさせてもらおうかな……」
「……酔っ払うというのは随分と気持ちがよさそうだな。マリオンにはわからないが」
「あれ、マリオンさんは酔えないんですか?」
「どうだろうか。食べ物の味は分かるんだが、今のデーリッチやポッコちゃんみたいな状態になったことがない」
「そもそもユー、アンドロイドなのにどうやって食べ物を消化してるんダヨ……」
「あー、イリスさん、その話は突き詰めていくとなかなか下品なことになりそうなので、やめておいたほうが」
「……イエス。今のナシ」
「それで、散策はもういいのかい?」
「アー、楽しませてもらったヨ。天界は綺麗なトコロダナ」
「ふふ、イリスさんから太鼓判を頂けるとは、案内した甲斐がありますわ♪」
「ま、お返しに次は冥界を案内してヤロウカ? 今度は純粋にハンバーガーでのウェルカムパーティーでもやろうカナ?」
「あ、でも、うーん……私はちょっと食は控え目にいきたいんですけどね……」
「そういえば王国大学でヤエちゃんと一緒にダイエット研究に参加してたね……」
「ンー、むちむちポークもそうだが、別に見た目は太ってるとまでは行ってネェゾ、ユー?」
「あ、あら?」
「むしろ普段のあの格好、誘ってやがんのカヨって感じダゼ。あ、ちなみに私は意図的なトコロもあるケドナ?」
「おいこら、手ぇ出したら承知しねえぞクソ悪魔!?」
「クク、ボーイ。ある意味ユーがどこまで我慢できるかってのも、見ものダヨナァ?」
「どーいう意味だよっ!?」
「なんだか教育に悪い会話が繰り広げられている気がする……」
「まあ、幸いデーリッチさんとポッコさんには聞こえていないみたいですし、今は好きにやらせてあげましょうよ。何よりイリスさんには良いガス抜きです」
「はあ、まあ確かに……我々も適当にくつろがせてもらいましょうか」
「ヘーイ、お土産お団子セット一丁プリーズ」
「ご注文ですかー!? あざーっす! すぐに用意しまーす!!」
「……イリスさん、甘いのは大丈夫なんですか? 激辛派じゃありませんでしたっけ?」
「イヤ、メニャーニャ。そりゃ私は激辛が好きだが、激辛以外受け付けないワケジャネェゾ? 天界の団子って、ほどよくもちもちしててちょうどいい甘さで、ウメェンダヨ」
「……なるほど。詳しい解説ありがとうございます」
「ま、ここは私の奢りダ。ユー達も、そこの福の神も、遠慮しないで食ってけヨー」
「はーい、お待たせしましたー! お土産お団子セット一丁ー!!」
「サンキュー。んじゃ、イタダキマース」
「あ、律儀に手を合わせてる……」
「冥界にそんな風習って無さそうですよね」
「ま、郷に入れば郷に従えってヤツダナー。ホレ、早くしないと無くなるゾー?」
「焦らせないでよ。まあ、じゃあ私達も」
「ええ――いただきます」
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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