タイトルどおり、pixivなどで書いたざくアクSSの保管場所です。
内容に差異はありませんが、ショートショートにまとめられていた話などは細かく分けられています。
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「はあ……」
あれから何度、溜息をついたことだろう。罪の意識というものが、こんなに苦しいものだったなんて。誤解から、一人の子供をものすごく傷つけてしまったことが、とても心苦しくて。
謝らなければいけないのだけど、なんだか顔を合わせることさえ気まずくなってしまって、行動に出られないまま時間だけが過ぎていく。人見知りの私にとって、このハグレ王国の中で最初に気を許せるお友達だったのに――居場所さえ無いように思えてしまう。
そんな悶々としていた中の、ある日のことだった。
「おーい、クウェっちー。マッスルが呼んでるよー。話があるってさー」
「えっ?」
私を呼ぶのは――たしか、ハーピーのハピコさん。同じ獣人のひと、とはいっても種族としてはまったく違うけれど。私は人狼族で、さらにいま私に用事があるというニワカマッスルさんはミノタウロスと言われる種族だ。この王国にはさまざまな人が暮らしている。
そのニワカマッスルさんが、わざわざハピコさんを介してまで私を呼ぶなんて、いったいどんな用なんだろう。なんだかすごく身構えてしまう――ベル君と違って、マッスルさんは見た目の印象が怖く、私には近寄りがたい存在だった。
だけど呼ばれ方からして、今回ばかりは避けるわけにはいかないみたいだった。何の話だろう……恐る恐る、私はマッスルさんの待つ席に向かった。
――のだけれど、実際に話してみて。
私は、もうひとつ誤解をしていたことを知ってしまった。
ベル君の様子が変ではなかったかと聞かれ。思い出してみると、確かにとてもギクシャクしていた。それは、私が誤解をしていたと彼に知られるより前から、というかあの散歩の時は最初から。
マッスルさんはそれについて、自分が昼間にからかってしまったからで、そのせいで私とベル君の仲がおかしくなってしまったのだと、とても申し訳無さそうに語った。
実際には私が勘違いをしていたせいなのだと言うと、マッスルさんは何やらほっとした様子を見せ、今日からまた私とベル君が散歩に行けるようにする、と元気よく請け負ってくれた。
――そんな短い会話だけで、マッスルさんの人柄というものがわかった気がする。見た目は怖そうだけど、実のところは優しくて、自分が犯した間違いに対しては本気で責任を取ろうとする、誠実な姿勢が見えた。また、そうして人柄を知ると、大柄な見た目の印象は、怖さから、途端に頼もしさに変わる。
――申し訳ない。
ベル君だけでなく、マッスルさんに対しても、強くそう思った。
「あの、お言葉に甘えて、協力していただこうと思うんですが……少し、時間をくれませんか?」
「はい? 何ですかい?」
「今、ベル君が落ち込んでいるのは、私の誤解のせいなので、どんな形ででも、私の言葉で謝らなければいけないと思うんです。……けど、直接顔を合わせるのは、まだ、ためらってしまうところがあって」
「ああー……わからんでもないっすね。上手く言葉が出てこなくなるかもしれないってことっすか」
「だから、手紙を書こうと思うんです。しっかり考えて書いて、それでベル君に伝えようと思って」
「なるほど。で、俺がその手紙をベルに渡してやればいいんですね?」
「そういうことです。お願いできますか?」
「もちろん。……あ、クウェウリさんも、あんまり思い詰めないでくださいよ? 今回の件に関しては俺もかなり非があるんで、できる限り協力しますから」
「……ありがとうございます。それと、あの」
今、言おう。
意を決した。
「……ごめんなさい、マッスルさん。私、あなたのことも誤解してしまってました」
「……、はい??」
マッスルさんはあっけに取られた顔で私を見た。向こうからすればやはり唐突だったのだろうから仕方ない。そんなマッスルさんに、私が彼に抱いていた、以前の印象と今の印象の違いを伝え、頭を下げる。マッスルさんはなるほどと頷き、それから照れくさそうに頭を搔いた。
「まあ、顔を上げてください、クウェウリさん。そう言ってもらえるだけで、俺ぁ嬉しいです。お気持ちは確かに受け取りましたよ」
そう言って、にかっと笑う。その朗らかな笑顔を見て、何だか本当に許されたような気がしていた。思わず、私も微笑んでいた。
「ああ、そうだ。せっかくですから、こいつをひとつサービスしますよ」
マッスルさんが、ラベルの貼られた小瓶をテーブルの上に差し出した。『GENKI! モーいっぽん!』と書かれていて、中には液体が入っている――どうやら栄養ドリンクのようだ、というか、とてもわかりやすく認識できるデザインだった。
「モーモードリンクって商品です。俺、王国内でこれの商売してんすけどね。元気を出したいってときに気が向いたら、ちょいっと飲んでみてください。クウェウリさんにも、元気でいてもらいたいっすから」
小瓶を手に取って、しばらくいろんな角度から眺めてから――
「……ありがとうございます。手紙を書くときのいいお供になりそうです」
本当に、マッスルさんには深い感謝の気持ちがあった。この分だと、これからのことはなんだか上手くいきそうな気がする。
「どういたしまして。じゃ、手紙が書けたら、また呼んでください」
わかりました、と私が返事をして、その場はお開きとなった。
後に、自分で言ったとおり、手紙を書いている途中で、ドリンクを服用することになり――胸がすっとして、気持ちが晴れて、これからのことを前向きに考えられるような、そんな味がした。
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ざくざくアクターズというフリーゲームの二次創作をやっています。ネタが思いつくかどうかは気まぐれなので不定期更新。
主な活動場所はpixivで、この場所はあくまでも保管庫として活用しています。
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